中小企業が現実的に使える退職金制度とは。
労務


中小企業と大企業の大きな違いに「退職金の有無」があります。退職金の有無は従業員の会社に対するロイヤリティに影響します。
20年働いたときに、1,000万円受け取れる会社と0円にしかならない会社とどちらを選びますか、と聞かれたら、前者が選ばれる確率は高いでしょう。しかし、実態は本来その時に受け取れるはずの給与の一部を将来に回しているわけで、その理屈は大企業でも中小企業でも変わらないはずです。

このことは、中小企業でも退職金に近い制度を入れることは不可能ではないことを表します。大企業と同じような制度とまではいかがなくても、中小企業でも退職金のような「長く働いた場合に受け取れるインセンティブ」制度を作ることで、採用力の強化や社員の定着率や長く働くことに対するモチベーションをアップさせてはいかがでしょうか。

ここでは、中小企業が現実的に使える退職金制度について、解説をいたします。

この記事の目次

1.中退共(中小企業退職金共済)の活用

中小企業者の相互共済と国の援助で、中小企業独力では達成できない運用を行っているのが中退共(中小企業退職金共済)です。加入社数35万件以上、加入者350万人近く、規模としてはかなり大きい制度になります。

退職金制度では、確実に運用できる(将来において破綻しない)仕組みが重要になります。中退共はその規模感と実績から十分に安心できる制度と言えるでしょう。

従業員への掛け金は会社が負担しますが、その時の会社の状況を鑑みて、ある程度自由に設定できます。また、掛け金に対しては助成を受けられますので、負担感は高くないと言えるでしょう。

反面、原則全員加入で、資金繰りに困って一定期間継続的に掛け金が払えないケースでも強制解約となります。掛け金に対する支払金額も決まってきますので、画一的でフレキシブルさに欠ける面は否めません。

2.企業型DC(企業型確定拠出年金)の活用

最近では大企業でも退職金制度の代わりとして採用しているのが、この企業型DC(企業型確定拠出年金)です。一般的に401kなどと言われることもあります。退職金のように受け取れる給付金額が約束されているものを確定給付と言います。これに対して、給付金額は約束されていないけど、毎月払う拠出金額は一定になるものを確定拠出と言います。確定拠出には「個人型」と「企業型」がありますが、ここでは「企業型」について解説いたします。

企業型確定拠出年金に加入すると、個人毎にその掛け金の運用方法を決めることになります。運用とは、定期預金、投資信託(株式、REIT、債券などが組入れられている)などの金融商品をどのような割合で購入するのかを決めることです。

最大のメリットは、節税しながら、運用次第でハイリターンが得られる可能性がある、ということです。また、企業型確定拠出年金の制度を持つ会社同士であればポータビリティ(持ち運び)できるので、比較的大企業の転職者を受け入れられやすいという面も見逃せません。

一方で、ある程度の運用知識が求められ、時にはその資産を失うリスクを加入者自身が負うことになります。また、原則60歳までは現金化できず、途中で引き出せないという問題があります。

3.生命保険を活用した仕組みを採用する

実は生命保険を上手に活用すると、退職金に近い制度を運用することが可能です。上記で示したような制度は、退職や老後に資金を活用することを前提としているため、結婚、出産、家の購入といったお金が必要になるライフステージでの保障を想定していません。

退職金というよりは、福利厚生として毎月掛け金を拠出して生命保険で運用を行ったうえで、お金が必要になるライフステージに合わせて引き落としを行ったり、退職時のボーナスとして保険金を支給したり、という方法があります。

この方法は、組み合わせが無限にあると言って良いでしょう。貴社の工夫次第によっては、大企業に負けない、ピンポイントで社員に有益な退職金制度を作ることができるかもしれません。

まとめ

これらの制度をまとめると、以下のようになります。

①中退共

既にある制度に加入することになるので、加入の手間は一番少ないでしょう。一方で全員加入させなければいけないなど、フレキシブルさにやや欠けるところがあります。手間をかけずにとりあえず退職金制度を入れておきたい、という会社に向いています。

②企業型DC

自身の運用次第でハイリターンも期待できる制度です。一方で運用を自分で決定する、というところが手間なうえ、60歳まで引き出せないという問題があります。自身で運用できるだけの知識がある(社員に期待できる)、大企業からの人材採用に期待している、という会社に向いています。

③生命保険

会社の都合に合わせて設計できるというのが最大の利点です。一方で確立されている制度ではなく、正解が無いので迷ってしまう、という問題もあるでしょう。退職金というよりは福利厚生制度としての一時金支給にも対応したい、自社独自の制度を作りたい、という会社に向いています。

最近では大企業でも退職金を廃止したり、企業型DCに移行したりするケースが増えました。大企業でも、確定給付である退職金制度を運用していくのは難しい時代になっています。 今だからこそ、中小企業でも堂々と退職金制度と同じく、長く働くことで受け取れるインセンティブがあると説明できるようなれば、今まで大企業に流れていた人材の確保が可能になるかもしれません。
中小企業においても、ぜひこれらの制度の導入を検討していただきたいと思います。

詳細について、ご相談があれば、ぜひお問い合わせください。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。