兼業・副業者の労災認定は「本業+副業」での判断が原則となる方向性
労務


政府による副業推奨の方針を受け、兼業・副業を解禁した(もしくは解禁する方向で検討している)企業も多いのではないでしょうか?
兼業・副業に従事する労働者の勤怠管理については目下、政府主導で議論が進められているところですが、これと併せて、複数就業者に対して懸念される長時間労働やそれに起因する労災認定に関わる制度が2020年度中にも大きく変わろうとしています。

この記事の目次

兼業・副業者の労災補償 現行制度上の課題とは?

現状、兼業・副業者の労災認定時には「労災認定する際の業務上の負荷を事業ごとに判断している」「労災認定した場合の給付額を事業ごとの賃金を基に決めている」という実態があり、その妥当性が問われています。

例えば、A事業所で週40時間、B事業所で週25時間就労した労働者が脳・心臓疾患を発症した場合、それぞれの事業所での労働時間のみが考慮され、労災認定されません。これを、仮に一社で65時間就労となれば、労災認定基準となる「月100時間を超える時間外労働」が認められることになります.


また、給付金額についても、災害補償責任ありとされる就業先での賃金のみが算定基礎とされていますが、被災労働者の稼得能力等を考慮すれば、全ての就業先での賃金額を加味するのが妥当と言えるでしょう。

出典:厚生労働省「第82回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料_複数就業者に係る労災保険給付について(これまでの論点整理について)(案)」

兼業・副業者の労災補償 今後はすべての就業先での状況も加味

こうした現行制度上の課題を受け、厚労省・労働政策審議会の部会では、兼業・副業者に関わる「業務上の負荷の合算」「非災害発生事業場の賃金額も加味した給付額算定」を盛り込んだ労災保険法等改正案の提出を予定しています。

出典:厚生労働省「第82回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料_複数就業者に係る労災保険給付について(参考資料)」

兼業・副業の形態については、労災補償の対象とならない個人事業主としての就労も想定されます。この点、政府は雇用類似の働き方への保護についても具体的な検討に入っていることから、今後の議論の流れに注意しておく必要があります。

兼業・副業容認企業では「安全配慮義務」により一層の配慮を

現状、労働者の複数就業を認めている、もしくは今後認める方向で検討されている場合、社内の兼業・副業ルールの見直しと、その後の確かな運用に目を向ける必要があります。事業主には安全配慮義務の観点から、従業員の就業状況に関わる適正な把握・管理が求められることになります。

従業員の私生活について、正しい情報管理が困難であることから制度上兼業・副業を禁止している企業でも、実態として複数就業を黙認する状況があれば、万が一の際に事業主としての責任は免れられません。

「一歩会社の外に出れば、もはや会社が関与すべき領域ではない」という考え方もありますが、同時に、従業員の健康管理は労務管理の一環とも言えます。当然、プライベートへの過干渉は禁物ですが、会社として必要最低限の状況把握は不可欠です。

まとめ

ますます多様化する働き方に対応すべく、企業には「労務管理体制の確立」が求められます。まずは政府の方針を確認の上、見直し、検討が必要な事項について一つひとつ、着実に対応してまいりましょう。

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