新型コロナウイルス感染症の傷病手当金の取扱いについては、すでに『新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金について。判断基準は「本人が労務不能かどうか」』で解説しています。傷病手当金は、本来、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合の制度ですが、今般の感染症による影響を受けて、国民健康保険でも支給される流れとなりました。
- 「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策 -第2弾-」に明記された傷病手当金
- 新型コロナウイルス感染症に伴う国民健康保険上の傷病手当金の取扱い
- 傷病手当金は、労災保険の休業補償給付との併給不可
- まとめ
「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策 -第2弾-」に明記された傷病手当金
出典:首相官邸「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策-第2弾-(ポイント)」
新型コロナウイルス感染症対策本部は、2020年3月10日に公開した「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策-第2弾-(ポイント)」を通し、政府としての今後の対応指針を示しました。様々な施策の中に「傷病手当金」が明記されており、取り扱いの明確化や周知徹底が盛り込まれています。
新型コロナウイルス感染症に伴う国民健康保険上の傷病手当金の取扱い
前述の緊急対応策を受け、厚生労働省保険局国民健康保険課および厚生労働省保険局高齢者医療課は「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給等について」という事務連絡を出しました。資料では、市町村、後期高齢者医療広域連合又は国民健康保険組合における傷病手当金の取り扱いについて、下記の通り言及しています。国内の感染拡大防止の観点から、保険者が傷病手当金を支給する場合に、国が特例的に特別調整交付金により財政支援を行うこととする。
対象者
被用者のうち、新型コロナウイルス感染症に感染した者、又は発熱等の症状があり感染が疑われる者支給要件
労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間支給額
直近の継続した3ヵ月間の給与収入の合計額を就労日数で除した金額 × 2/3 × 日数※ 上記の支給額について、特別調整交付金により財政支援。
適用
2020年1月1日~9月30日の間で療養のため労務に服することができない期間(ただし、入院が継続する場合等は健康保険と同様、最長1年6ヵ月まで)
出典:厚生労働省保険局国民健康保険課「事務連絡 新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給等について(令和2年3月10日)」
傷病手当金は、労災保険の休業補償給付との併給不可
今号では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、国民健康保険上の傷病手当金の取扱いについて解説しました。ところで、今般の新型コロナウイルス感染症については、業務上の事由から感染する事例も見られ始めています。
例えば、医療従事者が患者の処置にあたった際に感染した、業務命令で訪れた出張先で感染した等のケースが想定されますが、その場合には労災保険の休業補償給付の支給対象となります。
傷病手当金の支給要件には、「業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること」がありますから、業務上の事由による労災保険上の休業補償給付が支給される場合、傷病手当金の支給対象からは外れます。「国保加入者=労災保険の適用対象」というケースは稀でしょうが、健康保険被保険者にも共通する併給調整ですから、覚えておかれると良いでしょう。