新型コロナウイルス感染症拡大下で、慎重になるべき「レイオフ(一時解雇)」
労務


新型コロナウイルスの感染拡大により、業績悪化、売上大幅減等の影響に追い詰められるケースが後を絶ちません。とりわけ多大な影響を受ける業種のひとつにタクシー業界がありますが、タクシー会社「ロイヤルリムジン」(東京都江東区)が「休業手当よりも失業手当の方が有利」との理由でグループ会社の乗務員約600人を解雇したという報道を見聞きされた方も多いのではないでしょうか?

企業の中には、業績回復時に備え、一般的な解雇とは異なるいわゆる「レイオフ(一時解雇)」を検討するところも増えてきているようですが、その取扱いには慎重になるべきです。

この記事の目次

レイオフ(一時解雇)とは?

「レイオフ(一時解雇)」とは、会社の経営状態が悪化した際等に、業績回復時の再雇用を前提として従業員を一時的に解雇することを指します。分かりやすく言えば、業績悪化時は最低限度の人員で事業を継続させ、状況が改善した際にはスムーズに現在の体制に戻れるようにするイメージです。
レイオフ(一時解雇)は会社都合の整理解雇の一形態であり、その目的は業績悪化時の「人件費削減」の他、「優秀な人材や企業ノウハウ流出の防止」にあります。 一時的にでも解雇が認められるためには、以下に挙げる整理解雇の4要件を正当に満たすことが必要です。

人員削減の必要性

人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること

解雇回避の努力

配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと

人選の合理性

整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること

解雇手続の妥当性

労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」

そしてもちろん、30日以上前の解雇予告、もしくは解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払が必要になります。

レイオフ(一時解雇)では、そもそも雇用保険の基本手当が支給されないことも

今般の報道にあったタクシー会社の例では、「従業員にとって、失業手当(雇用保険の基本給付)を受給する方が休業手当を支給するよりも有利である」との見解が示されました。ところが、失業手当と休業給付の額を単純に比較したとして、実際には、必ずしも失業手当の方が高額となるとは言い切れません。厚生労働省では、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」にて実際の事例を紹介しています。

雇用を維持して休業の場合:休業手当(「休業前3か月の平均賃金」を基礎として算定)

解雇の場合:雇用保険の基本手当(「離職前6か月の平均賃金」を基礎として算定)
(例)平均月収30万円の60歳の運転者の直近2カ月の月収が漸減(25万円、20万円)したと仮定した場合
・休業手当:休業前3か月の平均賃金(25万円) × 60%以上
・雇用保険の基本手当:離職前6か月の平均賃金(27.5万円) × 約53%※
※給付率は、離職前平均賃金額、年齢に応じて50~80%で変化します。

参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和 2 年 3 月 1 日から~」

出典:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

従業員の従前の給与額によっては、雇用保険の基本手当の給付率が低くなったり、そもそも雇用保険被保険者期間が短いために給付を受けられなかったりすることがあります。
また、雇用を中断することで、社会保険適用も同様に一時中断されますから、従業員の健康保険上の給付や将来の年金額に影響が及ぶ可能性があることも十分に考慮しなければなりません。

もっとも、再雇用を前提としたレイオフ(一時解雇)の場合、完全な失業状態にあるとは言い難く、再就職活動のための支援である失業給付は支給対象外となる可能性は高いといえます。また、前項の通り、30日以上前の解雇予告(もしくは解雇予告手当の支払)の必要があることも忘れてはなりません。

助成金を活用し、「雇用維持」に努めるのが大原則

前述の通り、レイオフ(一時解雇)の実施に対して、企業は慎重になる必要があります。
また、日本よりもレイオフ実施頻度の高い諸外国では、対象となった従業員が会社に補償を求める、会社側の要求に応じられず訴訟に発展する等の事例も珍しくないようです。どのような状況下においても、会社の都合のみですべてを決められるわけではないこと、解雇は労使紛争の火種となりうることを十分に理解しておかなければなりません。

政府は企業における雇用維持を推進する目的で、雇用調整助成金に特例措置を講じたり、中小企業向け融資・給付金制度を創設したりと、あらゆる支援策を設けています。現場においては、活用できる制度を最大限に活用し、解雇を回避する方向で検討するのが得策です。

やむを得ずレイオフ(一時解雇)を行う場合、会社は対象従業員の納得を得るため、正当な理由を説明する義務を果たさなければなりません。そして、法律に則った手続きを適正に進める必要があります。

まとめ

長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、雇用の在り方を見直さざるを得ないケースも増えていることでしょう。
雇用の問題は、事業主様だけで抱えるべき課題ではありません。労務管理の専門家である社会保険労務士と共に、最善の策を検討してまいりましょう。
まずは助成金診断から、お気軽にご相談ください。

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