テレワーク中に30分離席した社員を懲戒にできるか。テレワーク中のサボりに対するルールについて考える。
労務


コロナ禍ですっかり定着した働き方と言えばテレワークです。急遽テレワーク環境を構築したり、あるいは緊急事態宣言解除後もテレワークを続行したりと、環境が激変した会社も多いのではないでしょうか。

ここで事業主が危惧するのは、テレワークが故に監視の目が甘くなるのではないか、ということです。サボりが横行し、ついては仕事の質が下がる、そうならないようにサボった時に何かしら懲罰ができるようにしておきたい、と考えるのは自然なことです。

では、実際にテレワーク中にサボりが発覚したら、懲戒などの処分を会社が下すことはできるのでしょうか。ここでは、テレワーク時の懲罰の考え方について、解説をさせていただきます。

この記事の目次

1、懲戒処分は就業規則で規定されていることが前提

何か問題行動を起こした際、会社の処分と言えば「懲戒」が考えられます。懲戒とは、従業員の不正・不法行為に対する、会社の公的な戒めと言えるでしょう。

この懲戒の大前提は、就業規則により懲戒処分の種類、程度、手続き方法などが示されていることです。つまり会社のルールを先に作っておかなければ、懲戒処分を行うことはできない、ということです。就業規則の無い会社の場合、テレワークを機会に作成してみてください。

もちろん、就業規則は作れば良いというものではありません。周知されていてしかるべきです。少なくとも社員全員が、就業規則のある場所を知っている状態にしておくことが求められます。テレワークを念頭に置くのであれば、イントラネットやメール配布など、電子ファイルで閲覧できている状態にすることも必要でしょう。

2、懲戒は根拠とバランスが求められる

では、就業規則に「テレワークのカメラの前で30分離席してはいけない」というルールを作ったとします。30分離席した者に対して懲戒処分をすることはできるのでしょうか。

この規定が存在することで、30分離席した者に対して、会社には懲戒権が発生します。しかし、この懲戒権はいつでも有効というものではありません。「客観的に合理的な理由」かつ「社会通念上相当」であることが懲戒には求められています。この2つをクリアできていなければ、懲戒権の濫用とみなされ、その懲戒は無効となります。

この条件について、法では具体的な事例が示されているわけではありませんので、実際には個々の事情によって判断されます。そのために、本人に弁明の機会を与え、客観的な事実関係を把握することは不可欠になります。そのうえで、事実関係から判断して、懲戒事由が合理的な事実を疑う余地がない程度の根拠・理由があることが大事なのです。

さらに、そこには社会通念上相当であることも求められます。30分の離席で他の従業員の職務を妨害しているでしょうか。職場秩序が乱れたと言えるでしょうか。頻繁な離席で迷惑をかけている、というレベルでなければ、軽微な事案で懲戒をかけることも問題があります。

もう一つ気を付けるべきは他の従業員とのバランスです。他に30分離席した社員がいないと言える状況でしょうか。たまたまその方が見つかっただけ、となると、その懲戒は著しく全体的なバランスを欠く話になります。

つまり、30分の離席を懲戒処分にするには、就業規則上に記載するだけでは不十分です。それが合理的な理由でなく、頻繁に繰り返され会社や周りの従業員に迷惑をかけており、かつ同様のことを行っている社員にも同じ処分がなされている、という状態になって初めて懲戒を検討できるのです。

3、テレワークは「性善説」で設計する

「性悪説」の元に監視の目を光らせると、その時間やコストはもちろん、従業員のモチベーションにも大きく影響します。テレワークそのものが割に合わないということになってしまいかねません。

そのため、テレワークのルールを決める際は「性善説」を取らないと前に進めない、浸透しないと感じています。

もちろん、離席時間など一定のルールを定めておくことは、その抑止力を持たせる、という観点からは重要です。しかし、その時間を厳密に管理するよりも、その時間内でできたアウトプットの質を重視する方が、全体的な効率としては良いのではないでしょうか。

従業員から見ると、監視の目から逃れられる反面、時間や環境の管理を自分自身で行い、より質の高いアウトプットを出さなければ評価されないことになります。席にいれば「頑張っている」と評価されることはなくなるわけで、その意味では、従業員にとっては以前より厳しい環境になるのがテレワークなのです。

このことは、時間管理ができないと思われる社員にテレワークを行わせることは望ましくないとも言えるでしょう。テレワークをさせるにふさわしい社員を選ぶことも、会社としては重要なテーマです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
テレワークのサボりは就業規則があって初めて懲戒処分が可能になります。
しかし、その懲戒も合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ、ハードルが高いと言わざるを得ません。
テレワークのルールを作る際は、監視の目を光らせるよりも、性善説で進めたうえで、よりアウトプットへの評価を重視する方向で検討してはいかがでしょうか。

特にコロナ禍で急遽テレワークを導入した会社だと、始まって数ヶ月で、その課題もいろいろと見えてきたのではないでしょうか。課題を整理して、本当に有効なテレワークを模索するタイミングのように思えます。

テレワークに関しては、規程作成や機器・環境の導入に助成金の活用も検討できます。お近くの社会保険労務士にお気軽にお問合せください。

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