今年も、労働保険年度更新の時期を迎えています。申告書作成自体、さほど難しいことではありませんが、
少し特殊なケースにおいては「どのように処理するのが良いのか」と頭を悩ませることは少なくないようです。
今号では、「確定保険料や概算保険料が0円になる場合」を想定した事例について解説します。
- 昨年度労働者0人なら、確定保険料は0円でOK
- 今年度雇用見込がなくても、今後雇用する可能性があるなら概算保険料を立てる
- 労働保険料納付 2020年度の口座振替第1回目は通常よりも1ヵ月ほど遅い「10月13日」
- まとめ
昨年度労働者0人なら、確定保険料は0円でOK
まずは、「確定保険料が0円」になる場合について、こちらは現在労働者を雇用していない会社の事例です。出典:厚生労働省「令和2年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」
・「常時使用労働者数」:実際は「0人」であっても、便宜上「1人」と記入します。
※労働者0人の場合、そもそも労働保険関係が成立しないため
・確定の「労働保険料」:「0円」の計上で問題ありません。併せて、一般拠出金の欄も「0円」となります。
なお、労災・雇用保険料算定基礎額共に同額の場合は、「労災保険分」と「雇用保険分」を分けて記入せず、一行目の「労働保険料」欄のみに記入します(一行書きのルール)保険料計算上、小数点以下が切り捨てとなりますが、労災・雇用保険料を別々に計算して切り捨ててから足し上げる場合と、労災・雇用の保険料率の合計を算定基礎額に乗じて切り捨てる場合とで、額に差が生じることがあるためです。
・「概算」の「労働保険料」:今年度新たに雇用する労働者の見込賃金総額から概算保険料を算出するのが原則ですが、不明の場合には「申告済概算保険料額」をそのまま記入することもできます。
今年度雇用見込がなくても、今後雇用する可能性があるなら概算保険料を立てる
上記の通り、確定保険料は「0円」での申告が可能ですが、一方で概算保険料に係る0円申告は認められません。「概算保険料を立てない=事業廃止」となり、労働保険番号が消滅し、労働保険を継続することができなくなってしまいます。よって、今年度の雇用見込がない場合でも、長期的に見て労働保険を継続すべきならば、少額でも概算保険料を立てて労働保険を継続させる必要があります。
ちなみに、廃止申告では概算保険料の欄を記入しません。
出典:厚生労働省「令和2年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」
労働保険料納付 2020年度の口座振替第1回目は通常よりも1ヵ月ほど遅い「10月13日」
2020年度ならではの変更点として、年度更新の期限が2020年8月31日までに延長されたことが挙げられます。これにより、保険料の納期限(納付書で納付の場合)が「2020年8月31日」までとなっています(通常は年度更新期限の7月10日まで)。また、口座振替(全期・第1期)の場合の納付日については、通常9月上旬までですが、「2020年10月13日」となっていますので、間違いの無いよう把握されておくことをお勧めします。
出典:厚生労働省「令和2年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」
まとめ
労働保険年度更新は年に一度の作業となりますので、処理中に何かと頭を悩ませることも多いのではないでしょうか?労働局や労働基準監督署に申告書の受理・相談コーナーが設置されていますので、必要に応じて活用されながら進めるとスムーズかと思います。自社での対応が難しい場合には、社会保険労務士への代行ご依頼もお勧めです。