前回、試用期間と有期雇用契約の違いについて、LABで書かせていただきました。
有期雇用契約はいわば契約期間を決めたうえで働いてもらうので、短縮・延長は原則的にできないことはご理解いただけると思います。では、試用期間の場合はいかがでしょうか。
一般的な就業規則には「試用期間を短縮または延長ができる」と記載してあります。では実務上で試用期間を途中で変えるということは、どのような時に可能なのでしょうか。ここでは試用期間の短縮及び延長について解説をしたいと思います。
1、そもそも試用期間とは
まずはおさらいです。試用期間とは、その事業場の労働者としての適格性を判断しうる期間を言います。法的にその有無や長さが決まっているわけではありません。よって、就業規則や雇用契約書で試用期間について労使で合意を取る必要があることは言うまでもありません。その社員に適格性が無いと会社が判断した場合は、本採用に至らず契約終了という判断も可能です。 しかし、採用14日後を超える試用期間満了による本採用拒否は、解雇と同じです。つまり、試用期間満了による本採用拒否には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」であることが必要になります。
つまり、試用期間満了による本採用拒否は「通常の社員よりも、少し解雇のハードルが低い」だけであって、解雇には相当の理由が必要であることには変わりありません。本採用拒否については、解雇トラブルを避けるためにも慎重に判断をするべき、ということになります。
2、試用期間の短縮はあくまで経験者優遇のためのもの。契約を打ち切るためのものではない。
では、能力が低いことを理由に試用期間を短縮して本採用拒否することはできるでしょうか。就業規則には試用期間を「短縮できる」と書いてあることで対応できそうですが、これは一般的に経験者を優遇する措置であり、早期に本採用拒否を判断する根拠とすることはできないでしょう。
あくまで本採用に至る期間を優秀な社員については短縮できる、という理解に留めておく方が無難ということになります。
3、試用期間の延長は、当初から延長の可能性があることの合意が前提。
では、試用期間の延長の方はどうでしょうか。実際に能力が思ったより低く、本採用に至れるかどうかを試用期間満了までに見極められないということはあると思います。まず、会社として認識しておきたいのは、試用期間というのは、前述のように解雇のハードルが他の社員より低く、不安定な立場にあるということです。会社によっては正社員よりも低い給与を設定しているかもしれません。
本人から見ると、試用期間が終われば、その不安定な立場から解消されるという期待があります。それを延長するというのは、本人の利益から鑑みると許されない、というのが原則になります。
そのため、就業規則や雇用契約書の中で、延長の可能性、その事由、最大となる延長期間を定めておくことが求められます。そこまで採用時から合意を取っておくことで、初めていざと言う時に試用期間の延長が検討できるのです。
また、本人の能力の問題であれば、試用期間満了の半分を過ぎたあたりを目安に、このままでは本採用できない可能性、理由、改善点を伝え、また教育していくといった、いわば「本採用に至れる努力」が必要です。この努力を無しに、いきなり試用期間延長や本採用拒否を行えば、労働トラブルになる可能性が高いということになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 試用期間の短縮は、本採用にする時のみに活用できると認識しておくべきです。延長については、当初からの合意と、本採用にするための努力があって初めて可能になるとご理解ください。以上は原則論になりますが、実際には、その方の採用経緯、年齢、経験年数、採用ポジションなどによっても、いろいろと判断が分かれてきます。試用期間についてお困りのことがあれば、ぜひ社会保険労務士にご相談をしてみてください。