7月を目前に控え、企業のご担当者様であれば、目下、算定基礎届への対応に慌ただしい日々を過ごされているかもしれません。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、労働保険の年度更新期限が2020年8月末日まで延長されていますが、算定基礎届については例年通り7月10日までの提出となっていますのでご注意ください。
ところで、かねてより議論されていた厚生年金保険の標準報酬月額等級の上限引き上げについて、2020年6月23日付でパブリックコメントに付されました。2020年8月下旬の公布、9月1日施行予定の内容ですので、さっそく確認しておきましょう。
- 厚生年金の標準報酬月額等級区分に「第32級:650,000 円」を追加
- 「標準報酬月額の上限引き上げ」のタイミングとは?
- 厚生年金の標準報酬月額等級の上限が「第32級」になったら、労使の負担はどうなる?
- まとめ
厚生年金の標準報酬月額等級区分に「第32級:650,000 円」を追加
このたび公示されたパブリックコメントは、厚生年金の標準報酬月額等級の上限を、現在の「第 31 級:62万円」から「第 32 級:65万円」に引き上げるというもの。等級上限の引き上げにより、現状、標準報酬月額60万5000円以上で一律第31級とされているところを、新たに標準報酬月額63万5000円以上から第32級として扱うことになります。参考:e-Gov「厚生年金保険法の標準報酬月額の等級区分の改定等に関する政令案(仮称)に関する御意見募集(パブリックコメント)について」
出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表(平成29年9月分~)」
「標準報酬月額の上限引き上げ」のタイミングとは?
「標準報酬月額」は、健康保険と厚生年金それぞれで設定され、現状次の通りの区分となっています。
・ 健康保険:第1級の5万8000円から第50級の139万円までの全50等級
・ 厚生年金:第1級の8万8000円から第31級の62万円までの全31等級
ただし、健康保険と厚生年金の各被保険者の状況により、等級区分について適宜見直し・変更が講じられることになっており、上限等級の引き上げについては下記の通り定められています。
・ 健康保険:標準報酬月額の上限該当者が、3月31日現在で全被保険者の1.5%を超えたときは、政令で
その年の9月1日から一定範囲で標準報酬月額の上限を改定することができる
・ 厚生年金:年度末時点の全厚生年金被保険者の平均標報の2倍が、標準報酬月額の上限を上回る状態が継続すると見込まれる場合、その年の9月1日から政令で上限を引き上げることができる
厚生年金については、すでに2016年度末より、全厚生年金被保険者の平均標報の2倍が、標準報酬月額の最高等級である「62万円」を超えている状況が続いていたことから、等級上限の見直しについてはかねてより議論されていました。
厚生年金の標準報酬月額等級の上限が「第32級」になったら、労使の負担はどうなる?
出典:厚生労働省「現行の厚生年金保険法の規定に基づく標準報酬月額等級の改定について(報告事項)」
標準報酬月額ごとの被保険者数分布によると、厚生年金の被保険者約4,400万人のうち、約290万人が上限の62万円に該当しているとのことです。これは全被保険者のおよそ6.8%にあたる数字であり、その他の各等級と比べて多くの被保険者が該当することが分かります。
ちなみに、現状「第 31 級:62万円」の方が「第 32 級:65万円」に引き上げられることで、労使の保険料負担はそれぞれ2745円増加します。該当者が生じる現場においては、誤解のないよう事前にアナウンスしておく必要があります。
第31級の保険料折半額=5万6730円(62万円×9.150%)
第32級の保険料折半額=5万9475円(65万円×9.150%)