手取り額で給与を決めたい!手取り保証(グロスアップ)の計算方法の具体例。
労務


給与計算の際、「(支給総額ではなく)ぴったり手取りが●●円になるように基本給を決めてほしい」というご依頼を受けることがよくあります。
ところが、これがなかなか難しいのです。なぜなら、社会保険料と所得税の計算元となる数字が異なるうえ、控除額が変わるたびに対応しなければならないからです。

とは言え、契約によっては、基本給ではなく手取りを保証しているようなケースもあります。外資系企業の場合、各国で変わる社会保険料や税金分を会社が負担する、という観点で手取り金額を契約で保証していることは珍しくありません。これを手取り保証(グロスアップ)と言います。

ここでは、手取り保証(グロスアップ)の計算方法について解説をします。

この記事の目次

1、手取り保証をする対象項目を決める

まず手取り保証で決定することは、どの項目を対象に計算するか、ということです。 ここで項目とは、給与から天引きされている項目を指します。

一般的には、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税がその対象となります。住民税はその方の給与以外の収入も対象になることから、手取り保証の対象からは除かれることが多いです(入れても構いません)。

また、社会保険料については、個人負担分のみを対象にすることが一般的ですが、会社負担分も含めることもあります。まずはその範囲を決定することから始まります。

2、社会保険料は等級によって決まる。

健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料(3つを合わせて社会保険料と呼びます)については、等級表を用いて、その控除額が決まります。ご加入の健康保険組合または協会けんぽの等級表を確認してください。

協会けんぽの等級表は都道府県別に変わります。令和2年度分はこちら

その方の1ヶ月分の通勤交通費を含む総支給額を報酬月額とし、報酬月額から標準報酬月額を求めます。標準報酬月額ごとに個人負担の社会保険料が決まります。

手取り保証の計算の時は、まず仮の支給額を決定して、社会保険料を算出します。

雇用保険料は同じく総支給額で計算します。一般の事業の場合、令和2年度で3/1000が個人負担の料率です。令和2年度の雇用保険料率については、こちらをご確認ください。

手取り保証の計算の時は、雇用保険料も同様に計算をします。

次に所得税です。こちらは非課税通勤交通費を含まない支給額から、上記の社会保険料、雇用保険料を控除した課税支給額をまず計算します。

課税支給額とその方の所得税扶養者の数(扶養控除申告書に記載されている扶養者数)を所得税の月額表にあてはめます。

※参考:令和2年度分『給与所得の源泉徴収税額表』

なお、会社によっては、上記月額表によらず、機械計算という方法で所得税の計算を行っている場合もあります。月額表か機械計算か、自社が使っている計算方法をご確認ください。

※参考:令和2年度分『月額表の甲欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算の特例について』

手取り保証の計算の時は、所得税を最後に求めます。

仮の支給額から社会保険料、雇用保険料、所得税を引き、目標となる手取り保証額に達するかどうかを確認します。多ければ仮の支給額を減らし、少なければ仮の支給額を増やして再計算します。その繰り返しで、手取り保証額ぴったりになる支給額を求めていく、ということになります。

3、手取り保証40万円の場合、支給額はいくら?

では、具体的に計算をしてみましょう。
手取り保証400,000円(12,000円/月の通勤交通費を含む)、一般の事業、東京の協会けんぽ、月額表を使っている会社で、所得税扶養者無し、40歳未満(介護保険料無し)と想定します。一般的な個人負担の社会保険料、雇用保険料、所得税を対象とすることにします。

仮の支給額を500,000円とします。まず、東京の協会けんぽの等級表を見ると、標準報酬月額は500,000円、健康保険料と厚生年金保険料を合わせて個人負担の社会保険料が70,425円であることがわかります。

雇用保険料は500,000円×3/1000=1,500円です。

所得税を求めるには、まず課税支給額を計算します。
月額500,000円-通勤交通費12,000円-社会保険料70,425円-雇用保険料1,500円=416,075円
が課税支給額となります。
この金額を月額表にあてはめると、所得税が17,980円であることがわかります。

では、手取りを計算してみましょう。
仮の支給額500,000円-社会保険料70,425円-雇用保険料1,500円-所得税17,980円=410,095円
となり、目標額400,000円と比べるとまだ多いですね。

そこで、410,095円-400,000円=10,095円多かったわけですから、先ほどの仮支給額から10,095円を引いて、仮の支給額を489,905円として、最初から計算し直します。

これを繰り返すと、488,891円の時に
社会保険料 70,425円
雇用保険料 1,466円
所得税 17,000円
で手取り保証額400,000円になります。
通勤交通費を含んでいるので、給与明細上は
基本給 476,891円、通勤交通費 12,000円
という表記になります。

もちろん実際の支給には、これに住民税控除が加わるので、手取り保証400,000円と言いつつ、必ず手取り40万円の支給がされるわけではありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
電卓で計算をすると、同じ計算を何度もしなくてはならないので、非常に苦労すると思います。EXCELの計算式を使えると比較的楽に支給額を計算できるでしょう。

また、一度支給額が計算できたとしても、各項目の料率や所得税月額表が変わるたびに、支給額の計算をし直さなければいけません。手取り保証契約の方の場合、人一倍に毎月の控除額の変化に気を付ける必要がありますので、ご注意ください。

計算に不安な方は、給与計算の専門家である社会保険労務士に一度ご相談をすることをお勧めいたします。

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