今般の働き方改革推進や新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、労務管理体制の見直し、これに伴う就業規則作成に関わるご相談を受ける機会が増えています。就業規則作成・届出の義務は「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に課せられるものですが、各社にお話を伺っていると、適正な形で作成・届出ができている事業場は意外と少ないかもしれないなと感じます。今一度、就業規則作成・届出義務について見直してみましょう。
- 就業規則は「正社員用」だけではダメ!非正規従業員を適用対象外とするのは労基法違反に該当します
- 「常時10人以上」は企業単位?それとも事業場単位?
- 要確認!「常時10人以上」に含めるべき労働者とは?
- まとめ
就業規則は「正社員用」だけではダメ!非正規従業員を適用対象外とするのは労基法違反に該当します
労働基準法第89条では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労基署長へ届けなければならない」旨が規定されていることは皆さんご存知の通りです。このあたりは広く周知されているためか、従業員数が10人以上になるタイミングで就業規則作成のご依頼をいただくケースは比較的多いように思います。ところが、「誰に適用する就業規則を作成しなければならないか」は、現場において曖昧になりがちなポイントのようです。例えば「ウチは正社員がほとんどだから、正社員向けの就業規則を作成・届出したい」というご要望をいただくことがありますが、結論から言えばこのケースは労基法89条に基づく就業規則作成義<務違反に該当するため、注意が必要です。
就業規則は、事業場の全労働者について作成し、届け出なければなりません。事業場内に就業規則の適用対象外の労働者が存在することで、使用者は労基法上の義務を果たしていないことになってしまいます。
「常時10人以上」は企業単位?それとも事業場単位?
また、「常時10人以上」の計算単位についても、しばしば曖昧になりがちです。具体的には、企業全体で10人以上なのか、それとも事業場で10人以上なのか、判断に迷われる方が多いようです。この点については、就業規則作成義務は企業単位ではなく、「事業場単位」での労働者数でみることになります。よって、原則としては10人に満たない事業場では就業規則作成義務はないということになりますが、このような小規模事業場に就業ルールは不要かといえば、必ずしもそうとは限りません。例えばこの小規模事業場があくまで支所的な位置づけであり、事業場としての独立性を持たない場合、そこで働く労働者にはその企業の別事業場(基点となるべき事業場)の就業規則が適用されることになります。よって、基点となるべき事業場では支所の状況をも考慮した就業ルールを検討するべきなのです。
要確認!「常時10人以上」に含めるべき労働者とは?
「常時10人以上の労働者」のカウントには、正社員のみに限らず、契約社員、パート・アルバイト等、雇用形態を問わず使用されるすべての労働者が含まれます。ただし、派遣労働者については派遣元でのカウント対象となるため、派遣先労働者数に含める必要はありません。年間を通じて人数が10名前後となる事業場においては迷われるところかと思いますが、「概ね10人以上を常時雇用しているが、一時的に10人を割り込むことがある」のであれば、就業規則作成義務が課せられます。このあたりの判断が難しい場合、労働保険年度更新の「常時使用労働者数」の算出式に準じて「過去12ヵ月の月間労働者数の合計÷12」で出てくる数字を元にすると分かりやすいかもしれません。