入社したものの、数日ですぐに退職してしまう、ということがあります。労働者には職業選択の自由がありますので、労働者がその判断を下してしまえば、それを止めることはできません。
では、数日で退職した場合、給与計算としてはどのようになるのでしょうか。特に社会保険料は例外的な扱い方になりますので、注意が必要です。ここでは、社員が入社後すぐに退職した場合の給与計算方法などについて解説します。
- 1、同月に入退社が起こった場合、社会保険料の「1ヶ月分」を給与から控除する
- 2、支払った厚生年金保険料は還付される可能性があることを伝える。
- 3、雇用保険、所得税は原則通り。支給した給与をベースに計算する。
- まとめ
1、同月に入退社が起こった場合、社会保険料の「1ヶ月分」を給与から控除する
健康保険、介護保険、厚生年金保険(以下、社会保険)への加入は、原則、月末時点の在籍で判断します。つまり月末時点でその会社に在籍をしていたら、その月はその会社の社会保険に加入していることになります。社会保険料も月末の在籍で控除するしないが決まることになります。しかし、同じ月に入社と退社があった場合、月末時点で在籍していないとしても、例外的に1ヶ月分の社会保険料が発生します。これを同月得喪と言います。同月得喪が起こると、本人負担はもちろん、会社負担も1ヶ月分発生します。
そのため、入社後すぐに退職してしまった場合、日割りで発生する給与の支給額よりも社会保険料の控除額の方が多くなってしまうことがあります。この時は、振込などの方法による入金を退職者に依頼してください。
退職をしてしまうと、連絡がとりづらくなる可能性があります。そのため、退職の意思を示し、それが承認された段階で速やかに給与計算を行い、退職者の負担額と入金方法を連絡する必要があるのです。
2、支払った厚生年金保険料は還付される可能性があることを伝える。
退職者の立場で気になるのは、その負担した社会保険料がどうなるのか、というところでしょう。会社側としては退職者と円満に別れるためにも説明をしておきたいところです。厚生年金保険料については、返還される可能性があります。条件は同月内に国民年金か、違う会社の厚生年金保険に加入することです。つまり、ほとんどのケースで該当するはずです。
同月に年金制度に加入して保険料を支払えば、同月に2回年金の負担をしたことになります。この場合、退職した方の会社には、退職者の厚生年金保険料が会社負担分と個人負担分を合わせて返還されます。会社は返還された金額のうち、個人負担分のみを退職者に連絡して返還する必要があります。
ご本人には、厚生年金保険料を返還する可能性があるので、連絡が取れるようにしておくことを伝えてください。また、入社の時点で給与の振込口座を把握しているはずですので、その口座に振り込みを行う旨を伝えておいた方が良いでしょう。
社会保険料の負担額が変わるので、源泉徴収票も変わることになります。差し替えの源泉徴収票もご送付ください、。
なお、健康保険料、介護保険料については、このような制度はありません。退職者は退職後に国民健康保険に入るなり、扶養に入るなりして新たな健康保険制度に属する必要があります。つまり、1ヶ月に2回、健康保険料を支払う可能性が出るということです。
入社と退職の手続き後に次の健康保険制度に再加入することになるため、退職後すぐに病院に行く場合に、新たな社会保険制度の健康保険証の発行が間に合わないことがあります。受信日に健康保険証が手元になくても、手続きを後からでも正しく行えば、健康保険で受診できないということはありません。詳細は受診する病院や市役所に問い合わせを行ってください。
3、雇用保険、所得税は原則通り。支給した給与をベースに計算する。
雇用保険料の計算は、原則通り、支給した金額に保険料率を計算して給与控除します。所得税も同様に課税額から算出することになります。また、社員会費など、労使合意に基づく控除については、このような事態を想定して、事前にルールを決めて、入社契約時に説明しておくことをお勧めします。
社会保険、雇用保険ともに、数日とはいえ、加入していたことは事実です。すぐ退職した社員の手続きというのは気持ちとして割に合わないかもしれませんが、資格取得及び喪失の手続きは確実に行いましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。入社後、何らかの理由ですぐ退職になるというのは決して珍しい話ではありません。会社としてはこのケースも想定をして、準備をしておきましょう。
同月の入退社で困ったことがあれば、お近くの社会保険労務士にぜひお問合せください。