無期転換の準備、進めていますか ?「有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック」詳細解説
労務


この記事の目次

無期転換の目的と背景


バブル経済の破綻からリーマンショックを引き金とする世界的な不況により、日本企業の従来の雇用形態である終身雇用制度は終わりを迎えました。

景気回復が見込めない状況の中で、各企業は設備投資などの出資を控えることと同時に、人件費についても調節することを必要と考えてきました。

評価制度を年功序列から成果主義や職能資格制度へと変えるとともに、雇用形態も会社の都合を反映しにくい正社員を控えて、派遣社員や契約社員、パート、アルバイトといった、雇用期間を会社の都合で調整しやすい有期契約社員へと移り変わっていきました。

その結果現在は、有期社員の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を反復更新しているという状況にまで進展してしまいました。

特に長期間雇用されている有期社員は、仮に「1年契約」で働いていたとしても、実質的には会社に必要不可欠な労働力であるにもかかわらず、ほぼ毎年「自動的に」更新を繰り返しているのが現状です。

このような、本来であれば無期労働契約として雇用されるべき労働者を正しく無期労働契約とすることで契約内容と実態を適切な状態に戻すことが重要です。また、有期労働契約の反復更新という、雇止めに対する不安を抱えている状態もよいとは言えません。

このような背景を元に、労働者を保護するために労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました。これが無期転換の目的です。

有期契約労働者の円滑な無期転換のためのハンドブック

このハンドブックでは、無期転換についての説明はもちろんですが、無期転換を避けるためのクーリング期間の考え方について説明があります。さらに、説明から一歩踏み込んで無期転換者を活用するための雇用形態の改善についても紹介しています。

ハンドブックの中から重要な部分を抜粋して解説したいと思います。

無期転換ルールとは ? ~労働契約法の改正~


無期転換ルールとは、「改正労働契約法」 (※平成25年4月1日施行) により、対応が必要になった新しいルールで、有期労働契約を反復更新し5年を超えた場合に有期契約労働者の申し込みによって労働契約の期間が無期労働契約に転換される、というものです。

なお、この対象となる有期労働者とは、パート、アルバイト等、名称を問われません。また、「5年」のカウントは平成25年4月1日からとなります。ただし、「派遣社員」の場合は、派遣元会社が無期転換への対応をする必要があります。

無期転換ルールは会社だけでなく有期労働者の方々にとっても重要なルールです。そのため、有期労働者の側も積極的にこのルールの情報を調べて有期労働者同士で共有する可能性は十分に考えられます。 有期労働者と会社側とでこのルールの理解に食い違いがあると摩擦の原因となりかねませんので、下記の内容を有期労働者の方々と共有することが大切です。

「無期転換申込権」の発生条件


もちろん、無条件で有期労働者全員を突然無期転換することを強制されるわけではありません。具体的には下記の3要件がそろったときに、無期転換申込権が発生します。

■ 無期転換申込権の発生条件
1. 有期労働契約の通算期間が5年を超えていること
労働契約の締結主体(会社)を単位として5年をカウントします。
例えばA工場からB工場に勤務場所を変更する等、事業場を変えても労働契約の締結主体に変更がなければ雇用契約を継続しているとみなされます。

2. 契約の更新回数が1回以上であること
契約更新が1回以上行われていることが要件となります。

3. 無期転換申込時点で同一の使用者との間で雇用契約をしていること

では仮に、御社の有期労働者が無期転換申込権を取得し、それを行使した場合どのようになるのでしょうか。ハンドブックには下記のように明記されています。

会社で雇用している有期労働者に無期労働契約への転換を申し込む権利(これを「無期転換申込権」といいます。)が発生した契約期間中に、その労働者から無期転換の申込みがあった場合は、使用者は申込みを承諾したものとみなされて断ることができず、その時点で無期労働契約が成立します。

突然このような事態にならないよう、事前に対応できる雇用形態を用意し、同時に就業規則等の整備をしておくことが大切です。

次章から、無期転換者への対応準備と活躍してもらうための環境整備について説明します。

無期転換者に活躍してもらうために


無期転換は正しく準備しておけば、単に有期労働者の雇用契約を無期へと変えるだけのものではなく、会社と労働者双方にメリットのある制度になります。

会社にとっては募集、面接や新人教育の負担を軽減した上で、即戦力を期待できる無期労働契約の社員を比較的容易に獲得できるようになります。 さらに、 会社は有期労働契約から無期労働契約に転換することで、長期間在籍してもらうことを視野に入れた社員育成を実施することが可能になります。

労働者にとっては雇用の安定性に欠ける有期労働契約から無期労働契約に転換することで、安定的かつ意欲的に働くことができます。

また、そのため、長期的な経験の積み重ねによるキャリア形成を計画することができます。

つまり、従来のように有期社員はいつまでも有期社員のままであるという考えではなく、やる気のある社員、能力のある社員に対しても無期社員への登用の道を作ることで雇用とその継続に柔軟さと安定感と仕事へのやる気を持たせることが大切です。

「無期転換制度の導入」を、人事管理を見直すきっかけとして捉えてみましょう



無期転換制度をきっかけに、多様な人材の労働意欲と能力を高め、労働に対する価値観の多様化に対応できる新しい人事管理の仕組みを考えることが必要になっています。

人事管理の上で、従来のいわゆる「正社員」との関係はもちろんですが、旧態依然とした管理形態では、無期転換者と有期社員との間で、労働条件において契約期間以外に差がない場合には、不公平感を発生させる原因にもなります。

そのようなことを避ける上でも、無期転換者と有期社員のやる気を引き出すためにも人事管理の見直しが求められます。

■ 人事管理の見直し方法の例
STEP1. 有期社員の就労実態を調べる
STEP2. 社内の仕事を整理し、社員区分ごとに任せる仕事を考える
STEP3. 適用する労働条件を検討し、就業規則を作る
STEP4. 運用と改善を行う

特に注目していただきたいポイントは STEP 2の下記の部分です。
労働に対する価値観の多様化が近年注目されている中、無期転換への対応を機にワークライフバランスの実現を視野に入れた人事管理を目指したものになっているということです。

有期社員の転換後の役割を考える


広く『無期転換』とは言っても、無期への転換方法には、主に次の3タイプがあります。

① 雇用期間の変更
契約期間のみを変更する転換で、人件費を据え置くことが出来ます。
無期転換前と比べ、職務や処遇を変更する必要がない、もしくは希望しない社員が対象となります。

② 多様な正社員への転換
いわゆる「正社員」と比較して、労働条件に制約を設けた正社員(「多様な正社員」)への転換です。 転勤がない、残業時間に制限を設ける、などで働き方に制約がある社員が働き続けやすくなります。
たとえば、子育てや介護と仕事の両立を図りたい社員や特定職務の仕事を希望する社員などが活躍できます。

③ 正社員への転換
一般に「正社員」「総合職」等と呼ばれるいわゆる「正社員」への転換です。キャリアアップを図り、中核労働力としてより会社に貢献したいと考える社員が活躍できます。
職務能力や職務内容がいわゆる「正社員」と同等の社員が対象となります。

上記の①から③のうち、このハンドブックで注目されるのは②「多様な社員への転換」です。

これまでの人事制度によく見られた社員の区分の多様化は、あくまでも「正社員」の中からの派生で、いわゆるポスト不足問題への対応を目的としたものが多くありました。一方、この②「多様な社員への転換」では労働者の労働に対する価値観への理解やいわゆる介護離職や妊娠・出産に伴う離職などを予防する目的となっています。

今回の無期転換ルールの目的とされている、雇用が継続される安心感を無期転換者に実感してもらうことはもちろん、これから将来の人材獲得の武器としても無期転換への準備は軽視できるものではありません。会社の労働環境の健全化は良い人を集め、良い人を育てます。無期転換ルールは積極的に取り組む価値が見出せるものではないでしょうか。

国は無期転換に関する情報提供や助成など、さまざまな支援を行っています。無期転換へ対応をする場合の助成金も下記のようなものが準備されています。円滑に制度導入を進める上で、ぜひ積極的なご活用をご検討ください。

■ キャリアアップ助成金
有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などの労働者の企業内でのキャリアアッ プ等を促進するため、正社員化、人材育成、処遇改善の取組を実施した事業主に対 して助成する制度です。 次の3コースがあります。

① 正社員化コース
有期契約労働者等の正規雇用労働者・多様な正社員等への転換等をした場合に助成

② 人材育成コース
有期契約労働者等に対する職業訓練をした場合に助成

③ 処遇改善コース
有期契約労働者等の賃金規定等の改定、共通処遇推進制度(健康診断制度、賃金 規定等の共通化)の導入、短時間労働者の週所定労働時間を延長し、社会保険を適用した場合に助成

無期転換の対応策をはじめ、関連する助成金等の受給等についてアドバイスから運用等の実務までご不明な点がございましたら、専門家にご相談ください。御社の状況に最も適した対応をご提案いたします。

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