採用面接は、会社と面接者が一緒に働けるかどうか判断をする重要な時間となります。そのため、その方の適性を見極めながら、同時に一緒に働けないと感じるような不安はできるだけ払拭しておきたいと思うことは自然なことです。
一方でまだ社員ですらない方に、あれこれとネガティブな情報を聞き出そうとすることにためらうでしょう。
ここでは、面接者にどこまで質問して良いのか、また避けるべきなのか、その質問の踏み込み加減について解説をいたします。
1、就職差別につながるような質問はNG。
まず原則となることは、就職差別をしない、ということです。就職差別とは、性別や本籍地など、本人の努力ではどうしようもないことを採用可否の判断基準にすることです。具体的には以下のような質問はNGと心掛けてください。
・本籍、出身地に関すること(例;出身地はどこか)
・住居やその環境のこと(例;自宅は一戸建てか)
・家族のこと(例;お父さん、お母さんの職業は)
・資産のこと(例;車を持っているか)
・思想、信条、宗教、支持政党など(例;あなたが信じている宗教はあるか)
・男女雇用機会の均等に触れること(例;結婚の予定は)
これらの質問は各種の労働法に抵触することはもちろん、基本的人権を侵害する行為として捉えられてしまいます。面接者はこれらの内容に答える義務はありません。
また、このような質問をした会社ということで、自社の評判を下げることになりかねないので、面接者は十分に気を付けましょう。
このような質問は、雑談のつもりで何気なく口から出てきてしまうケースが多いようです。質問項目は事前に用意し、不必要な質問をしない準備をしておいてください。
2、病歴を尋ねるのはNGではない。しかし、極力避けるべき。
会社が気になるのは、病歴ではないでしょうか。特にうつや精神病の場合、自社で同様の症状が出るのではないか、という不安もあるでしょう。実は、病歴や服薬について尋ねることについて、明確にNGとしている法律などはありません。確かに、特定の業種・職種では、その方の病気が決定的に自社の仕事に向かないケースもあり、それを確かめる質問は、採用でも重要なポイントになることもあります。
一方で、このような情報は極めてプライベートな事情であることは言うまでもありません。これらのことを聞き出そうとする質問は、やはり就職差別を行おうとしていると捉えられるリスクがあります。また、本人が本当のことを言う義務もありません。リスクだけで実りが少ない質問となってしまうので、やはり避けた方が良いということになります。
普段のコミュニケーションでも、これらのことは関係が浅いうちは聞かないはずです。健康な方がそれを突然聞かれて、悪印象になることも避けられません。このような観点からも病歴について聞き出そうとするのはやはりやめておいた方が良いでしょう。
3、本当に聞きたいのは、自社の業務ができるか、ということ。
では、何なら聞いて良いか、という話になります。そこで考えていただきたいのは、本当に聞きたいのは病名なのか、ということです。
実は知りたいことは病気や薬の名前ではなく、その方が自社で働けるだけ健康か、ということではないでしょうか。
採用者には「〇時間残業がある」「事故が無いように厳しく行っている」といった、自社の文化や雰囲気を、社員に負担になるポイントも含めて正直に伝えましょう。そのうえで、「そのような環境で仕事が行えるかどうか判断してほしい」と採用者に言うなれば覚悟を求める、ということは、できるだけ行っていただきたいところです。
特に入社後すぐに退職をする社員が多い会社では、そもそも採用時にどんな話をしているのか、チェックしてみてください。自社のネガティブな情報を隠して、甘言で釣っていないでしょうか。
うつや精神病の経歴があっても、活き活きと会社で仕事をされている方もいます。
社員がすぐ退職することを、病歴を隠したことに理由を求める前に、自社の採用プロセスが適切かどうか、見直す機会を得ていただければ幸いです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。就職差別につながるような質問を採用者に投げかけることはNGです。病歴や服薬についても、質問としては避けるべきです。それよりも、自社の情報を正直に提示したうえで、本人が自社で働けるほど健康かどうかを問いてください。
人の採用で困ることがあれば、お近くの社会保険労務士にぜひお問合せください。