その認識、NGかも?最新版『労働時間適正把握ガイドライン』に注目
労務


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昨今、企業における労働時間の長時間化が問題視されるようになったことを受け、厚生労働省では昨年末に「過労死等ゼロ緊急対策」を打ち出し、順次、現状打破に向けた具体的な取り組みを行っていく方針を固めました。

参照 : 厚生労働省「過労死等ゼロ緊急対策」資料

対策の一環として注目を浴びたのがすでにこのブログでご紹介した「特別条項付36協定への上限設定」でしたが、併せて「労働時間の適正把握」に関するガイドラインが公開されています。

参照 : SHARES LAB『特別条項付36協定に「上限設定」へ。今後求められる“脱・長時間労働”への取り組み』

「ウチは大丈夫!」と考えていても、意外な盲点があるかもしれません。労働時間の実態は、今後、指導・調査の強化項目となってくる可能性は大いにありますから、くれぐれもご注意ください。

まずは労働時間把握に関する基本ルールを確認


労働時間の適正把握に関するガイドラインは、実は以前から存在していました。こちらは、平成12年11月30日に開催された中央労働基準審議会の建議に伴い発出された通達で、内容としては事業主が講ずべき具体的な措置等がまとめられています。

こちらのページを訪れている皆さんであれば、基本的なルールとして既にご存じの内容がほとんどかと思いますが、まずはご一読ください。

参照 : 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」

上記の基準に加え、今年1月20日に策定されたガイドラインを下記よりご確認いただけます。

参照 : 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」

言及されていることは概ね従来のものと同様ですが、今回新たに追加されているのは「労働時間の考え方」に関する項目です。「労働時間」というと、一般的には「出退勤記録」等で管理された時間のみを労働時間と把握しているケースがほとんどかと思いますが、実際の状況によってはこうした認識を改める必要があります。

今一度見直したい「労働時間の定義」


今回のガイドラインでは、以下のようなケースについても、労働時間としての妥当性を個別に判断されるべきとされています。

ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

ウ 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間 ”
以上、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」より抜粋


これらのうち、特に注意したいのが「ウ」の項目です。

特に美容業においては、閉店後に従業員が居残って練習を行っているケースを散見しますが、こうしたトレーニングが自主的に行われているものなのか、もしくは半ば業務命令として行うべきとされているものなのかによって取扱いが分かれるところでしょう。

今や、「アシスタントなら、居残って練習して当然!」といったオーナーの主張が当然に通用する時代ではありません。自主的な練習が必要であることをしっかり認識してもらう、その上で、店としては閉店後に場所を貸すことは出来る旨を説明し書面に残す等して、本当の意味で従業員の自主性に任せるやり方を徹底することが重要になります。

ただしこの場合、間違っても、居残って練習しないスタッフに対して不利益な取扱いをしてはいけません。そして当然のことながら、閉店後の練習参加を義務とするのであれば、賃金を支払わなければなりません。

また、美容業以外の企業においても、賃金の発生しない社内行事や研修、勉強会、宴会への参加を求める際には注意が必要です。

加えて、明らかに通常の業務時間内にこなしきれない業務量を任せておきながら、「残業は認めていないから・・・」と賃金を支払わないことは認められません。事業主に対しては、個々の従業員の労働時間だけでなく、抱えている業務量をも把握し、適正な対応をしていくことが求められることになります。

従業員の労働時間が正しく把握されることで、結果として、職場環境に抜本的な変化がもたらされるケースも出てくるのではないでしょうか?「面倒だな・・・」と考えず、ぜひこの機会に前向きに取り組んでみてください。職場意識改善助成金など、活用できる支援もあります。社会保険労務士までお気軽にご相談ください。



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