退職後の医療保険の選択
退職予定の方からよく聞かれることの1つに、医療保険は、国民健康保険に加入したほうがいいのか、任意継続被保険者として健康保険に加入したほうがいいのか。という質問があります。
どちらを選ぶとお得かは退職者によって、ご本人はもちろんですが家庭の状況にも影響を受けることがあり、一言で答えられるものではありません。だからといって、答えられないのでは、頼りにならない会社、やめる人間に対して冷たい会社などとも受け取られかねません。
正解を示しにくい質問ですが、まずは納得してもらえるアドバイスができるよう、それぞれの制度について簡単に説明します。
国民健康保険
国民健康保険の保険料は加入する世帯の人数と前年の所得によって計算されます。この計算はお住いの市区町村によって異なります。
また、退職等の状況によっては、保険料の減額あるいは免除の制度もありますので、各市区町村の窓口にお問い合わせください。
・世帯人数
・前年の所得
任意継続被保険者制度
任意継続被保険者という制度は、在職時に加入していた健康保険に個人でそのまま加入を継続するというものです。在職時と違う点は、事業主の保険料負担がなくなり、保険料の全額を本人が負担することになります。
まず、任意継続被保険者となる要件は下記のとおりです。
・資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。
・資格喪失日から「20日以内」に申請すること。
・任意継続被保険者に加入できる期間は、「任意継続被保険者となった日から2年間」です。
次に任意継続被保険者の健康保険料は次の式になります。
※任意継続被保険者の注意点として、年金は、厚生年金から国民年金に切り替えが必要です。
それぞれの『保険料』負担から比較する
上記のようにそれぞれの保険ごとに保険料の計算方法に違いがあります。その中でも保険料を比較する上でまず確認しておくべきは、任意継続被保険者の保険料の計算では、被保険者本人のみの計算であるのに対して国民健康保険には扶養という考え方が無く、加入する人数が保険料に大きく影響するという点です。
つまり、扶養家族が多い方であれば、任意継続被保険者を選択する方がお得になる場合があります。
扶養家族が多い方は任意継続被保険者がお得なケースが多い
「医療費」の負担から比較する
世帯人数以外にも、チェックしてほしいポイントがあります。
まず、1点目は年齢です。加入する本人あるいは同一世帯内の方の年齢が70歳以上か70歳未満かを確認してください。70歳以上の方がいる場合、国民健康保険か健康保険(任意継続被保険者)かで高齢受給者証による保険料負担の割合に違いがあり、結果として医療機関での窓口での支払いに違いが出る可能性があります。ここがチェックしておくポイントになります。
2点目は70歳未満の場合ですが、直近の1年間に高額療養費制度の対象となった月が3回以上あるかどうかをチェックしてください。
今後さらに継続して高額な医療費が見込まれるようであれば、高額療養費制度として4回目の対象月からは自己負担額限度額が引き下がりますので、任意継続被保険者として、従来の健康保険に加入したままでいた方がお得になる場合があります。
これを国民健康保険に切り替えると、多数回該当月は1から数え直しとなってしまいますので注意が必要なポイントです。
世帯人数の点はよく指摘されるポイントですが、毎月々支払う『保険料』はもちろん、さらに受診毎に窓口で支払う『医療費負担』の状況を考慮して選ぶことで、負担の少ない、お得な医療保険を選ぶことができるのではないでしょうか。