新型コロナウイルスワクチンの職域接種が開始へ。ワクチン接種に伴う労務管理のポイント
労務


新型コロナワクチンの接種が徐々に進み、報道等でも見聞きする機会が増えていますね。現在は主に医療従事者と高齢者への接種が進められているところですが、今後6月中にも企業や大学等、職域(学校等を含む)単位でのワクチン接種が開始される予定です。今号では、職域接種に関わる最新情報(2021年6月4日時点)と、従業員のワクチン接種に際して検討すべき労務管理のポイントを解説します。

この記事の目次

職域接種開始は2021年6月21日からの予定

新型コロナウイルスの職域接種に関わる概要は、厚生労働省から自治体宛に発出した事務連絡(2021年6月1日付)にてご確認いただけます。これによると、職域接種の開始時期は「2021年6月21日から」とし、自治体によって適宜前倒しが可能となっているようです。接種会場・医療従事者の確保については企業や大学等が自ら確保することとし、企業単独での実施のほか中小企業が商工会議所等を通じて共同で実施すること、企業が下請け企業など取引先も対象に含めて実施すること等を可能としています。また、高齢者や基礎疾患を有する者が優先的に接種できるよう配慮すべき旨も記載されています。自治体から接種券が届く前でも、職域接種が可能です。 加えて、報道では、従業員数1,000人以上の企業から順次開始する方針が示されていますね。今後、さらに具体的な内容が明らかになっていくものと思われます。

参考:厚生労働省「新型コロナワクチンの職域接種の開始について」

従業員のワクチン接種を「欠勤扱い」としない企業続々

企業の安全配慮義務の観点から、従業員のワクチン接種を促進する動きとして、休暇制度の創設や有休取得奨励等があることは以前の記事で解説した通りです。今後開始する職域接種に際しては、勤務時間中のワクチン接種を欠勤扱いとしない旨の方針を示す企業が続々と出てきています。

関連:NHK「勤務時間中のコロナワクチン接種 「欠勤扱いとせず」 日本生命」


ワクチン接種時の労働時間の取扱いと併せて、副反応対応についても検討しておく必要があります。腕の痛みや頭痛といった症状で就労が難しくなるケースが想定されますので、業務遂行に支障が生じないような接種スケジュールを考えなければなりません。

従業員に対するワクチン接種の強制は不可

今後、職域接種が進むと、どうしても懸念されるのが「従業員に対するワクチン接種の強制」です。従業員や顧客の安全確保のため、さらに出社や出張といった通常業務を安心して遂行できるようにするために、会社として従業員のワクチン接種を進めたい考えを示すケースは少なくありませんが、一方で、ワクチン接種はあくまで「労働者の自由意思に基づくもの」であることを踏まえる必要があります。

企業が従業員に対して、ワクチン接種の強制をすることはできません。また、ワクチン接種をしないという理由のみで従業員に下した懲戒処分は無効と判断されます。さらに、ワクチン接種をしない従業員に対して差別的な扱いをすることも認められませんのでご注意ください。

まとめ

企業はあくまで、従業員が安心してワクチン接種を検討できるよう社内制度を整えた上で、接種を奨励する立場を示すにとどめるのが得策です。今後、ワクチン接種が幅広く普及することを想定し、早期に会社方針を定め、体制整備に努めましょう。

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