共働き夫婦の子どもはどちらの健康保険の扶養にするか。
労務


共働きで子どもがいる場合、どちらの扶養にするのが良いでしょうか。以前だと大黒柱である男性の扶養にするのが当たり前、という時代がありましたが、家族の形も多様化し、そうとも言えなくなっています。

実は厚生労働省より、夫婦が共働きの場合の被扶養認定の取扱いを明確化する通達を発出しています。ここでは、共働き夫婦における子どもの扶養の考え方について、解説をいたします。

この記事の目次

1、被扶養の原則を確認。

まずは、被扶養者となる原則の確認です。自身の子どもを想定すると、年間の見込み収入額が130万円以下で、かつ同居なら扶養者の収入の半分以下、別居なら収入が扶養者からの仕送り額未満であることが条件となります。

収入要件は子どもの場合はあまり問題になりませんが、アルバイトの収入が多い大学生などで、子どもでありながら被扶養者から外れるケースもあります。当てはまりそうな場合は事前に説明をしておきましょう。

2、原則は収入の多い方。ただし年収差1割以内なら選択可能

では、共働き夫婦の場合、どちらの扶養にしたら良いでしょうか。まず今後1年間の収入見込みが多い方の被扶養者にすることが原則です。以前は前年の年収を比較し、多い方を被扶養者にするとしていましたが、今年の8月1日から適用される基準が変わることになりました。

ただし、夫婦ともに被用者保険(会社員等の被雇用者が加入する健康保険)で、年収差が1割以内の場合は、届出による主たる生計者の被扶養者とする、とされています。同程度の収入の夫婦ならば、どちらの被扶養者としても構わない、ということになります。

例外として、扶養者が育児休業を取得した場合は、育休期間中の被扶養者の異動はしません。

また、年収が逆転し、被扶養者を異動させる際は、無保険状態を防ぐため、先に被扶養者認定を確認してから、もう一方の認定を削除することになっています。

誤解されがちですが、扶養には「社会保険の扶養」と「所得税の扶養」があり、この扶養を別々にしても構いません。所得税扶養は、特にどちらの扶養に入れなければいけないという決まりはありません。ちなみに、所得税の場合は16歳以上の場合のみ、収入の高い方の扶養にする方が所得税の面で有利になるようです。(16歳未満はどちらの扶養にしても所得税は変わりません。)

被用者保険同士の夫婦であれば、子どもをどちらの被扶養者としても金銭的な負担は変わりません。ただし、夫婦で別の被用者保険で、かつ年収差が1割未満であれば、実質的にその組合の福利厚生などからどちらかを選択する、ということはあるでしょう。また、健康保険組合によっては、被扶養にできる基準が上記の原則と違う場合もありますので、実際に被扶養者に入れる場合は、健康保険組合にご確認ください。

3、国民健康保険と被用者保険の組み合わせの場合

金銭的負担が変わるのは、片方が自営業で国民健康保険、片方が会社員で被用者保険という場合です。国民健康保険には扶養という概念が無いため、子どもを国民健康保険に入れることで追加の保険料が発生します。

しかし、前項でお話をした年収の多い方をつけるという原則は変わりません。あくまで今後1年間の収入の見込みからどちらの社保に入れるのか決めることになります。

しかし自営業者は収入の変動が激しく、今後の見込みを出すのが難しいという側面もあります。その1年間の収入の見込みは個別に判断する、と言うしかありません。原則を理解しつつ、個別に判断を行い、どちらの社会保険に子どもを入れるか決めてください。年収差が比較的少なければ、基本的に被用者保険に子どもを被扶養者として入れる方が、金銭面では有利と言えるでしょう。

なお、こちらも健康保険組合によっては基準が違うケースもありますので、ご注意ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。被用者健保同士の夫婦であれば、原則は今後の1年間の収入の見込みが高い方の扶養としつつ、その差が1割未満なら、片方を被扶養者として届け出ればOKです。片方が自営業で国民健康保険であれば、その収入の見込みを個別に判断することになります。

子どもをどちらの被扶養者にするか迷ったら、健康保険組合(または協会けんぽ)、年金事務所、あるいは社会保険労務士にご相談ください。

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