コロナ禍の雇用維持に活用したい産業雇用安定助成金、「グループ間出向」が幅広く対象に
労務


新型コロナウイルス感染症が依然として猛威をふるう中、企業における目下の課題といえば「雇用維持」ではないでしょうか。こうした状況の中、コロナ禍の雇用維持への対応として創設された「産業雇用安定助成金」について、2021年8月1日より「独立性が認められない事業主間で実施される在籍型出向」が新たに助成対象となり、制度拡充が図られています。

この記事の目次

2021年2月5日創設「産業雇用安定助成金」とは?

産業雇用安定助成金とは、新型コロナウイルス感染拡大の影響による一時的な事業活動の縮小・停止に対応すべく、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元・出向先双方の事業主に対して、出向に要した賃金や経費の一部を助成する制度です。

助成されるのは、以下の「出向運営経費」と「出向初期経費」です。 ・出向運営経費:出向元事業主及び出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など、出向中に要する経費の一部
・出向初期経費:就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの出向の成立に要する措置を行った際の経費の一部

産業雇用安定助成金の支給対象となる「出向」「事業主」「出向労働者」の要件に関しては、以下よりご確認いただけます。

参考:厚生労働省「産業雇用安定助成金」

「産業雇用安定助成金」2021年8月1日以降の拡充内容

産業雇用安定助成金の支給対象となる「出向」について、2021年8月1日以降、これまで対象外とされていた「独立性が認められない事業主で実施される出向」も一定要件を満たす場合に助成対象となりました。

新たに助成対象となる出向の要件は、以下の通りです。

■資本的・経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められない事業主間で実施される出向
・子会社間の出向(両社の親会社からの出資割合を乗じて得た割合が50%を超える場合に限る)
・代表取締役が同一人物である企業間の出向
・親会社と子会社の間の出向
・「人事、経理、労務管理、労働条件等の決定への関与」や「常時の取引状況」などを総合的に判断し、独立性が認められないと判断される企業間の出向

■新型コロナウイルス感染症の影響による雇用維持のために、通常の配置転換の一環として行われる出向と区分して行われる出向

■令和3年8月1日以降に新たに開始される出向


ただし、「独立性が認められない事業主で実施される出向」に際しての助成率等については、通常とは異なる取扱いとなっているため注意が必要です。具体的には、「出向運営経費について通常とは異なる助成率の適用」「出向初期経費助成の不支給」があります。

参考:厚生労働省「独立性が認められない子会社間などの「在籍型出向」も産業雇用安定助成金の助成対象になります」

コロナ禍の雇用維持に、「雇用シェア」という選択肢

新型コロナウイルス感染症の影響で、一時的に雇用過剰となった企業が従業員の雇用を守るための対策のひとつとなる「雇用シェア=在籍型出向」。産業雇用安定センターでは、雇用シェアによる労働者の送出・受入を前向きに検討する双方の企業に対し、マッチング支援を行っています。こうした施策・支援を活用しながら、コロナ禍の厳しい状況を乗り切っていく方法もあります。


出典:公益財団法人「雇用シェア(在籍型出向制度)を活用して、従業員の雇用を守る企業を無料で支援します」


雇用維持にお悩みの企業においては、雇用管理の専門家である社会保険労務士を活用し、現場に合った取り組みや助成金制度活用に目を向けてまいりましょう!

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