その給与規程は不利益変更にならないか。裁判事例から給与規程変更で気を付けるべきことを解説します。
労務


給与規程を変更する際に気を付けるべきことは、従業員への影響度合いです。場合によっては従業員にとって、事実上の減給になることもあるでしょう。

先日、給与規程の変更を従業員が不服とした裁判で、この規程変更を無効とされた事案がありました。規程変更の主旨は、歩合制を廃止して、固定残業制にする、というものです。合理性があるようにも聞こえるこの変更がなぜ無効とされたのか、そして給与規程変更時に検討すべきポイントを解説します。

この記事の目次

1、時間単価はアップでも、総額において減額なら不利益と判断される。

元々この会社では歩合給を支給していました。しかし実質的には、最低歩合給として10万円近い金額が毎月同じ名目で支給されていました。これが固定残業制に移行することで、全体の支給額でみると減るようになっていたのです。

会社側は、従業員側に時間外労働はほとんど無く、実質的な一時間当たりの単価は上がるため、不利益変更ではないと主張しましたが、認められませんでした。

また、前規程では時間外労働を行うことで時間外割増賃金が発生するのに対し、改定後は一定の条件を超えないと同賃金が発生しないことになり、不利益の度合いが大きいと判断されています。

この裁判例からも、いざ不利益変更をめぐってトラブルになった場合、時間単価ではなく総額を重視されるということがわかります。総額が下がるということは、生活に直結するものだからです。

2、不利益変更になるのであれば、代償的措置の検討を。

給与規程の変更の状況によっては、どうしても特定の従業員に賃金総額の減少を求めるケースもあるでしょう。この場合に必要なのは代償的措置です。同裁判では、そもそも不利益変更と会社が認識していなかったため、この代償的措置がありませんでした。

代償的措置とは、賃金総額の減少を緩和することです。例えば賃金減少する期間に、その差額を調整手当として支給します。調整手当を徐々に減らすことで、生活への影響を軽減させるのです。

大事なことは、従業員の生活に配慮できているか、ということです。従業員との話し合いにおいても、必ず避けて通れない内容になると心得てください。

3、会社の経営状況も考慮し、慎重に判断する。

同裁判では、会社の経営状況も考慮に入りました。つまり、実質的な給与の減少を従業員に強いなければいけないほど、経営が困難な状況ではなかったということです。この給与規程は不利益変更であり、その合理的理由も無い、というのが裁判所の判断ということになります。

その他、労働組合がある場合は組合との同意があったかどうかなども、その不利益変更の合理性を判断する基準になります。実際に給与規程の変更が不利益変更にあたるかどうかは、「こうしてれば良い」と決められるものでもなく、総合的な状況からケースバイケースで検討されます。

会社としては、給与規程が社員の不利益変更になっていないかを慎重に判断をすることが大事です。規程の変更にあたっては、従業員はもちろんのこと、社労士などの第三者も含めて、客観的な判断を入れることをお勧めします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
労使間のトラブルを避けるためにも、給与規程の変更が不利益変更にあたらないか、十分に注意してください。賃金の総額や生活への影響を考慮しながら、慎重に判断しましょう。

トラブルを避けるという点で、一番大事なのは従業員への誠意ある説明です。なぜ給与規程を変更するのか、不利益をどうやって緩和するのか、特に不利益変更がある場合は、自社の経済状況も含めて、説明を尽くしてください。

給与規程の変更にあたっては、社会保険労務士の意見を入れることをお勧めします。ぜひお気軽にご相談ください。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。