自社社員がオリンピック競技中にケガをしたら労災か。運動と労災の関係性について考える。
労務


東京オリンピックが終わりました。賛否両論はありますが、少なくとも、アスリートたちの健闘を称えるところに異論は無いでしょう。

ところで、アスリートは必ずしもプロ選手ではありません。中には企業スポーツの一員として参加をする選手もいます。そんな選手が練習中や競技中にケガをした場合、それは労災になるのでしょうか。ここでは企業の一員として活躍するアスリート社員のケガを通して、労災の考え方について解説をします。

この記事の目次

1、アスリートの労災でも「業務遂行性」と「業務起因性」の両方が求められる。

まずは労災の原則から押さえておきましょう。労災保険の適用には、業務遂行性業務起因性が求められます。

業務遂行性とは、事業主の支配・管理下の傷病であったか、ということです。仕事をしている時間中に傷病を負った時は業務遂行性が認められますが、終業後に傷病を負っても、業務遂行途中とは言えず、それは労災適用にはなりません。

なお、出張中は、私用の寄り道などをしない限り、住居や事業場を離れてから帰着するまで業務遂行性が認められると解釈されます。

業務起因性とは、その傷病が業務を行うことによって得たものかどうか、ということです。仕事中の時間であっても、こっそり抜け出した時に負った傷病は業務起因性があると言えないでしょう。

業務遂行性と業務起因性、この2つが認められてはじめて労災保険が適用されるのです。

2、仕事としてスポーツをしているなら、労災適用は可能

一般的な社員だと、スポーツをして傷病になるというケースは少ないように思えますが、無いとも言えません。例えば、社内運動会でケガをした場合はどうなるでしょうか。

この場合は、その運動会が「業務命令であったか否か」が大きな争点となります。全員参加が義務付けられているのであれば、それは業務中と言えるでしょう。全員参加とは言っていないが、事実上の全員参加や強制があった場合でも、労災の適用に十分議論できるところです。

また、接待ゴルフなど、顧客との付き合いでスポーツをする場合でも、労災認定の余地があります。顧客との親睦を図ることは大事ですが、そこでケガをしたときは会社として対応することも検討しなければならないということです。

3、オリンピック出場でケガしたら労災?

では、オリンピックに出場するアスリート社員の競技中のケガは労災の対象でしょうか。オリンピックは会社ではなく、日本やその国を代表して出場するものですが、業務遂行性や業務起因性は認められるのでしょうか。

実は、運動の結果で起きる労災認定の事案の判断を統一化するため、「運動競技に伴う災害の業務上外の認定」についての解釈例規が示されています(平成12・5・18基発366号)。ここでは、対象となる業務行為は大きく「対外的な運動競技会」と「事業場内の運動競技会」に分けられます。

前者において「所属事業場の代表選手として出場する実業団競技大会のほか、日本代表選手として出場するオリンピック等の国際的競技大会等」が該当するとされています。実は、既に社内の選手がオリンピックに出場したときの労災は想定されているのです。

業務として認められるためには、競技大会出場が出張、出勤として扱われていること、旅費負担が事業主(または競技団体等)で行われ、労働者が負担しているものではないことが必要です。

つまり、オリンピックであっても、競技を行うことが契約に盛り込まれているアスリート社員であり、競技が出張扱いで旅費負担が自費でなければ、そのケガは労災適用となる可能性が高いということになります。これは競技中だけではなく、そのための練習などでも判断基準は同じです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。アスリート社員でもあっても労災適用を受けるためには業務遂行性と業務起因性が求められます。この2つがそろっていれば、オリンピック中のケガは労災扱いとなる可能性が高いということです。

実際には、労災適用については、ケースバイケースで判断されます。仕事中の運動の傷病については、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご相談ください。

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