「キャリアアップ措置」は何をすべき ? 労働者派遣事業許可申請対応マニュアル
労務


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平成27年の法改正により、労働者派遣事業がすべて「許可制」で一本化されたことを受け、注目される派遣事業許可申請。とりわけ、すでに特定労働者派遣の届出をしている事業所においては平成30年9月29日までに切替手続きを行う必要があるため、弊事務所にも申請代行に関わるお問い合わせが増えてきています。

中でも、特に多いご質問は「キャリア形成支援制度」に関する事項です。今号では、労働者派遣事業許可申請に必要なキャリアアップ措置について、具体的にどんなことをすべきなのか、計画書作成の際の注意点等を解説していきます。

教育訓練の妥当性は「段階」「目的」「期待される成果」で判断される


平成27年改正において、派遣元は「キャリア形成支援制度」を策定し、派遣労働者に対して継続的な教育訓練を実施することが義務付けられました。
このたび義務化された内容としては、下記の通りです。

■ すべての派遣労働者が利用可能な、職業生活の設計に関する相談窓口を設置すること
■ 相談窓口には、キャリアコンサルティングの知見を有する担当者を配置すること
■ 派遣労働者のキャリア形成を念頭においた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めること
→すべての派遣労働者を対象としたもの
→有給かつ無償の教育訓練であること
→派遣労働者のキャリアアップに資するものであり、長期的なキャリア形成を念頭においたものであること

参照 : 厚生労働省告示第391号

上記のうち、申請者である皆さんが知りたい「結局どんな教育訓練を準備すれば良いか」についてですが、ポイントは「適切な段階で、必要な能力を高められること」が明らかであるかどうかにあります。

例えば下記の3ステップを軸に、具体的に派遣労働者の入職から向こう4年間の教育訓練をイメージしてみると、分かりやすいかと思います。
1. 新規採用者向けに、基本的なビジネススキルを養う訓練
2. 従事する業務について、段階的なキャリアアップを目指せる訓練
3. 最終的に、現場でリーダーとして活躍するために必要な能力を高める訓練

1年目は「1」をメインに「2」の導入的な能力向上、 2年目~3年目は「2」の訓練を中心に、 そして3~4年目以降は「3」に関する訓練も取り入れる というように、それぞれの段階に相応しいキャリアアップ訓練を考えていきましょう。

「1」「3」のカテゴリについては業種を問わず共通する内容がいくつか想定されますが、「2」については派遣労働者が従事する業務と深く関わりのある訓練を取り入れる必要があります。

計画書には、労働者のキャリアアップにおける教育訓練の目的と意義を記載する欄がありますから、この部分をしっかり説明できるかどうかが重要となるようです。

①派遣労働者の入職から向こう4年間の教育訓練をイメージする
②労働者のキャリアアップにおける教育訓練の目的と意義をしっかり説明する


審査では、こうした計画の内容に関することで追記や再考が求められる例を散見します。

その他、フルタイム1年以上雇用見込派遣労働者の場合の、キャリア形成支援制度に関する計画書作成時の注意点としては、 「平均実施予定時間の合計」について、1~3年目は「8時間」を下回らないこと、4年目以降が「0」とならないこと 「教育訓練実施にあたって支払う賃金」について、労働者派遣事業計画書「平均的な1人1日(8時間)当たりの賃金」に記載した額の1/8を下回らないこと が挙げられます。

準備~許可までの目安は「6ヵ月間」。早めに準備を進めましょう


労働者派遣事業許可申請に関する全体の流れについては、すでにSHARES LABへの投稿でご紹介しています。

参照 : SHARES LAB『平成27年法改正で厳格化 ! 労働者派遣事業許可申請に向けてのスケジュールチェック』

参照 : SHARES LAB『経過措置は平成30年9月29日まで!「特定労働者派遣事業」から改正後の「労働者派遣事業」への切替手続』

労働者派遣事業の許可は、申請したらすぐにおりるものではありません。
審査が滞りなく進んだ場合でも、許可予定日は申請書類の受理月から3ヵ月後の1日付。書類作成や添付資料の準備等に1~2ヵ月かかるとすれば、遅くとも「許可が必要となる月の半年前」には着手している必要があります。

特に経過措置期間である平成30年9月29日以前半年間は申請が集中し、書類の受理や審査に時間を要することが予想されますから、余裕をもって準備を進めてまいりましょう !

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