雇用調整助成金とは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、労使間の協定に基づき、休業を実施する事業主に対して、休業手当等の一部を助成するものです。
この雇用調整助成金が、新型コロナウイルス感染症の影響により休業する場合には、特例措置として助成率等が上乗せされます。この特例措置は現在では2021年11月まで適用がされることが決定されています。
今回は、この雇用調整助成金の特例措置について、通常の雇用調整助成金と比較をしながら、主な要件等の概要についてご紹介を致します。
1.支給対象となる事業主
①通常の雇用調整助成金雇用保険の適用事業者のうち、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が対象であり、最近3ヶ月間の売上高または生産量等が前年同月比10%以上減少している事業者
②特例措置の雇用調整助成金
雇用保険の適用事業者のうち、新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が対象であり、最近1ヶ月間の売上高または生産量等が前年同月比5%以上減少している事業者
2.助成対象となる労働者
①通常の雇用調整助成金雇用保険の被保険者、6ヶ月以上の被保険者期間が必要
②特例措置の雇用調整助成金
雇用保険の被保険者に加えて、雇用保険被保険者でない労働者の休業も対象、被保険者期間要件を撤廃
3.助成率
雇用調整補助金の1日当たりの金額は、平均賃金額に休業手当等の支払率と助成率を乗じた金額となります。①通常の雇用調整助成金
中小企業は助成率2/3、大企業は助成率1/2
②特例措置の雇用調整助成金
・2021年5月以降、全国を対象として、中小企業は助成率4/5、大企業は助成率2/3、解雇等を行わず、雇用を維持している場合の中小企業は助成率9/10、大企業は助成率3/4
・2021年5月以降、緊急事態宣言対象区域、まん延防止等重点措置区域、他の区域で売上高等の生産指標が最近3ヶ月平均で前年又は前々年同期に比べ30%以上減少している全国の事業主を対象として、中小企業と大企業共に助成率4/5、解雇等を行わず、雇用を維持している場合の中小企業と大企業共に助成率10/10
4.日額上限額
雇用調整補助金の1日当たりの金額には、上限があります。①通常の雇用調整助成金
日額上限額 8,370円
②特例措置の雇用調整助成金
・2021年5月以降、全国を対象として13,500円
・2021年5月以降、緊急事態宣言対象区域、まん延防止等重点措置区域、他の区域で売上高等の生産指標が最近3ヶ月平均で前年又は前々年同期に比べ30%以上減少している全国の事業主を対象として15,000円
5.支給限度日数
①通常の雇用調整助成金1年100日、3年150日
②特例措置の雇用調整助成金
1年100日、3年150日に加えて、特例措置対象期間中に受給した日数
6.雇用調整助成金の受給までの流れ
上記1から5が雇用調整助成金の主な内容となっています。この雇用調整助成金を受取るためには、まずは休業等の具体的な内容を検討し、労使間で休業に係る協定を締結します。通常の雇用調整助成金では、休業に係る計画届を提出する必要がありますが、特例措置の雇用調整助成金では、休業に係る計画届を提出する必要がありません。次に通常の雇用調整助成金では、計画届に則った休業を実施、特例措置の雇用調整助成金では届出はありませんが、労使間で定めた通りの休業を実施します。
その後休業の実績に基づき、支給申請に必要な様式を厚生労働省ホームページからダウンロードを行い、必要事項を記入、添付書類を準備し、申請を行います。申請は、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークで受け付けており、持参又は郵送で提出を行います。
申請書は労働局にて審査が行われ、審査が通過した後に、事業者へ雇用調整助成金が振り込まれます。
7.まとめ
雇用調整助成金の特例措置の概要についてご紹介致しました。要件や申請様式等の詳細につきましては、最新の情報を厚生労働省のホームページにて申請時にご確認ください。ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。