コロナ禍に知っておくべき!従業員の体調不良への企業対応
労務


季節の変わり目ということで、何かと体調を崩しやすい10月。これから冬にかけて、従業員から体調不良連絡を受ける機会が増えてくる時期ですが、コロナ禍とあって会社側は「ちょっとした風邪症状でも休んでもらうべきか」等、判断に迷う場面もあるのではないでしょうか。

この記事の目次

風邪症状のある従業員は「自宅待機」を基本に

新型コロナウイルスが拡大する前は、少しぐらい咳が出ていても頑張って仕事をしてしまう労働者が多く、本人からの申し出がない限りは会社もこれを認めている様な状況だったと思います。ところが、咳やのどの痛み、微熱、頭痛、倦怠感等にも新型コロナウイルス感染症の感染が疑われることから、コロナ禍においては労使共につい敏感になりがちです。

厚生労働省が公表するQ&Aによると、風邪症状や体調不良等のある労働者は「原則休ませる」旨が明記されています。確かに、職場に新型コロナウイルス感染症かもしれない症状を発症している方がいることで、周囲の労働者は不安になりますし、万が一その方が陽性だった場合には職場でクラスターが発生する恐れがあります。また、結果的にその従業員が新型コロナウイルスに感染していなくても、体調不良時に無理をすることで免疫が低下すれば、新型コロナを含むあらゆる病気にかかりやすくなるリスクがあります。発熱しても就労可能と考えて出社する労働者に対しては、感染拡大防止の観点から、会社として労務提供の受領を拒否する(つまり、働かせない)姿勢を貫くことが肝心です。

参考:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

「自宅待機後3日以内の解熱・症状緩和」が見られれば、職場復帰の検討が可能に

風邪症状等がある体調不良者に対し、「いつまで休んでもらうか」は判断に迷う部分となるでしょう。新型コロナウイルス感染症と風邪の区別は難しいものですが、復職の目安として日本渡航医学会及び日本産業衛生学会からは以下の基準が示されています。医療機関を受診していない、PCR検査を受検していない、PCR検査で陰性だった等の労働者の復職基準については、これを参考に会社としての対応を検討すると良いでしょう。

‘職場復帰の目安は、次の(1)および(2)の両方の条件を満たすこと
(1)発症後に少なくても8日が経過している
(2)薬剤を服用していない状態で、解熱後および症状消失後に少なくても3日が経過している’


参考:一般社団法人日本渡航医学会・公益社団法人日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」

会社が「自宅待機」を命じた労働者には、休業手当の支払いが必要

風邪症状があるとして会社が労働者に対して自宅待機を命じた場合は、あくまで「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるため、労働基準法上の休業手当の支払いが必要です。このあたりの取扱いに関しては、以下の関連記事にて解説していますので、ご一読ください。

関連記事:「企業における新型コロナウイルスへの対応 休業時の賃金支払はどうする?」

ただし、労働者が新型コロナウイルスに感染していた場合は、「感染症法に基づく就業禁止」に該当します。このケースでは、従業員自身の事由により就労不能となるため、会社が休業手当を支払う必要はありません。
労働者は、給与が支払われない間の公的保障として「傷病手当金」の申請が可能となるため、会社側からアナウンスと申請に向けた支援ができると良いでしょう。傷病手当金は、原則として健康保険上の制度ですが、新型コロナウイルス感染症については国保加入者を対象に独自の傷病手当金制度を創設している市区町村が多く見受けられます。

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大、企業におけるクラスターの発生等に鑑み、会社独自で感染症対策ガイドラインを作成し、症状に応じた出勤停止や復職の基準等を明記しているところも少なくありません。ちょうど緊急事態宣言が解除されたところではありますが、依然としていつ感染再拡大が起こってもおかしくない状況が続きますので、今一度、会社としてのコロナ対応方針をまとめておかれると安心です。ご相談は、労務管理の専門家であるSHARES公認社会保険労務士まで、お気軽にお寄せください!

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