新型コロナウイルス感染拡大を背景に、もはや誰がいつ、どこで罹患してもおかしくない状況が続いています。新型コロナウイルス感染に伴い就労不能となり、療養する必要が生じた場合、健康保険の傷病手当金の支給申請が可能となりますが、入社間もなく、社会保険の被保険者資格を取得したばかりのケースでは「そもそも申請可能なのか」と判断に迷うこともあるでしょう。
- 傷病手当金は、被保険者資格を取得してすぐの申請も可能
- 転職者の場合、同一傷病により、前職で傷病手当金を受給していないかどうかを確認される場合あり
- 雇用契約内容の変更等で新たに被保険者資格を取得した場合、資格取得時期に関わる確認あり
- まとめ
傷病手当金は、被保険者資格を取得してすぐの申請も可能
結論から申しますと、傷病手当金は、社会保険の被保険者資格を取得して間もなくであっても申請可能です。以前の記事で解説した通り、以下4つの支給要件を満たすことで申請できます。
✓ 業務外の事由による病気やケガの療養のために
✓ 仕事に就くことができない
✓ 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない
✓ 休業した期間について給与の支払いがない
このページでは「新型コロナウイルス感染」を前提としていますが、実際に感染していなくても、現に発熱等の自覚症状があって自宅療養を行っており、療養のため労務に服することができない状況であれば申請できます。もちろん、コロナ以外の傷病であっても、前述の4要件を満たす場合は申請できます。
申請手順は通常の通りですが、申請期間の初日に属する月まで現事業所での12ヵ月の資格期間がなく、前職でも全国健康保険協会に加入していた場合には所定の添付書類が必要です。
参考:協会けんぽ「健康保険傷病手当金支給申請書」
転職者の場合、同一傷病により、前職で傷病手当金を受給していないかどうかを確認される場合あり
新型コロナウイルス感染に伴う傷病手当金の支給申請時には関係ありませんが、例えば持病により前職で傷病手当金の支給を受けていたような場合、転職後に再発して再び傷病手当金の申請が必要になるケースがあります。この場合、同一傷病に係る申請となるため、新たな申請により支給されることになったとしても、支給期間は「前職でその傷病について支給開始された日から1年6ヵ月」までとなります。この場合、保険者が変わっても支給期間の通算が行われます。こうした事務手続きの必要から、転職間もないタイミングで傷病手当金支給申請が行われた際、被保険者本人の同意の元、保険者間で傷病手当金支給状況の確認が行われます。なお、傷病手当金には「資格喪失後の継続給付」という制度がありますが、これを受けるためには傷病手当金の支給要件を継続して満たしている必要があります。よって、「就労不能な状態で転職活動」という点で矛盾が生じ、不正受給が疑われる可能性があります。
雇用契約内容の変更等で新たに被保険者資格を取得した場合、資格取得時期に関わる確認あり
この他、パート・アルバイトとして勤務されていた方が雇用契約更新のタイミングで雇用契約内容が変わり、新たに社会保険被保険者資格を取得した直後に傷病手当金の支給申請を行った場合にも、特別な確認が行われます。この場合、「資格取得時期」についてその妥当性を判断する必要が生じるため、資格取得届の提出先である管轄年金事務所宛に経緯の説明をし、資格取得日修正の必要の有無とその理由を確認し、所定の様式にまとめる作業に対応しなければなりません。併せて、傷病手当金支給申請時の追加書類として、入社当初から直近までの出勤簿・賃金台帳の添付が求められる場合があります。併せて、これまでの勤務実態を確認するために、入社日や平均的な就労状況等を記す「取得接近調査書」の提出も求められることがあります。こちらは、所定の様式で事業主が証明することになります。