ワクチン未接種者の解雇、配置転換、不採用は可能か。ワクチン接種と労働の問題を考える。
労務


新型コロナウィルスの感染拡大により、ワクチンの接種率も増えており、およそ70%以上の方が既に接種を済ませています(11月3日現在)。

ただし、ワクチン接種はあくまで推奨であり、義務ではありません。様々な理由によりワクチン接種をしない選択を咎められる理由もありません。

また、ワクチン接種をしない人を差別する行動もまた許されるものではありません。多種多様な考え方を認めるのも、また成熟した社会と言えるでしょう。

先日厚生労働省では、ワクチン接種をしない方に対する労働の扱いについてのQ&Aを発表しております。その内容を元に、ワクチン未接種者の会社での取り扱いについて解説をします。

この記事の目次

1、ワクチン接種を拒否した労働者の解雇や雇止めはできるのか。

もちろん、解雇や雇止めは個別に議論される問題ではありますが、一般的にワクチン接種をしていないという理由だけでの解雇や雇止めはできない、という理解で良いでしょう。

労働者を解雇するためには、客観的合理的な理由で社会通念上相当である必要があります。有期契約者の雇止めについても、更新を期待できる状況にある労働者を雇止めするためには、同様の条件が求められます。

ワクチンがあくまで推奨であり、義務ではない以上、ワクチン接種をしていないということは、この解雇要件にまず相当しません。ワクチン未接種者を解雇することは、わかりやすいワクチン差別と捉えられるものであり、避けるべき、ということになります。

2、ワクチン接種を拒否した労働者を、人と接しない業務に配置転換できるか。

では、配置転換はどうでしょうか。ワクチン未接種者が自身の会社やお店でクラスターを引き起こすのではないか、という事業主の懸念もあるでしょう。

特に業務や勤務先に定めの無い契約であることを前提にすれば、従業員の同意なく配置転換を命じることは可能です。

もっとも、その配置転換に不当な動機や目的がある場合や、労働者に不利益が多分にある場合などで争いになったとき、配置転換権の濫用として無効になる可能性もあります。また、その配置転換を優越的な地位を背景にワクチン未接種者に強要すれば、パワハラとして訴えられるかもしれません。

そのため、ワクチン未接種者を配置転換するにしても、その目的や業務上の必要性、不利益の度合いなどを従業員に説明し、慎重に判断してください

なお、勤務地や職務を限定した条件のある雇用契約の場合、その契約外の地域、職務への配置転換は、労働者の合意が不可欠であることは言うまでもありません。

3、ワクチン接種をしていない人を不採用にすることができるのか。

採用については、会社は応募者の基本的人権を尊重し、適性や能力で判断することが求められます。男女や年齢で区切ることは原則できない、とされていますが、今のところワクチン接種の有無を採用条件にすることを禁じる法律はありません

よって、ワクチン接種をしていることを就職条件に掲げることは可能です。もっとも、本当にその理由が合理的か、よく考えていただきたいです。

ワクチン接種をしていても、感染が100%防げるわけではなく、会社としては引き続き感染対策が必要になります。そうなると、大事なことはワクチン接種よりも感染を防ぐ対策ではないでしょうか。

仮にワクチン接種を採用条件にする場合、事務的にもその条件は応募者には示しておく必要があります。それを示された方が、ワクチン差別と捉えられかねない施策をとっている会社に入りたいと思うでしょうか。

能力が高いワクチン未接種者はもちろん、能力が高いワクチン接種者すらも取り逃してしまう可能性があります。法律的には可能とは言え、その影響を考えれば、結局、ワクチン接種を採用条件にすることはお勧めできない、ということになります。
(もちろん個別の事情から、ワクチン接種を採用条件にすることを咎める話でもありません。)

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ワクチン未接種者の労働において、それを理由とした解雇はできず、また配置転換も慎重に行う必要があります。採用は会社側の自由ではありますが、ワクチン未接種者であることを理由に採用しないという行動は別のリスクを生みます。

結局、労働の場でワクチン接種者と未接種者を分けることは、法的、実務的にリスクを負うということをご理解ください。

世の中が差別に敏感な時代であり、ワクチン差別もまた例外ではありません。ワクチン差別に繋がると疑われる行動は極力避けることをお勧めします。ご相談は近所の労働基準監督署や社会保険労務士に、ぜひお尋ねください。

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