会社の配置転換の命令は絶対か。配置転換の有効性について考える。
労務


一般的に就業規則上、「会社は業務上の都合により、配置転換を命じることができる」とされていることが多く、社員の同意の有無に関わらず配置転換(以下、配転)をさせることができるようになっています。

しかし、中には社員から見れば同意しかねる配転もあるはずです。それでも配転命令は絶対なのでしょうか。

ここでは、いわゆる職種を限定しない正社員採用であったことを前提に、社員に配転を命じるときに気を付けるべきことについて、解説をさせていただきます。

この記事の目次

1、配転命令は絶対ではない。

たとえ就業規則に「配転させることができる」と書いてあっても、当然にその配転は適法性が必要です。適法性が無い配転は、トラブルとなれば無効とされる確率が高いということです。

では、適法性とは、どのようなことが要件として求められるのでしょうか。
以下のようなことが、配転命令が有効と認められるために必要になります。

① 配転対象者の同意
② 配転の目的と正当性
③ 配転命令と就業規則の合一性
④ 配転命令の権利非濫用性


まず、①は配転対象者との合意ですが、これは個別の同意は必要ではなく、社員全体に包括的に同意されていれば良いでしょう。就業規則のある会社であれば、就業規則の周知時に同意を取っているはずです。

②は、例えば、その労働者を排除する目的で行う配転命令などが無効になることが挙げられます。業務上の必要性の有無はともかく、他の目的や不純な動機が無いことが求められます。

③は就業規則上に配転させる旨の記載があるかどうかです。ダウンロードした就業規則をそのまま使っているなどしている会社で、意外とこのことが記載されていないものが散見されますので、一度ご確認することをお勧めします。

2、配転命令の非濫用性とは。

④の非濫用性とは、使用者が配転させる権利を必要以上に使っていないか、というチェックです。さらに分解すると、以下の点でいずれもクリアしていることが求められます。

ⅰ 業務上の必要性
ⅱ 人選の妥当性
ⅲ 配転の必要性と配転対象者の被る不利益との均衡


まず、当然に配転させるためには、その業務上の必要性が求められます。企業の合理的な運用に寄与していれば、それは業務上の必要性があるとみなされます。

次に人選です。その配転に相応しい人物に対して配転命令を出しているか、という点が求められます。能力的なことはもちろん、配転による不利益の度合いも人によって違いますので、総合的な観点による人選が求められます。

そして、配転によって労働者が不利益を被る場合、その不利益は社会通念上受忍すべき限度内か、という確認です。例えば、その配転により10分程度通勤時間が長くなる、というのは受忍すべき限度内でしょう。しかし、1時間30分であればいかがでしょうか。もちろん通勤時間の長さだけで有効無効は図れません。このケースであれば、1時間30分の通勤時間という不利益と、業務上の必要性との比較でバランスが取れているかどうかを個別に判断する、ということです。

3、家庭の事情による異動拒否には慎重な判断を

ここで出てくるのが家族との兼ね合いです。子どもの世話や親の介護を抱えている方の場合、この配転が家庭生活に大きな影響を与えることもあります。特に単身赴任を含む配転命令には、その配慮が求められます。

家庭事情による異動拒否でトラブルになったケースでも、その判例は有効無効に大きく分かれます。もちろん、単純に子どもの世話や親の介護を抱えているというだけではなく、事前にその旨を伝えていたかどうかや、他の社員の配転でも良いケースなのかなど、個別に総合的に判断されることになります。

以前の判例では、特段の事情が無い限り、企業の配転命令が優先される判例が目立っていました。しかし、昨今のワークライフバランスを重視する風潮を鑑みると、その流れも変わってくる可能性もまた高いでしょう。特に住居異動を伴うような配転命令の場合、その家庭の状況を検討して慎重に判断をすることをお勧めします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

■配転命令は絶対ではなく、適法性が求められます。
■配転の権利濫用と見られた場合は、無効となる可能性があります。
■家族の事情を抱える労働者への配転命令は慎重に行ってください。


配転はその方の人生を変える可能性があります。いくら命令権があるとはいえ、対象者が納得するような形で配転できるように配慮を尽くしてください。

社員を配転させる際のご相談は、社会保険労務士にお気軽にご相談ください。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。