「産後パパ育休」を取得できるのは男性のみ?
労務


育児・介護休業法の改正により、主として男性の育児休業取得を促進するための新たな制度「出生時育児休業」(=産後パパ育休)が、令和4(2022)年10月1日からスタートします。

この記事の目次

「出生時育児休業」制度の概要

出生時育児休業は、子の出産後8週間以内に、計28日まで2回に分割して取得可能となる制度です。
通常の育児休業は、原則として休業中に就業をすることは不可とされていますが、出生時育児休業については、あらかじめ労使協定を締結して、労働者と合意した範囲内であれば、休業中に就業が可能になるなど、より柔軟に取得を可能とするような制度設計となっています。

「出生時育児休業」を指す用語の整理

この「出生時育児休業」制度のことを、厚生労働省は「産後パパ育休」という愛称を用いて称し始めました。
用語がバラバラでよくわからなくなるおそれがあるため整理すると下表のとおりとなります。

報道などでよく使われている用語 男性版産休
法律上の用語 出生時育児休業
厚生労働省による愛称(通称) 産後パパ育休

これらのうち「男性版産休」という用語は、法改正の検討が始まったころからマスコミが積極的に使用していましたが、実務的にはなかなか使いづらい表現で、使うとすれば「いわゆる男性版産休と言われるもののことです。」といった使い方になるのではないでしょうか。

「産後パパ育休」の対象は男性のみ?

さて改正後の育児・介護休業法の条文を読むと、「出生時育児休業」について特に男性が対象というような文言は見当たりません。しかし、出産した女性は、申出が必要とされない労働基準法上の産後休業が優先されるため必然的に「出生時育児休業」の対象とはなりません。そうすると、「産後パパ育休」を取得できるのは男性のみということでよいのでしょうか?

この点につき、厚生労働省は、下記リーフレットにて下記のとおり解説しています(13ページ)。

・厚生労働省 「育児・介護休業等に関する規則の規定例」

“産後休業をしていない従業員とは、主に男性が対象になりますが、養子等の場合は女性も対象となります。”



すなわち、実子を出産した女性は対象外ですが、養子等で出産をしていない(=産後休業の対象とならない)女性は対象となる、ということです。

対象となる「子」の範囲

育児・介護休業法では、その対象となる子の範囲を次のように定めています。

・実子
・養子
・特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子
・養子縁組里親に委託されている子
・当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められているにもかかわらず、実親等が反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子


特別養子縁組、里親制度については、下記をご参照ください。

特別養子縁組制度について
里親制度等について

まとめ

養子等の場合で「出生時育児休業」を取得するケースは極めて少数ということもあってか、厚生労働省はわかりやすさを優先して「産後パパ育休」という愛称を用いることとしました。しかし一方で誤解を生みかねない表現にもなっています。
「出生時育児休業」という用語は法律に規定された用語でややカタい感じもしますが、制度の名称という意味では、より正確なものとなっています。

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