労働関係法令には、企業が遵守すべき労務管理上のルールが定められていますが、網羅すべき範囲が極めて膨大なため、事業者がそのすべてを把握することは困難と言わざるを得ません。今号のテーマである「事務所衛生基準規則」は、職場の衛生管理の基本を定めるものですが、実務上、見落とされがちな規則のひとつです。
このページでは、盲点になりがちにもかかわらず意外と重要な「事務所衛生基準規則」の概要について、2021年12月の改正項目を軸に見ていくことにしましょう。
- 全23条の中に、衛生管理関連のルールが凝縮された「事務所衛生基準規則」
- 規則上、義務とされているのは「休憩室」ではなく「休養室の設置」です
- 2021年12月施行、改正労働安全衛生規則・改正事務所衛生基準規則を確認
- まとめ
全23条の中に、衛生管理関連のルールが凝縮された「事務所衛生基準規則」
従業員の安全かつ健康的な就労を可能にする職場環境の整備について定めた「事務所衛生基準規則」は、以下よりご確認いただけます。条文数はさほど多くないため、ご一読いただければ、概要をざっくり把握していただけるかと思います。参考: 厚生労働省「事務所衛生基準規則」
職場の空調や照明、トイレ、休憩室といった身近な事項について規定されているので、一度はこの規則をしっかりと読み込み、必要な環境整備について理解を深めると良いでしょう。
規則上、義務とされているのは「休憩室」ではなく「休養室の設置」です
ここでひとつ、企業が見落としがちな項目をひとつ挙げるとするなら、「休憩室」と「休養室」の設置義務についてです。まずは休憩室についてですが、規則によると、「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。」とあります。従業員がお昼休憩等に活用できる休憩室を設置している企業は多くありますが、設置はあくまで努力義務と読み取ることができます。
一方で、第21条には「事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。」とあります。「が床」とは「臥床」、「床につくこと」です。つまり、従業員が床につくことができる休養所を、男女別に設けなければなりません。休憩室と異なり、休養室の設置は要件を満たす事業者の義務規定となっていますが、一体どの程度の現場で対応できているでしょうか?
2021年12月施行、改正労働安全衛生規則・改正事務所衛生基準規則を確認
職場の安全衛生について定める規則としては、事務所衛生基準規則の他にも、労働安全衛生規則がありますが、昨年、これらがともに改正され、施行されました。主な改正項目は、下図の他、通達よりご確認いただけますのでご確認ください。出典:厚生労働省「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要」