新型コロナウィルスの感染拡大が止まりません。オミクロン株の拡大により、これまでとは桁の違う感染者数が毎日報告されています。
これに合わせて、各自治体では3回目のワクチン接種も始まりました。では、このワクチン接種を労働者に受けさせる時間や日にちは労働時間なのでしょうか、休暇なのでしょうか。また、ワクチン接種の副作用による欠勤が発生した場合、同様に事業主としてはどのように扱えば良いでしょうか。
ここでは、ワクチン接種を受けた、およびその副作用の出た社員の労働時間、休業についての考え方について解説いたします。
1、ワクチン接種時間の給与支給義務は無いが、支給が望ましい。
まず、大原則ですが、ワクチン接種は事業主から強制できるものではありません。ワクチン接種は自主的に行うものであり、あくまで自己都合です。よって、労働時間中にワクチン接種を行った場合、それは自分の都合で遅刻早退をしていることになります。その時間を労働時間から差し引き、給与から控除することに問題はありません。もっとも、ワクチン接種はまわりの従業員や顧客のための行動でもあります。労働者によっては、勤務時間外にワクチン接種を予約することは難しいかもしれません。その状況によっては、労働時間中のワクチン接種も、できるだけ通常通りの給与を支給していただきたいです。
2、ワクチン接種時間は休業命令にあらず、雇用調整助成金は対象外。
ワクチン接種が事業主の強制ではない以上、ワクチン接種をすることを前提とした休業命令を出すことはできません。雇用調整助成金の申請は、事業主が休業命令を行い、休業手当を支給することが前提となります。この休業命令自体が成り立ちませんので、
ワクチン接種により労働しない時間を雇用調整助成金の対象として申請することはできません。
3、ワクチン接種の副作用による欠勤の扱いは
ワクチン接種でその副作用の強さが話題となりました。人によってその違いが大きく、ひどい方だと数日間は強い発熱で寝込むこともあります。ワクチン接種の副作用で休む場合、会社はその日数を欠勤控除して問題ありません。そもそも就労ができない状況で、事業主が休業命令で休ませているものではありません。よって、休業手当を支給する必要もなく、雇用調整助成金も対象外です。
実際には、ワクチン接種後の副作用を見越して、年次有給休暇を推奨するという運用は考えられます。年次有給休暇が既に無い方のために、ワクチン接種後は1日の有給(無給でも可)特別休暇を与える、という運用であれば、さらに良いでしょう。突然、発熱で数日出社できなくなる、というのは労働の現場としては痛手なはずです。それであれば、前もって、副作用を見越した人員配置を行っておいてはいかがでしょうか。
まとめ
・ワクチン接種時間は労働ではないので、給与の支払いは不要。しかし、支払うことが望まれる。
・ワクチン接種時間は休業手当不要なので、雇用調整助成金も対象外。
・ワクチンの副作用による欠勤は欠勤控除して問題なし。事前に副作用を見越した人員配置が望まれる。
そもそもワクチン接種は自由意思に基づいて行われるという原則をご理解いただければ、今回のテーマは難しくないでしょう。自由意思であるということは、ワクチンを接種しない人への差別も、あってはならないこともご理解いただけると思います。
事業主としては、強制はできないものの、ワクチンを接種する場合はその従業員のスケジュールを把握し、可能な限り副作用を見越したスケジュールを組むことが大事です。
ワクチン接種やその副作用による遅刻・早退・欠勤について、ご相談があれば、ぜひお近くの社会保険労務士にご相談ください。