2022年4月以降、育児介護休業法が大きく改正となります。その改正の目玉の一つとして、育児介護休業に対する従業員への周知が求められています。
ところが、これまで男性ばかりで育児休業への意識が薄い会社から見ると、その周知と言ってもどのように行えば良いのか、ピンと来ないかもしれません。
そこで、この法改正で初めて育児休業について検討する会社向けに、この周知をより具体的にどのように行うべきなのか、解説をさせていただきます。
1、育児休業についての説明は企業規模に関わらず義務
まず、育児介護休業法の改正を確認しておきましょう。改正育児介護休業法第21条第1項によれば、本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を個別に行わなければなりません。事業主としては企業規模に関係無く義務となります。周知する具体的内容は以下の通りです。
①育児休業・産後パパ育休に関する制度
②育児休業・産後パパ育休の申し出先
③育児休業給付に関すること
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
※産後パパ育休についての説明は令和4年10月1日から
つまり、会社としては上記について、事前に説明すべきことをまとめておく必要があるということです。
2、厚生労働省のフォームを参考に、まずは対象者に渡すことから
周知しろと言われても、特に育児休業に無縁だった会社の場合、具体的に何を伝えるべきか、悩むかもしれません。まず周知の仕方は、面談(オンライン面談含む)、書面交付、FAX、電子メール等とされています。ただし、FAXと電子メールは労働者側が合意した場合のみとされていますので、一方的に送り付けるのは不可です。
そして、厚生労働省ではその周知について、見本を提示しています。
周知参考様式例
Word版はこちらのページからダウンロードできます。
まずはこちらを参考に、自社の育児休業の個別周知書を作成してください。対象者に印刷をしてお渡しをする、ということが最低限求められることと言えるでしょう。
そして、事業主または担当者は、この書面を見ながら対象者に説明を行い、育児休業の取得を奨励する、というのがベストです。
3、育児休業の周知の際に求められること、NGなこと
周知の時期について、本人の希望日から円滑に育児休業を取得することができるように配慮することが求められます。具体的には、出産予定日の1ヶ月前までに周知を行いましょう。1ヶ月を切ったタイミングで申し出があった場合は、速やかに周知することが求められます。申出から2週間以内が目安となります。周知の際は、同法改正の趣旨に従って、できるだけ長期の取得を奨励してください。逆に、「育児休業を取ると出世に影響する」というような、取得を控えさせるネガティブな周知はNGです。周知を実施したとは認められません。
最終的には、育休を取得するかどうかの意向確認を行って周知は完了となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
●2022年4月の育児介護休業法の改正により、従業員への育児休業取得の周知が、企業規模に関わらず義務になりました。
●厚生労働省が示している周知文書を参考に、書面交付などの方法で周知を行います。
●周知は原則、出産予定日の1ヶ月以内に行います。長期の育休取得を奨励し、ネガティブな案内は控えましょう。
男性の育児休業の取得は令和2年度で12.65%です。1~2%台であった数年前に比べれば増加傾向にあります。しかし、育休の取得期間は2週間以内が80%以上を占めており、まだまだ男性が育児に積極的に参加できているとは言えない状況にあります。
また若い男性の求職者も、育児休業の取得ができるかどうか、会社を選ぶ際に重要視する方が増えています。
国から、求職者から、男性に育児休業取得を会社に求める時代が来ています。これまで育児休業と無縁だった会社ほど、今回の法改正は真剣に取り組むべきと理解しましょう。