退職時の有給消化中に再就職することは可能か。
労務


既に退職を決めている社員が、最終出勤後に有給を消化するケースはよくあります。では、有給消化中に次の会社に就職することはできるのでしょうか。

もちろん、自身の自由な時間を労働に充てることについて、咎められることはありません。しかし、前職への確認は必要です。また、雇用保険、社会保険上の手続きを正しく行う必要もあります。

ここでは、退職時における有給消化中の就職について、本人および実務担当者が気を付けなければいけないことを解説します。

この記事の目次

1.両方の会社の就業規則を確認する。二重就労の禁止にあたれば懲戒解雇もあり得る。

まず、次の就職を決めた方が最初にするべきことは、双方の会社に二重就労を報告することです。後で説明する雇保保険、社会保険でも手続き上必須になります。

一番大事なのは、会社において二重就労を禁止していないか、ということです。最近ではいわゆる副業も認められる傾向にありますが、職種等によっては、情報流出の防止などの観点から厳しく制限されるケースもあります。

有給消化中とは言え、その前職会社の社員であることは変わりません。前職会社と新しい会社の両方のルールに従うことが求められます。これを破ることは、懲戒にあたることもあります。最悪、円満退職を覆しての懲戒解雇になる可能性も否定できません。

どうせ退職するのだから、と言うかもしれませんが、懲戒解雇ともなれば、その事実を隠して入社した、と今度は新しい会社の方で懲戒になる、あるいは問題視される可能性もあります。

有給消化ができるということは、おそらく円満退職になっているはずです。また、就職を決めてくれた新しい会社への感謝もあるでしょう。双方に義理をきちんと果たすことが社員側には望まれるのです。

2.雇用保険は前職分を終了させる必要がある。

雇用保険に加入できるのは一社のみです。つまり、前職会社で雇用保険に入っていれば、新しい会社で雇用保険に入ることはできません。

一方で、前職会社で雇用保険の喪失手続きを行えば、新しい会社の雇用保険に入ることは可能です。しかし、前職会社から見て、社員の希望に沿って退職日前に雇用保険喪失手続きを行う義務はありません。

本人としては、前職会社に資格喪失をしてもらうか、新しい会社での加入を待ってもらうかの選択ということになります。双方の会社に相談のうえ、決定してください。

3.社会保険は二重加入が可能。ただしその手続きが必要。

健康保険・厚生年金保険(以下、社会保険)は、2つの会社で加入することができます。おそらく有給消化中の就職であれば、要件を満たす可能性が高いでしょう。

ただし、2つ以上の事業所に勤務をしていることになるので、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出など、その手続きが必要になります。加入は2つの事業所でできても、その方が持つ標準報酬月額は1つであるため、その報酬を合算したうえで社会保険料が決まるからです。

この手続きが面倒だから、ということで前職会社が退職日より前に資格を喪失することも、新しい会社で新規加入を待つこともできません。要件を満たす社員を社会保険から脱退させる、あるいは加入させないということはできないからです。

まとめ

●前職会社、新しい会社の双方に、二重就労を認めてもらう必要があります。
●雇用保険は1社のみ加入。前職会社に退職日前に雇用保険を喪失させる義務はない。
●社会保険は2社加入可能だが、手続きが必要。


つまり、理屈上は有給消化中の就職は可能ですが、その確認や手続きに時間がかかるのも事実です。このような内容を手間と考えるのであれば、新しい会社の就職日は、前職会社の有給消化後にすることが無難と言えるでしょう。

事情があって、それでも新しい会社で有給消化中に働きたい場合は、前職会社と協議のうえ、退職日の切り上げや有給の買い取りなどを交渉することも考えられます。

そして、ここまでの解説で言えることは

有給消化中の就職を前職会社にも新しい会社にも隠しておくことは難しく、それが判明したときの不利益も大きい


と言うことです。前職会社にも新しい会社にも、事情をオープンにして相談することをお勧めします。

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