2022年度中に安全運転管理者選任事業者に対する義務として「アルコールチェック業務」が追加され、4月、10月と段階的な適用が予定されていたことは、既に以前の記事で解説した通りです。このうち、10月より予定されていた「アルコール検知器の使用義務化」について当面延期となる旨が内閣府令案に盛り込まれ、現在パブリックコメントに付されています。さっそく概要を確認しましょう。
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- 「アルコール検知器の使用義務化」延期に関わる内閣府令案を確認
- 「アルコール検知器の使用義務化」延期は「半導体不足」によるもの
- 「知らなかった」では済まされない!従業員の酒気帯び運転に伴う会社責任
- まとめ
「アルコール検知器の使用義務化」延期に関わる内閣府令案を確認
2022年7月15日よりパブリックコメントの募集が行われている内閣府令案は、以下の改正に関わる内容です。
○ 道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)の一部の施行に伴い、乗合自動車の停留所等における停車又は駐車に係る規定を整備すること
○ 最近のアルコール検知器の供給状況等を踏まえ、当分の間、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化に係る規定を適用しないこととすること
参考:e-Govパブリックコメント「「道路交通法施行規則及び自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の施行に伴う道路交通法施行規則の規定の読替えに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令案」に対する意見の募集について」
これにより、社用車を5台以上又は定員11人以上の自動車を1台以上使用する安全運転管理者選任事業者に対し、2022年10月より課せられる予定だった以下2つの義務化が当面見送られることになりました。
① 運転の前後に、運転者に対してアルコール検知器を使用して酒気帯びの確認
② 正常に機能するアルコール検知器を常備すること
「アルコール検知器の使用義務化」延期は「半導体不足」によるもの
「アルコール検知器の使用義務化」については、かねてより事業者側から負担の大きさを訴える声が挙がっていました。これに加え、昨今の半導体不足の影響を受けてメーカー側の製造が追いつかず、義務化対象となる全事業者への供給が困難となる事態に発展しています。道路交通安全の観点からは、事業者における早期のアルコールチェック体制の整備が求められますが、こうした状況を受けて、このたびやむを得ず義務化延期の決定が下されることになりました。依然として世界的な半導体不足に見舞われる中、2022年7月22日現在では「アルコール検知器使用義務化」適用時期の見通しは立っていません。
「知らなかった」では済まされない!従業員の酒気帯び運転に伴う会社責任
今号で解説した通り、「アルコール検知器使用義務化」は当面見送られることとなりましたが、一方で、2022年4月からは安全運転管理者の業務に「運転前後の運転者の状況(酒気帯びの有無)を目視等で確認すること」「酒気帯びの有無について記録し、1年間保存すること」が追加され、事業者にはアルコールチェックに関わる対応が求められています。従業員にハンドルを握らせる会社の責任として、徹底して取り組みましょう。万が一、業務中の従業員が酒気帯び運転をした場合、本人のみならず、会社にも責任が生じます。
「アルコールチェック」が事業者の義務となった2022年4月以降、従業員の酒気帯び運転について会社が「知らなかった」と主張することは一層厳しくなり、会社が把握していた、もしくは容認していたと判断されることになるでしょう。
この場合、刑事責任としては道路交通法の酒気帯び運転等の禁止違反に該当し、代表者や管理責任者に5年以下の懲役又は100万円以下の罰金、会社に対しては100万円以下の罰金または科料が課せられる可能性があります。これに加え、被害者に対する民事責任についても本人と会社に生じることになるでしょう。
また、従業員による酒気帯び運転の発生は、会社の社会的信用を大きく失墜させる要因ともなりかねません。