令和4年度最低賃金改定で注意しなければならないこと
労務


この記事の目次

はじめに

すでにメディアで報道されていますが、8月2日に中央最低賃金審議会が開催され、令和4年度の地域別最低賃金額改定の目安について、下記図表の通り答申がなされました。

令和4年度の地域別最低賃金額改定の目安
今後は、この目安を参考にしながら各都道府県の地方最低賃金審議会での審議・答申を経て、都道府県労働局長により正式決定されることになります。なお、引上げ時期は10月上旬ですが、Aランクの都道府県は10月1日からになると思われます。
本稿では、今回の最賃引上げに際して、中小企業が注意しなければならないことについて解説いたします。

1.最低賃金が適用される対象者

最低賃金は時給で示されますが、時給のパート・アルバイトだけでなく、月給の正社員、日給、歩合給を含めたすべての労働者に適用されます。例えば、月給の場合、1箇月の平均所定労働時間で割って時給換算し、最低賃金を超えているかチェックする必要があります。その際、特に注意を要するのが、月給の固定残業手当(みなし残業時間)を支給しているケースですので、後半にて取り上げます。

2.最低賃金の対象となる賃金とならない賃金

最低賃金の対象となるのは、基本給や諸手当など毎月決まって支払われる賃金で、残業代やボーナスは対象外となります。ここで気を付けなければならないのが、諸手当のうち、通勤手当、精皆勤手当、家族手当の3つの手当は、最低賃金の対象とならない点です。最低賃金を計算するときは、上記3つの手当と定額の残業代である固定残業手当は除かなければなりません。

最低賃金の対象 から除外する賃金 通勤手当
精皆勤手当
家族手当
固定残業手当(みなし残業代)

3.最低賃金の確認方法

現行の賃金が令和4年度の最低賃金を下回らないかどうか、次の(1)、(2)の計算を実施し、いずれも上回っていれば問題ありません。(2)の固定残業手当に関する時給が最低賃金を下回っていることが多いので注意しましょう。なお、(2)の時給については、最低賃金を上回っていることに加え、(1)で計算した時給も上回っていることが必要です。 併せてご注意ください。

1.(基本給+÷諸手当)÷1箇月平均所定労働時間>1,072円
*1 諸手当からは、3つの手当と固定残業手当を除外して計算します
*2 1箇月平均所定労働時間=1日の労働時間×1年間の労働日数÷12

2.固定残業手当÷(みなし残業時間×1.25)>1,072円
固定残業手当57,000円、みなし残業時間45時間のケースで計算すると、57,000円÷(45時間×1.25)=1,013円<1,072円
最低賃金を下回るので、見直しが必要です。
*2 みなし残業時間がわからない場合は、制度として不完全な可能性があるので、専門家に相談してみましょう。

ここ数年、最低賃金の引上げ幅が大きかったので、計算してみたら2年前の最低賃金も下回っていたなんてこともあります。くれぐれもご注意ください。

4.月給の見直しについて

最低賃金が問題になるのは、月給ないし基本給を最低賃金から決めているケースです。
東京都の事業所のケースを参考に、こうした会社の月給の見直しを実際にしてみます。
・1日8時間労働、年間休日105日(年間労働日260日)
・1箇月の平均所定労働時間173.3時間(8時間×260日÷12箇月)
・基本給とは別に、通勤手当6,100円、家族手当5,000円、固定残業手当(みなし残業時間45時間)

通勤手当、家族手当、固定残業手当は、最低賃金に含まれないので、基本給が最低賃金を上回るようにします。

基本給=1,072円×173.3時間=185,778円
固定残業手当=1,072円×45時間×1.25=60,300円
月給=基本給+通勤手当+家族手当+固定残業手当
   =185,778円+6,100円+5,000円+60,300円
   =257,178円≒257,200円(百円単位にすると)

このとき、切上げて生じた加算22円は、基本給ではなく固定残業手当に加算します。

したがって、令和4年度10月以降の月給の内訳は、次のような内訳になります。

月給=257,200円
内訳:基本給257,178円、通勤手当6,100円、家族手当5,000円、固定残業手当60,300円(みなし残業時間45時間)

5.おわりに

最低賃金の改定のある10月は、給与体系を見直す良いキッカケにもなります。家族手当や精皆勤手当など、最低賃金に含まれもしないし仕事の評価に関係ないような手当を見直し、経営者がやって欲しいことを手当化することも検討したいものです。

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