この助成金は、高年齢者の従業員が年齢に関わりなくいきいきと働けるように、有期契約(終了日が決まっている雇用契約)である50歳以上かつ定年年齢未満の労働者を無期雇用労働者(期間の定めがなく定年まで働ける雇用契約)に転換させた事業主に対して助成する制度です。キャリアアップ助成金のような賃上げ要件はありません。
雇用保険に加入している従業員であればパートタイム労働の方も対象になりますので、企業にとって比較的取り組みやすい助成金メニューと思います。
1.主な支給要件
支給要件としては、雇用する50歳以上かつ定年年齢(65歳以上である場合は65歳)未満の有期契約労働者を無期雇用転換計画期間内に無期雇用労働者に転換した事業主であること。そして、転換した労働者を、転換後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6か月分(勤務をした日数が 11 日未満の月は除く。)の賃金を所定の期間内に支給した事業主であること、となっています。対象となる労働者は、次のいずれにも該当する方です。
① 支給対象事業主に雇用される期間(平成25年4月1日以降に締結された契約に係る期間)が転換日において通算して6か月以上5年以内で50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者であること
② 転換日において、64歳以上の者でないこと
③ 派遣労働者でないこと
④ 有期労働契約が繰り返し更新され通算5年を超え、労働者からの申込により無期雇用労働者に転換(労働契約法第18条の定めによる)した者でないこと
2.支給額
対象労働者1人につき48 万円(中小企業事業主以外は38 万円)です。一定の要件(生産性要件といい、企業の決算書により付加価値の伸び等が認められると助成金が増額される仕組みがあります)を満たす場合には対象労働者1人につき60 万円(中小企業事業主以外は48 万円)となります。1支給申請年度(4月~3月)に1適用事業所あたり10 人まで申請できます。
3.手続きの流れ
この助成金は、事前に認定を受けた計画に基づき無期雇用転換を行った後、支給申請を行う流れになっており、「計画申請」と「支給申請」の2段階の手続きが必要です。まず、計画認定を受けようとする事業主は、「65 歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)無期雇用転換計画書」に必要書類を添えて、計画の実施期間の開始日から起算して6か月前の日から原則3か月前の日までに、各地域の受付窓口(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)に計画申請をする必要があります。
計画が認定された場合、助成金の支給を受けようとする事業主は、対象従業員を無期雇用に転換し、転換後6か月分(勤務した日数が11日未満の月は除く。)の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行います。
4.計画申請のポイント
この助成金は、申請する事業所(雇用保険の適用事業所)において「高年齢者雇用管理に関する措置」を行っている事が計画認定の条件になっています。高年齢者雇用管理に関する措置の概要は以下のとおりです。(1) 高年齢者雇用等推進者の選任
高年齢者雇用等推進者とは、高年齢者雇用確保措置を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当している者として、必要な知識及び経験を有している者の中から事業主が選任した者をいいます(高年齢者雇用安定法第 11条及び高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則第5条に規定する高年齢者雇用等推進者で、事業主本人でも可)。(2) 高年齢者雇用管理に関する措置の実施
次の a から g までの高年齢者雇用管理に関する措置(以下「措置」という。)を1つ以上実施していること。
a 職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等
b 作業施設・方法の改善
c 健康管理、安全衛生の配慮
d 職域の拡大
e 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
f 賃金体系の見直し
g 勤務時間制度の弾力化
なお、次のいずれかに該当する場合は措置と認められません。
① 高年齢者以外(55歳未満の者)にも適用される場合
② 就業規則に規定した定年年齢又は継続雇用年齢を超えた者のみが適用される場合
③ その他、措置内容が高年齢者のための雇用管理措置に該当しないもの
高年齢者雇用管理に関する措置を行うには就業規則の改訂が必要になる場合等もあるため、あらかじめ社会保険労務士に相談されることをお勧めします。
5.注意点
無期雇用への転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、転換を行った事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させた事業主などは申請できません(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く)のでご注意ください。以上、50歳以上の従業員を雇用している事業主の方は、この助成金を検討されてはいかがでしょうか。