会社が忙しくなると、育児休業をしている社員に対して、一時的にでも就労してほしいケースがあります。しかし、育児休業給付金を受け取っている場合、その就労によって給付金に影響するのでしょうか。
ここでは、育児休業中の就労について解説します。令和4年10月から、また育児休業は法改正がありますので、これを機会に育児休業のルールをしっかり把握しておきましょう。
1.原則は月10日または80時間以下なら給付金は引き続き支給される。
まず大原則ですが、育児休業中の社員に、出社を強要することはできません。あくまで事業主と社員との間の同意が前提となります。そのうえで、育児休業中であっても、一時的、臨時的にその事業主の下で就労することは可能です。その場合、就労は月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金は支給されます。
会社の一時的なトラブルで人の手を借りたいケースや、その方が持っているスキルのニーズが高くなって、一時的に社内の講師業務を依頼するケースなどが挙げられるでしょう。テレワークによって、子供と家にいながら、必要な作業を依頼することもあるかもしれません。
ただし、あくまで一時的、臨時的であることが条件なので、恒常的、定期的に就労させているのは育児休業をさせていることになりません。
例えば、1日4時間で月20日勤務とした場合、確かに80時間以下ではありますが、これは育児休業ではなく、育児休業給付金の対象外です。
2.育児休業給付金は給与を受け取った金額に比例して減額される。
就労して給与を受け取った場合、育児休業給付金は少しずつ減額されることになります。具体的には受け取った給与が賃金月額(原則、育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180で除した額×30日。育児休業給付金支給決定通知書に記載。)の13%(育休6ヶ月経過後は30%)~80%であった場合、賃金月額の80%相当額と賃金の差額が支給されます。80%以上になると、育児休業給付金は支給されません。
例を挙げます。賃金月額30万円の場合、育児休業6ヶ月経過前の育児休業給付金は
30万円×67%=20万1千円
です。
この期間に賃金が9万円支払われた場合、賃金月額の30%が支払われているので、
30万円×80%-9万円=15万円
の支給となります。
その月の収入は、育児休業給付金のみの場合と比べて、9万円増えて5万1千円減ることになります。
この期間に賃金が24万円支払われた場合は、賃金月額の80%となるので、育児休業給付金は支給されません。
3.産後パパ育休中も育児休業給付金の対象となる
令和4年10月から始まる産後パパ育休に関しても、同様の制度が取られます。産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に、4週間まで取得できる制度です。産後パパ育休を取得した場合に、出生時育児休業給付金が受けられます。こちらも育休中の就労が支給要件にかかりますので、確認をしておきましょう。支給要件として、以下の要件が挙げられます。
1.休業開始日2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(ない場合は就業している時間数が80時間以上)の完全月が12か月以上あること
2.休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下であること。
なお、②は休業日数が最大の28日間の場合であり、28日間より短い休業日数の場合は、その日数に比例して短くなります。例えば、10日間の産後パパ育休であれば、10日×10/28=3.57なので、切り上げて4日(4日を超える場合は28時間)以下の就労なら支給要件に当てはまります。
支給額は賃金日額×支給日数×67%です。労働による賃金を受け取った場合の減額の考え方は、前項の考え方と同じになります。
まとめ
●育休中でも月10日(または80時間)以内の一時的労働なら、育児休業給付金を受けられる。
●育児休業給付金は受け取った給与によっては減額される。
●産後パパ育休も育児休業給付金を受けられる。休業中の就労に制限があるので注意。
育児休業のルールは複雑なうえ、令和4年に大きな改正があり、なかなか理解が難しいところです。
社員にとって、育児は大事なライフイベントですので、間違った案内は避けたいところです。迷ったら、遠慮なく専門家にご相談ください。