新卒者を裁量労働制に入れることは可能か。
労務


裁量労働制とは、業務の性質などから、業務の遂行手段や時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる制度です。専門的な業務であることを理由とする専門業務型裁量労働制と、会社の中枢で労働をする企画業務型裁量労働制に分かれます。この制度の中では、その労働者の労働時間は、実際の労働時間ではなく、労使で事前に定められた時間とみなされます。

簡単に言えば労使で「1日8時間」と決めたら、4時間で帰っても10時間働こうとも、その日の労働時間は「8時間」となります。それだけ労働者の裁量が大きいことになります。

この制度は、社内でもある程度の実力者で、労働時間を本人でコントロールできることが想定されています。ではこの制度、新卒者には使えるのでしょうか。

ここでは、裁量労働制の新卒者への適用について、解説をします。

この記事の目次

1.新卒者への専門業務型裁量労働制の適用を明確に否定する規定は無い。

裁量労働制をとっている会社の90%近くが「専門業務型裁量労働制」になります。専門家と呼ばれるほどの力がつけば、時間にとらわれずに仕事ができる方が労働者のメリットになるでしょう。

新卒者がすぐに専門家になれるとは思えませんが、実は法律上、新卒者を専門業務型裁量労働制へ入れることを特に否定していません。理屈では新卒者に適用することも可能です。

ただし、過去に労働基準監督署から同制度下において「対象業務を遂行する手段、時間配分の決定等の指示に関する問題例」として新卒者を対象にしたものを挙げていました。新卒者であるだけで一律除外とは言えないものの、やはり、新卒者への同制度の適用は慎重になった方が良いでしょう。

2.企画業務型裁量労働制では、通達で新卒者は「該当し得ず」。

一方で、企画業務型裁量労働制では、指針において「大学の学部を卒業した者であって、まったく職務経験のないものは、客観的にみて対象労働者に該当し得ず。」とされています。

では、いつくらいからなら適用可能なのか、ということは明確にされておりません。

感覚的には、新卒者は最低でも5年前後の経験を積み、中枢として仕事を任せられるだけの経験や知識を身に着けたうえで適用をするべきだと思います。

ちなみに、2019年に新設された高度プロフェッショナル制度においては、通達で「法令の要件を満たす限り、新卒者について適用することは可能」としています。

3.新卒者への裁量労働制の適用は現実的か

裁量労働制の対象者には、出退勤時間などの時間配分も業務の遂行手段も使用者が具体的に指示することはできません。

では、ご自身が新卒のとき、労働時間も業務遂行手段も本人にまかせると言われた時のことを想像してみてください。

おそらく戸惑うのではないでしょうか。新卒者に実力以上の裁量を与えるのは放置も同じです。裁量労働制の新卒者について、事実上、その制度趣旨から考えても、その適用は難しいと認識しておいた方が良いでしょう。

まとめ

■専門業務型裁量労働制において、新卒者の適用に明確な規定は無し。
■企画業務型裁量労働制では、指針において新卒者を避けるべしと明言。
■制度趣旨から考えると、新卒者を裁量労働制に入れるのは好ましくない。慎重な適用が必要。


新卒者を裁量労働制に入れることに対して、会社側がその理由を明確に説明できないとなると、監査等が入った場合に、残業隠しを疑われるリスクがあります。要は長時間労働を裁量労働というツールで隠しているという疑いです。

実際、裁量労働制は今でも長時間労働の温床になっているという議論もあります。このような労働環境下の中で、新卒者に裁量労働制を入れるのは、疑われる方が自然と言えるでしょう。法的な解釈の前に、制度趣旨として新卒者への裁量労働制適用はお勧めできません。

もっとも、実際の適用はケースごとに判断されるものです。その判断に迷ったら、ぜひご相談ください。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。