労働者が労働をしない日を休日または休暇と言います。何となく同じような感じで使われる2つの言葉ですが、実は明確な違いがあります。
その違いは時に、会社にも労働者にも損得に関わることがあります。ここでは、同一視されがちな休日と休暇の違いについて解説をいたします。
1.「休日」と「休暇」の違い
まず、その意味の違いからです。端的に言えば、「休日」は契約上最初から休みの日、「休暇」は契約上本来労働日だけど、その労働が免除される日です。例えば、契約書上「土日祝 休」と記載されているのであれば、最初から土日祝や休みです。これは休日にあたります。
一方で本来労働するはずの日に休める、イメージは年次有給休暇です。これは休暇になります。
この定義でよく問題になるのは、夏季休みと年末年始です。これを「休日」とするか「休暇」とするかは会社によって判断が分かれます。自社のこれらの休みがどちらにあたるのか、まずは一度確認をしてみてください。
2.「休日」が多い方が労働者に有利になることがある
同じようなものじゃないか、と思った方がいたかもしれません。そこで、「夏季休日」と「夏季休暇」の違いについて検討します。夏季の休みは固定で決まっておらず、「7月~9月までの間、任意の3日間」と、本人が期間を申請する制度にしている会社は少なくありません。
では、この3日間を本人が取らなかった場合はどうなるでしょうか。夏季の休みが「休日」であれば、本来休日の日に働いたことになるので、残業として賃金が発生することになります。
一方で、夏季「休暇」であれば、本人がその権利を放棄しただけであり、特に賃金は発生しません。
また、休日が多いということは残業代を計算するときの基礎時給に影響します。休日数が増えると、年間の所定労働時間数が減るため、基礎時給を計算する分母数が小さくなり、結果として1時間あたりの単価が高くなります。
実際に計算してみましょう。先の例で、夏季の休みを除く休日数を125日と仮定します。夏季の休み3日を休日にすると、休日数は128日になります。1日8時間労働、月給30万円の方の残業代計算の基礎時給は以下の通りです。
夏季の休みが「休日」扱いの場合
300,000円÷((365日-128日)×8時間÷12ヶ月)=1,899円
夏季の休みが「休暇」扱いの場合
300,000円÷((365日-125日)×8時間÷12ヶ月)=1,875円
年間3日の休日数が違うと、1時間単価で24円の差額が発生し、休日扱いした方が従業員に有利、となります。
3.休みの日の意味を決めておくことの重要性
もっとも、その休みが休日なのか休暇なのかということは、その表記で決まるわけではありません。そのタイトルが「休日」でも、運用が「休暇」であれば、休暇扱いでもそれがすぐに咎められるわけではありません。しかし、従業員との無用なトラブルを避けるために、それぞれの休みが休日扱いなのか、それとも休暇扱いなのか明確にしておく必要はあるでしょう。よけいな誤解を無くすためにも、休日扱いのものは「休日」、休暇扱いのものは「休暇」と表記を揃えておくことをお勧めします。
まとめ
●休日は最初から休みとなっている日、休暇は本来の労働が免除された日。
●休日数が多い方が、計算上は労働者に有利。
●実態から休日か休暇か判断して良いが、その表記は合わせておこう。
休日数というのは労働者にとって重要な関心ごとの一つです。しかし、中小企業の就業規則を見ると、夏季や年末年始の休暇など特に決めておらず、「その年のカレンダーや受注状況から決定する」としているところが少なくありません。
これは従業員から見て、社長の考え方ひとつで夏季や年末年始も働かされると理解されても仕方ありません。
これらの期間に休ませる意図があるなら、その日を休日なり休暇なりきちんと定義を決めて、年間の休日数を確定させることが、従業員の信頼に繋がります。一度就業規則を見直すことをお勧めします。