「時間外労働の上限規制」は、平成36年より現行の適用除外対象にも原則適用へ
労務


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6月5日に行われた厚生労働大臣への建議以降、働き方改革に関連するトピックスが各所で話題となっています。

SHARES LABでも、前号 【労働時間の上限規制】今後は、管理職に対する労働時間把握の強化へ に引き続き、「労働時間の上限規制」に関する情報をご紹介することにいたしましょう。


平成36年以降働き方が大きく変わる、“一部業種等”とは


このたびの「労働時間の上限規制」により、特に大きな影響を受けるのが、現行の36協定において国が定める限度時間の適用除外とされている業種でしょう。

具体的には、下記に挙げる業種について、平成31年4月1日の改正法施行から5年後の「平成36 年」以降、労働時間の上限規制について段階的に一般則の適用を目指す方向となっています。
(ただし、「③新技術、新商品等の研究開発の業務」については、その特殊性を鑑み、“現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とする”とされています)

(1) 自動車の運転業務
(2) 建設事業
(3) 新技術、新商品等の研究開発の業務
(4) 厚生労働省労働基準局長が指定する業務
(5) 医師

既に「働き方改革実行計画(案)」に示されていた内容ではありますが、今一度、その内容を確認することにいたしましょう。


「時間外労働の上限規制の基本的枠組み」は、現行の適用除外対象にも原則適用の方向へ


上に挙げたそれぞれの業種について、労働時間への考え方は、今後どのようになっていくのでしょうか?ここでは、6月5日付で公表された「時間外労働の上限規制等について(報告)」の中身をご紹介します。

(1) 自動車の運転業務
・ 罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、
1.改正法の一般則の施行期日の5年後に、「 960 時間以内」の規制を適用する
2.将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設ける

・ 時間外労働の上限の原則である「月 45 時間、かつ、年 360 時間」の実現に向けた努力をする

・ 荷主を含めた関係者で構成する協議会で労働時間の短縮策を検討するなど、長時間労働を是正するための環境整備を強化する

(2) 建設事業
・ 罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に罰則付き上限規制の一般則を適用する

・ 時間外労働の上限の原則である「月 45 時間、かつ、年 360 時間」の実現に向けた努力をする

・ 発注者を含めた関係者で構成する協議会を設置するなど、必要な環境整備を進めるとともに、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強化する

(3) 新技術、新商品等の研究開発の業務
・ 専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務の特殊性を鑑み、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とする

・ 労働者の健康確保措置として、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた者に対し、医師による面接指導の実施を労働安全衛生法上義務づける

(4) 厚生労働省労働基準局長が指定する業務
(季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業(※1)若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務(※2)として 厚生労働省労働基準局長が指定するもの)

・ 原則として罰則付き上限規制の一般則を適用する

・ ただし、業務の特殊性から直ちに適用することが難しいものについては、その猶予について更に検討する

※1 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業(砂糖精製業を除く。)
造船事業における船舶の改造又は修繕に関する業務
郵政事業の年末・年始における業務
都道府県労働局長が厚生労働省労働基準局長の承認を得て地域を限って指定する事業又は業務

※2 公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務
電気事業における発電用原子炉及びその附属設備の定期検査並びにそれに伴う電気工作物の工事に関する業務
ガス事業におけるガス製造設備の工事に関する業務

(5) 医師
・ 改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用する

・ 医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る


以上、労働政策審議会「時間外労働の上限規制等について(報告)」より抜粋

つまり、「③ 新技術、新商品等の研究開発の業務」以外については原則「時間外労働の上限規制」の適用に向け、改正法施行の5年後から確実に働き方が変わることになりそうです。


前途多難な、働き方改革の実現に向けて


今回取り上げた業種については、業務の性質上、いわば長時間労働によって支えられてきた仕事であると言っても過言ではないでしょう。業界全体において、もはや常態化した働き方を変えていくことは、容易なことではありません。

特に建設業界においては、平成32年に予定されている東京オリンピック・パラリンピックに向け、現場では厳しい工期に対応すべく、ますます労働の長時間化が懸念されています。五輪以降、建設業界における労働環境がどのように変わっていくのか、注目が集まるところです。

また、建設業以外の業種についても、業界全体の意識改革を推進すべく、官民連携による取り組みの実現が期待されます。


まとめ


今回は一部の業種に限定したテーマでのお話でしたが、異業界であっても、自分自身が今後、何かしらきっかけで接点を持つことになるかもしれないことを鑑みれば、その動向を知っておくに越したことはありません。むしろ外からのイメージが変わることで、業界が働き方改革を実行しやすくなる、という可能性もあるのではないでしょうか ?

「いつでも主治医に診てもらえて当然」「建設業は客が希望する工期に対応すべき」ではありません。ただでさえ深刻な人手不足が叫ばれる時代ではありますが、働く人の権利は、業種の別を問わず、誰にでも平等に確保されるべきなのです。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 社会保険労務士 丸山博美のページ

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