御社は大丈夫 ? 平成28年度「民間人材ビジネスに対する指導監督状況」が公表されました
労務


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これから秋にかけて、調査・臨検が実施されます


7月10日が過ぎ、ようやく人事部や総務部の繁忙期がひと段落する頃かと思います。年度更新に算定基礎、そして派遣業を営む場合には労働者派遣事業報告書・・・等々、とにかく期日厳守であらゆる書類を準備しなければならないということで、苦労された会社も多かったのではないでしょうか ?

さて、ひと通りの書類提出が終わり、今後秋にかけて増えてくるのが調査や臨検です。特に、労働者派遣事業者については平成27年の法改正によって派遣ルールが大きく変化し、未だ業界として混乱状態にあるために、調査対象の拡大が予想されます。報告書の内容を受け、労働局から声がかかる企業もでてくることでしょう。


昨年度の「民間人材ビジネスに対する指導監督状況」を知る


東京労働局からは6月22日付で、平成28年度の「民間人材ビジネスに対する指導監督状況」が公表されました。民間が実施する労働者派遣事業及び職業紹介事業に関わる指導内容ということで、同様のビジネスを展開する企業においては参考になる部分が多いのではないでしょうか。

資料では「行政処分」と「行政指導」の事例がそれぞれ紹介されていますが、ここでは具体的に他社がどのような内容の指導を受けたかについて抜粋してご紹介します。


(1)労働者派遣事業に関するもの


① 派遣元事業主への指導内容
○就業条件の明示(労働者派遣法第34条第1項)
・就業条件の明示の内容に不足がある、あるいは明示がなされていない。

○派遣元管理台帳(労働者派遣法第37条第1項)
・派遣元管理台帳の記載内容に不備がある。

○労働者派遣契約(労働者派遣法第26条第1項)
・組織単位、派遣終了後の派遣労働者の雇用に関する紛争防止措置が定められていない。
・派遣就業の時間外労働の限度時間数や休日労働の限度日数が定められていない。

○派遣先への通知(労働者派遣法第35条第1項)
・派遣元事業主から派遣先へ通知する内容に不備がある。

○マージン率等の情報提供(労働者派遣法第23条第5項)
・派遣労働者に対し、マージン率等の情報提供が正しく行われていない。


② 派遣先への指導内容
○派遣先管理台帳(労働者派遣法第42条第1項)
・派遣先管理台帳の記載内容に不備がある。

○労働者派遣契約(労働者派遣法第26条第1項)
・組織単位、派遣終了後の派遣労働者の雇用に関する紛争防止措置が定められていない。
・派遣就業の時間外労働の限度時間数や休日労働の限度日数が定められていない。


(2)請負業者、発注者への指導内容


○労働者供給事業(職業安定法第44条)
・請負契約と称して、実態は労働者を供給又は受け入れている。

○労働者派遣契約等(労働者派遣法第26条第1項等)
・労働者派遣の実態にも関わらず、労働者派遣契約を適正に締結していない。
・派遣元、派遣先管理台帳を備えていない。



(3)職業紹介事業者への指導内容


○労働条件の明示(職業安定法第5条の3第1項)
・求職者に対して業務の内容、労働契約の期間などを正しく明示していない。

○帳簿書類の備付け(職業安定法第32条の15)
・求人求職管理簿が作成されていない、あるいは記載すべき事項が記載されていない。

○取扱職種の範囲等の明示(職業安定法第32条の13)
・取扱職種の範囲を明示していない。
・手数料、苦情の処理に関する事項などを正しく明示していない。

出典 : 東京労働局「指導監督状況」 表4 主な指導内容



声がかかったら、誠実な対応を


未だ臨検や調査の類を受けたことがない企業においても、今後いつ対象になるかは分かりません。任意に調査対象として選択される場合の他、最近では労働者からの申告を受けて声がかかるケースが増えているようです。

いざ調査や臨検の対象となれば「なぜ、ウチに ? 」「どうすれば良いのだろう」と必要以上に不安になるものです。また、現に対応できていない事柄についてはつい隠してしまいたくなるものです。

しかしながら、変に隠したり繕ったりしようとするのは逆効果です。まずは当日までに求められている書類を正しく準備します。そして当日、何らかの是正指導があれば誠実に対応しましょう。


まとめ


今号では、企業にとってはちょっと煩わしい、臨検や調査についてのテーマをご紹介しました。万が一の際に堂々していられる様、今のうちに気になることへの対応を進めておきましょう。

判断に迷うことや、分からないこと等がございましたら、労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談くださいね。
参照 : SHARES 社会保険労務士 丸山博美のページ

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