先日、川崎北法人会の新設法人説明会で講師をすることがありました。
その際に『《青色申告の承認申請書》の提出は、完了していますか ? 』と質問したところ、何社か提出をしていなかったとのことです。
提出されなかった理由を聞いたところ『しばらくの間、売上が発生しないので《青色申告の承認申請書》の提出しませんでした。』とおっしゃいました。
今回は、なぜ青色申告《青色申告の承認申請書》を提出したほうが良いかご紹介いたします。
青色申告承認申請書の特典
青色申告は、税金計算上有利なことが多いとご存じの方もいらっしゃると思います。税金計算上優遇されている内容は、下記のとおりです。
① 青色欠損金繰越控除
『前年度以前に一定の期間で発生した赤字と、当期の黒字を相殺できる』という事をご存じの方も多いのでは ?
『前期の損失を当期の利益と相殺する』ために青色申告の届出ををされた方もいらっしゃるのでは ? 現時点で9年間(注1)損失を繰り越すことができます。
もし、青色申告の届出をしなければ、この適用を受けることはできません。会社を設立して、最初の頃は赤字続きの会社は多いと予想されます。その会社の事業が軌道に乗って、利益が生じた際に、その生じた利益全額に対して税金が課税されるのではなく、その繰り越された赤字相当額をマイナスした後の金額に対して課税されるだけでも、納税額を抑えることが可能です。
(例)
・前期の損失200万円、当期の利益300万円の場合(税率22%とします)
ア.青色申告を提出していない場合・・・300万円×22%=66万円
イ.青色申告を提出している場合・・・300万円ー200万円(注2)=100万円
100万円×22%=22万円
税額に、これくらいの差が生じます。事業資金を手元に残して、経営を安定させるためにも、この適用を受けた方が良いと考えます。
(注3)100%子法人等とは、資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等(以下「大法人」といいます。)による完全支配関係(一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係をいいます。)がある普通法人、完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている普通法人をいいます。
② 30万円未満の償却資産の損金参入の特例(平成30年から別の制度が適用される予定です。)
『30万円未満のPCなど備品、全額経費にしても良いよね ! 』と認識されている方も多いと思います。
この制度も、青色申告の承認を受けていなければ適用できない制度です(他にも条件があります。別途ご確認ください)。もし、青色申告の承認を受けていないときは10万円未満までの備品が全額経費にしても良いこととなります。
ちなみに、こちらの制度も期末資本金が1億円以下など一定の要件があります。
③ 欠損金の繰戻還付(現在のところ平成30年4月1日以降に終了する事業年度については適用されるか決まっていないです。)
前年度に法人税等を納めて、当期が欠損(税金計算上の赤字)が生じたときには、一定の法人税額の還付を受けられます。
(平成30年4月1日以降に終了する事業年度については適用されるか決まっていないため、説明を省略させていただきます。)
④ 特別償却・特別控除
青色申告の承認を受けることで、減価償却資産の早期償却や税額の減額を受けられる制度があります。
(様々な制度があるため、説明は省略させていただきます。)
青色申告承認申請書の提出期限
青色申告の承認を受けようとする法人は、《青色申告の承認申請書》を下記の日までに、納税地の税務署に提出しなければなりません。
提出期限を過ぎた後、『忘れていたので、提出させてほしい』と言っても、提出はできません。その場合は、次の事業年度から適用されることとなります。
設立の日以後3月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで
② 新設法人以外
青色申告の申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで(この適用を受けようとする事業年度開始の日の前日まで)
青色申告法人の義務
青色申告法人は、帳簿書類の①備え付け②取引を記録③保存しなければいけません。
保存期間は平成30年3月31日以前に開始した各事業年度は9年、平成30年4月1日以降に開始した事業年度は10年です。
日々の入出金取引の記録は会計ソフトを導入すれば、ほぼクリアになると思います。また、決算時には棚卸表、貸借対照表及び損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表を作成することになります。
これは、青色申告法人の義務でもありますが、申告書の金額が客観的に適切な金額だと証明できる書類になります。大変かもしれませんが、記録を取るように心がけてください。
まとめ
残念ながら青色申告の承認を提出することは、過去に遡って提出することは不可能です。法人設立時には、経営面でかなり大変な部分が多いと予想されます。
ここまで書いてきたとおり、青色申告の適用を受ければ、税制面でかなり優遇されると考えられます。できれば『法人設立届』と一緒に提出することをおすすめします。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 税理士 宮﨑雅大のページ