副業して赤字の場合に節税・還付って本当にできたりするの ? 税理士が徹底解説
税務・財務



最近、副業が注目されることが増えてきました。みなさまもメディアなどで、副業の様々な例が紹介されているのを目にすることがあるのではないでしょうか。

副業をされる原因は様々な理由があるでしょう。日々の暮らしに困っているわけではないけれども収入を増やしたいというかたもいらっしゃれば、働き方改革などの影響で以前よりも残業代が減っていまい、少しでも収入減を挽回したいという切実な思いで副業されている方もいらっしゃるでしょう。

一方で、副業を始めたのはいいものの、なかなか思ったように稼げない、特に税金のことまで考えると本当にプラスになっているのか疑問に思われている方もいらっしゃることでしょう。
そこで今回は、副業と税金の関係について基本的なところを解説いたします。


この記事の目次

副業をするかしないか、勤務先が認めいるか


世の中には副業を許可しているような企業もないことはありませんが、一般に正社員などについては、職務専念義務を就業規則などで定め、副業を禁じています。就業規則などに反して副業を行い、勤務先の知るところとなった場合には、例えば副業を直ちにやめることを命令され、就業規則違反行為に対して就業規則などの定めによる注意、減給などの処分、解雇などが行われる可能性があります。

まずは、副業をするかしないか、十分にそのあたりを確認する必要があると思います。 その上で、副業をする場合、という前提で、ご説明します。


副業をした場合の確定申告、住民税申告


「副業していても、その所得が利益ベースで20万円以下であれば、税務署への確定申告は不要。」ということは、よく言われているところです。これはこれで正しいのですが、一つ大きな落とし穴があります。それは「住民税」です。住民税については所得税の確定申告とは異なり、給与以外の所得が20万円以下であっても申告・納税は必要となります。
つまり、税務署への国税である所得税は申告納税免除であっても、市区町村役所への地方税である住民税は申告納税が必要なのです。

住民税の納税・徴収は、給与所得者の場合には特別徴収という方法で、基本的には給与から毎月天引きで勤務先が徴収・納税する方式です。

もし副業によって所得が増えた場合には、当然副業分の所得に対する住民税が増額となります。通常通りの住民税の申告を何気なく提出してしまいますと、副業による増加所得の金額、その結果増額した住民税の額が、住民税の特別徴収手続きのための送付書類により、勤務先が知ることになってしまいます。

副業をしていること、その収入について、ことさら勤務先に知られたくない場合には、住民税の申告の際に「住民税の徴収方法の選択」を行う、具体的には、給与以外の所得については、普通徴収(給料天引きでなく、ご本人が郵便局などで払い込む方法)により納税することを選択することができます。住民税の申告書にその欄がありますので、その選択の記載をすることで、選択できます。
この選択により、副業による所得の増額に対応する住民税は、特別徴収になりませんので勤務先への書類では表示されず、直接本人へ納付書とともに納入通知が送られることになります。


副業は事業所得 ? 雑所得 ? 節税の観点からはどっち ?


副業の所得は、フルタイム正社員等のほかに他の勤務先に勤務することは一般に難しいでしょうから、主に「雑所得」か「事業所得」になる場合が多いと思います。

所得税法では、その種類を10種類に分類しています。そのうち雑所得とは、他のいずれの所得区分にも当てはまらないもので、公的年金や著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税などの所得が該当します。
一方、事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得のことを指します。このように一応の区分はあるのですが、事業を行う形態によって、雑所得にも事業所得にも該当しうるもので、仕事の継続性や売上の安定性、副業への時間や労力のかけ具合などによって、雑所得ではなく事業所得として判断されることもあり得ます。

事業所得として認められれば、青色申告の承認申請を提出した上で、適用できる年分以降の確定申告を青色申告にすることを通じて、65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。また、事業所得の場合は、損益通算という制度があり、事業所得が損失(赤字)となった場合、給与所得等からその損失分を控除でき、その結果給与所得に対して納税した所得税から還付を受けることができるというものです。
つまり、節税という観点では、雑所得ではなく事業所得としての申告する方がより有利であると言えます。

ちなみに雑所得や事業所得以外の所得の区分として、本業とは異なる会社でアルバイトのような形で収入を得ている場合の給与所得、マンションを貸して収入を得ている場合の不動産所得、株の売買による譲渡所得などがあります。


副業が給与所得である場合の注意点


副業所得を他の会社などからの給与所得である場合には、確定申告時に特別徴収から普通徴収に切り替える記載をしても、特別徴収で徴収される住民税の額を普通徴収にすることはできません。
これは、給与所得に対する住民税は、主たる給与の支払者からの給料から合算して特別徴収することになっているためです。
ですから、副業をするにあたり、十分にそのあたりも考慮することが必要になります。


事業所得による損益通算ができても・・・


副業としての節税を考えるのであれば、事業所得での申告の方が利点が多いように考えられますが、事業所得が赤字の場合は、損益通算で住民税が少なくなるので、この場合も、勤務先への通知で、勤務先が知ることとなってしまいます。

また、事業所得とするためには、税務署への開業届が必要となり、青色申告の承認申請も提出する必要がでてきます。本来、正社員等として、就業規則に基いてフルタイム勤務をしている立場の人が、同時に個人事業も堂々と行うという意味もになり、節税効果はともかくも、勤務先との就業規則、雇用契約上の問題がでないか、十分検討すべきと思います。


まとめ


収入を上げるためとはいえ、副業は、主に勤務先において認められているかどうか、がまず一番に重要な点だと思います。
その上で、副業の内容や所得などを勤務先に知られないことが可能となるかどうかなど、考慮すべき事項が多いと考えられます。

予備知識や正しい情報がないまま行った場合のリスクを考えますと、事前に税理士のような専門家に相談し、考えてみることをおススメします。
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES 税理士 久川 秀則のページ

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