消費税の申告が必要な個人事業主とは
税務・財務


この記事の目次

1.消費税の申告が必要な個人事業主とは


消費税の申告は個人事業主の全員がするものではありません。個人事業主の中でも、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える方が必要となります。ここでいう基準期間とは個人事業主の場合、2年前の1年間の課税売上高を指します。

例えば、平成30年1月1日から個人事業を開始し、平成30年12月31日までの課税売上高が1,000万円を超えた場合、平成32年分の確定申告では課税事業者として扱われ、消費税の申告義務が発生します。

課税売上とは消費税を預かるべき売上を指し、輸出などの免税取引を含め、返品や値引きを差引した税抜での売上高を指します。 課税事業者になった場合は、消費税に関する経理の方法や、消費税の計算方法を選ばなくてはなりません。

税込経理と税抜経理


まず消費税に関する経理の方法には、「税込経理」と「税抜経理」があります。
税込経理とは日々の取引を税込で集計する方法で、実際の現金や預金に入った金額を売上、現金や預金から支払った金額を仕入として集計します。
税抜経理とは日々の取引を税抜きで集計する方法で、実際の現金や預金に入った金額から消費税部分を差引し、消費の金額は仮受消費税として、消費税を差引した金額を売上として集計します。また実際の現金や預金から支払った金額から消費税部分を差引し、消費税の金額は仮払消費税として、消費税を差引した金額を仕入として集計します。

経理の方法としては税込経理の方が手間は少ない、売上金額が帳簿上大きくなるため、大きい事業に見える、などというメリットがありますが、消費税が増税した場合に取引は変わらずとも売上が増加したように経理上見えてしまう、消費税をいくら支払うべきかわかりにくい、といったデメリットもあります。

この税込経理と税抜経理は個人事業についての消費税の納税金額には変わりはないので、好みに応じて選べます。また税務署に向けての届け出は必要ありません。

原則課税と簡易課税


消費税の計算方法は「原則課税」と「簡易課税」があります。
原則課税とは、売上に係る預かった消費税から、仕入などに係る支払った消費税を差引し、その差額を納める方法です。この場合は税抜経理をしていると、仮受消費税の集計された金額と、仮払消費税に集計された金額を納付することになるため、日々の取引で消費税をいくら支払うべきかがわかりやすくなります。

簡易課税とは原則に比べて消費税の計算が簡易的になり、仮払消費税を集計する必要がありません。売上に係る預かった消費税に対し、ある割合分の金額を消費税の納付すべき金額とします。
この割合は業種により定められていて、預かった消費税の10~60%を支払うことになります。この計算方法は原則課税と比べると明らかに単純なものですので、計算の手間を省くという点でメリットがあります。

簡易課税制度は利用できる個人事業主が限られます。課税売上高が5,000万円以下で、かつ簡易課税制度の適用の旨を届け出た場合のみ利用が出来ます。 この簡易課税制度の旨を届け出た場合、とは適用したい事業年度の開始より前に消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。またこの簡易課税制度を選択した場合は、その計算方法を原則2年以上採用する必要があります。

簡易課税制度は非常に計算の手間が省ける制度ではありますが、原則課税では受けることのできる消費税の還付を受けることが出来ないというデメリットもあります。これは原則課税の計算上で仮払消費税と仮受消費税を差引した際に、仮払消費税の金額が大きい場合は、その差額を還付として受け取れるのですが、簡易課税では計算方法が異なるため、仮受消費税の金額よりも何円仮払消費税を多く支払おうとも、差額を受け取ることはできません。

多額の設備投資など大きな支出が見込まれる事業年度には、還付が受け取れる可能性があるため、簡易課税制度を選択している事業者は、その消費税の計算方法を見直す必要があります。 一度提出した消費税簡易課税制度選択届出書を取り下げるためには、その取り下げをしたい事業年度の開始より前に消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する必要があります。

計算方法の選択によっては大きく消費税額の納付金額が変わる可能性もあるため、事業年度毎に見直すと良いでしょう。

2.消費税の具体的な計算作業


消費税の納税義務が発生、かつ計算方法を定めたら、消費税の計算作業に入ります。 個人事業主の消費税の申告期限は事業年度の翌年3月31日です。
消費税の具体的な計算方法は上記の通り原則課税と簡易課税と選択した計算方法により異なります。

ここでは例として、小売業の個人事業主が税込で年間の売上高が5,400万円、仕入高が3,240万円であった場合を考えます。

原則課税では、仮受消費税と仮払消費税の差額を消費税の納付すべき金額とします。
仮受消費税の計算は、売上高の5,400万円÷1.08×0.08=400万円と計算ができます。仮払消費税の計算は、仕入高の3,240万円÷1.08×0.08=240万円と計算ができます。よって、納付すべき金額は400万円△240万円=160万円となります。

一方で簡易課税では、仮受消費税に割合を掛けることで仮払消費税として計算し、その結果の仮受消費税と仮払消費税の差額を消費税の納付すべき金額とします。 仮受消費税の計算は、原則課税の計算方法と相違ありません。

仮受消費税の計算は、売上高の5,400万円÷1.08×0.08=400万円と計算ができます。仮払消費税の計算は、400万円に業種により異なる割合を掛けます。
この業種の区分は、第1種事業~第6種事業に分かれています。

●第1種事業:卸売業が該当し、90%を割合とします。
●第2種事業:小売業が該当し、80%を割合とします。
●第3種事業:製造業等が該当し、70%を割合とします。
●第4種事業:1、2、3、5、6種事業以外の業種が該当し、60%を割合とします。
●第5種事業:運輸通信業、金融業、保険業、飲食以外のサービス業が該当し、50%を割合とします。
●第6種事業:不動産業が該当し、40%を割合とします。

今回の事例は小売業ですので、第2種事業に該当します。 第2種事業は80%を割合とするため、仮払消費税の計算は、仮受消費税の400万円×80%=320万円と計算ができます。
よって納付すべき金額は400万円△320万円=80万円となります。

実際の消費税の申告書の計算手順はもう少し複雑な記入方法となっており、8%の中の6.3%部分である国税部分と8%の中の1.7%部分である地方税部分と分けての計算をする必要があります。

また、消費税の中間納付を行っている場合は、仮受消費税と仮払消費税の差額から、更に中間納付として納付した金額を差引して、確定申告での納付金額とします。 消費税の中間納付は、前年の消費税の申告書の状況により、税務署から何の手続きをしなくても納付書が送付されています。この申告書の状況とは、年額の納付金額を指します。

前年の年額の納付金額により、中間納付の回数が異なります。 まず前年の消費税額の国税部分が4,800万円を超える場合、確定申告時だけではなく、毎月消費税を前年の消費税納付額の1/12ずつ納める必要があります。

次に前年の消費税額の国税部分が400万円を超え、4,800万円以下の場合、確定申告時だけではなく、3ヶ月に1回、前年の消費税納付額の1/4ずつ納める必要があります。 更に前年の消費税額の国税部分が48万円を超え、400万円以下の場合、確定申告時だけではなく、半年に1回、前年の消費税納付額の1/2を納める必要があります。
そして前年の消費税額の国税部分が48万円以下の個人事業主は中間納付を行う必要がありません。

上記の事例では前年の消費税額の国税部分が48万円以下であり、中間納付が無かったものとして、差引を行っていません。しかしこの計算結果、当年度の消費税の金額は48万円を超えるため、来年度中は中間納付を行う必要があります。

また上記の事例で原則課税と簡易課税の計算をそれぞれ行いました。原則課税の計算結果では納付金額が160万円、簡易課税の計算結果では納付金額が80万円となりました。消費税額が少ないほうが個人事業主の懐には優しいかと思いますので、簡易課税を方法を選択していた場合が、原則課税を選択していた場合より160万円△80万円=80万円有利となります。

これは必ずしも簡易課税を選択することの出来る個人事業主が、簡易課税を選択したほうが有利になる、というものではなく、事業の業種や原則課税で計算をした場合の仮受消費税と仮払消費税の差額の大きさにもよって変わります。

どちらが有利になるかは自身で事業状況の予測をして考える必要があります。 一般的には、掛ける割合が90%、80%など大きい数字が定められている、第1種事業である卸売業、第2種事業である小売業が、簡易課税を選択すると、有利になる傾向にあります。

3.消費税の申告期限


消費税の計算を行い、消費税の計算が出来ても、勿論その申告書を税務署に提出し、消費税を納めなければ、申告が完了しません。 個人事業主の消費税の申告期限は申告する事業年度の翌年3月31日です。

また納付期限は、納付書で納付をする場合は同日の3月31日、振替納税を選択している場合は4月下旬の引落となります。その他クレジットカードやインターネットバンキングなども利用できますので、支払方法は好みに応じて選ぶことが出来ます。これらの支払い方法の選択も、各種届け出が必要となりますので、納付書以外で納付しようとする場合は、事前に手続き方法の確認が必要となります。

4.まとめ


個人事業主で消費税の納税義務があるというのは、課税売上高が1,000万円を超えている、ということなので、金銭的な負担が増えることのようにも思えますが、事業の規模がそれだけ大きいということで、誇れることでもあります。

一方で課税売上高が1,000万円を少し超えそうだ、と予測できる状況であれば、あえて1,000万円を超えないようにして、消費税の納税義務が発生しないようにする、というのも売上を伸ばすチャンスをあえて手放すということまでする必要はないですが、ひとつの方法です。
ですが消費税の納税義務が発生したにもかかわらず、気が付かずに申告を怠ったり、計算を間違えて少なく申告するなどの間違いをすると、税務署からの指摘を受ける可能性が非常に大きくなります。

正しく計算、申告を行うことが、最終的に個人事業主にとって一番良い方法でしょう。

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