概要
前回の記事に記載した国税のクレジットカード決済も平成28年度税制改正の一部ですが、今回の記事から2回に分けて法人税、個人所得税・資産税の改正について詳しくご説明します。
なお消費税についても改正が行われ軽減税率制度が創設、平成29年4月1日から10%に引き上げられる予定でしたが、平成31年10月に再び延期となっています。
法人税の改正
法人税については主に、税率の引き下げ、租税特別措置法の縮減、減価償却方法の見直し、欠損金繰越控除の見直しが行われています。
ひとつずつみていきましょう。
1. 税率の引き下げ
平成28年4月1日以降に開始する事業年度において、法人税率および法人事業税所得割が以下の通り引き下げられます。
H26年度 | H27年度 | H28年度 | H29年度 | H30年度 | |
---|---|---|---|---|---|
法人税 | 25.5% | 23.9% | 23.4% | 23.4% | 23.2% |
法人事業税所得割 * | 7.2% | 6.0% | 3.6% | 3.6% | 3.6% |
法人実効税率 | 34.62% | 32.11% | 29.97% | 29.97% | 29.74% |
*資本金1億円超の大法人の場合
2. 租税特別措置法の縮減
生産性向上設備投資促進税制
租税特別措置法として生産性向上設備投資促進税制が平成27年度より導入されていますが、平成28年度に優遇税額の縮減、平成29年度に制度が廃止となります。
従来は対象となる設備を購入した場合、即時償却もしくは5%の税額控除(建物、構築物は3%)を選択できましたが、平成28年4月1日から平成29年3月31日に取得した設備については、50%の特別償却(建物、構築物は25%)もしくは4%の税額控除(建物、構築物は2%)の選択となっています。
雇用促進税制
雇用の増加に対して一定の税額控除ができる雇用促進税制は平成27年度が期限となっていましたが、平成28年度税制改正により平成29年度まで適用期限が延長され、また所得拡大促進税制との併用が可能となりました。ただし、適用対象者および対象地域が次の通り縮小されています。
従来の適用対象となる雇用者は、雇用保険の一般被保険者であればパートやアルバイトも対象となっていましたが、改正により無期雇用かつフルタイムの雇用者に限られることとなりました。
また対象地域も地域雇用開発促進法における同意雇用開発促進地域内にある事業所のみが対象となりました。同意雇用開発促進地域とは、求職者数に比べて雇用機会が著しく不足している地域のことであり、地域雇用開発促進法第7条で規定されています。都道府県でみると、東京都、大阪府、愛知県などは雇用促進税制の適用対象外となっています。
3. 減価償却方法の見直し
建物附属設備および構築物の減価償却方法は従来、定額法と定率法の選択適用でしたが、平成28年度4月1日以降に取得する資産の減価償却方法は定額法のみとなります。なお、機械装置や器具備品等の減価償却方法は従来通り、定額法と定率法の選択適用になります。
この改正に対応して、企業会計基準委員会より実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」が公表されていますので、企業会計基準を適用している法人においてはご留意ください。
4. 欠損金繰越控除の見直し
欠損金の繰越控除については、平成23年度および平成27年度の税制改正において、その繰越控除限度額および繰越期間が見直されていますが、平成28年度税制改正においても以下の通り見直しが行われています。なお中小法人等は従来通り繰越控除限度額はなく、課税所得額の全額に対して繰越欠損金が使用できます。
H26年度 | H27年度 | H28年度 | H29年度 | H30年度 | |
---|---|---|---|---|---|
控除限度額 (大法人) |
所得の80% | 所得の65% | 所得の60% | 所得の55% | 所得の50% |
繰越期間 | 9年 | 9年 | 9年 | 9年 | 10年* |
* 平成30年4月1日以降に開始する事業年度において発生した欠損金に対して適用されます。
まとめ
法人税率は段階的に引き下げられる改正が行われている一方で、租税特別措置法の縮減や欠損金繰越控除の利用制限も行われています。
この流れは平成27年度税制改正から続いていますが、来期以降においても引き続き踏襲されるものと考えられます。
現在、租税特別措置法を適用して税額控除等を適用している法人においても、来期以降税制改正により適用が受けられなくなる可能性もありますのでご注意ください。