海外留学している子供は所得税法上の扶養親族に出来るの?
税務・財務


この記事の目次

1. 所得税法上の扶養親族とは

所得税の納税者に所得税法上の扶養親族がいる場合は、一定の金額の所得控除が受けられます。扶養親族とは、納税する対象となる年の12月31日の現況で、次の要件に該当する人です。

●16歳以上であること
●納税者と生計を一にしている親族であること
●親族の年間の合計所得金額が38万円以下であること
●青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと


2. 海外留学をしている子供の場合

上記の要件を満たすような子供、例えば納税者に18歳、アルバイト等をしていない高校三年生の子供が同居している場合、この子供は納税者の扶養親族に該当します。扶養親族の状況により、扶養控除として所得控除をすることのできる金額が異なりますが、この場合は一般の控除対象扶養親族として、38万円の控除が受けられることができます。

では、この子供が同居ではなく、海外留学をしている場合は扶養親族に該当することができるのでしょうか?

これは該当することができます。 上記の要件のひとつである、納税者と生計を一にする、というのは必ずしも同居を必須条件とはしていません。
納税者と同じ財布で生活している実態があれば生計を一にしていると判断されます。この例の子供はアルバイト等をせずに留学をしています。 子供自身の収入はなく、納税者の収入で生活していると考えられるため、生計が一であると判断します。

扶養親族に該当することが出来ますが、年間の所得税の計算時である年末調整や確定申告において、海外に居住している場合は上記の扶養親族に該当する要件を満たしていることの確認書類が必要となります。

3. 確認書類とは?

確認書類は大きく分けて二つ必要です。
まず一つ目が親族関係書類です。
海外に居住している子供は、親族である実態がつかみにくいため、こちらの書類の提出を求められています。
親族関係書類とは、戸籍の附表の写しと子供のパスポートの写しが該当します。この書類により親族である、更には海外に居住している事が証明できます。

二つ目は送金関係書類です。
生計を一にしているかという判断も、こちらも海外に居住しているため実態がつかみにくく、そのため提出を求められています。
送金関係書類とは、金融機関の書類の写しやクレジットカードの明細の写しなど、納税者から海外に居住している子供に送金をしていることが分かる書類です。現金を手渡ししているなど、お金を子供に渡している証拠のない場合は送金関係書類として認められません。

この大きく分けて二つの書類が、年末調整時は源泉徴収事務者に、また確定申告時は確定申告書に添付をしなくてはなりません。

4.まとめ

海外留学をしている子供を扶養にするには、そうでない子供を扶養にするよりも多くの書類が必要となります。
これは海外に居住している扶養親族いう実態のつかみにくい事象を利用して所得税を逃れようとする納税者を防止しようという意図により、平成28年分の扶養親族についてから厳格な措置がとられるようになりました。
手間が増えましたが、嘘偽りなく子供が留学し、一般的な金額を送金している場合は書類の用意に困ることはないかと思われます。

こちらの措置は平成28年分より開始、国税庁の発表の中のQ&Aが平成30年1月に改訂があったなど、近年出来た措置であるために今後も情報が変わる可能性があります。

上記でご案内しました親族関係書類、送金関係書類は利用のできる書類の一部ですので、他にも利用できる書類又は上記が揃えられても別途の書類の提示を源泉徴収事務者や税務署に求められることも考えられます。

これらの詳細やパンフレットは国税庁のHPに記載がございますので、そちらも参考になさってください。ご不明な点がございましたら、身近な専門家にご相談されることをおすすめいたします。

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