この記事の目次
- 1.出張に関する支出に対する勘定科目
- 2.出張で会社の経費として計上出来るのは
- 3.出張先での支出に対する勘定科目
- 4.旅費交通費
- 5.交際費
- 6.役員報酬
- 7.事前に出張費を仮払いする際の仕訳
- 8.出張に関する支出は税務調査で指摘を受けやすい
- 9.まとめ
1.出張に関する支出に対する勘定科目
出張とは一般的には一日以上の期間にわたり社員や役員が通常の勤務地とは異なる場所に仕事の目的で赴くことをいいます。出張には出張先までの交通費、出張先での宿泊費のみならず、出張先でかねてから付き合いのある取引先と飲食をする場合や、業務に従事するだけでなく観光をし、お土産を購入することもあるでしょう。さて会社の経費として計上することが出来るのはどの範囲までの支出でしょうか。また経費として計上される支出の仕訳には、どの勘定科目を使用すべきでしょうか。
2.出張で会社の経費として計上出来るのは
会社の経費として計上を出来るのは、業務に関連する支出に限ります。よって出張先で取引先と飲食をする場合は、業務に関連していると考えられるため、経費として計上を出来ますが、出張先の地域に住む友人と個人的な飲食をする場合は、業務に関連していないと考えられるため、経費として計上を出来ません。お土産の購入も社内や取引先など業務に関連する相手へのものであれば経費として計上が出来ますが、個人的なものは経費として計上を出来ません。実際に出張先での支払いに対し、どの内容や金額が出張を行った社員や役員の自己負担か、もしくは会社が支給するかは社内の出張旅費規程に準ずる場合が多いです。
3.出張先での支出に対する勘定科目
出張先での支払いが経費として計上できると判断される場合には、会社はその取引について仕訳を行わなくてはいけません。ここでは、役員が遠方の取引先と業務を行うために国内出張に行き、出張先までの飛行機代往復30,000円、現地での取引先との飲食費20,000円、役員に対する出張手当として10,000円を支給した例を考えます。これらの仕訳を行う際に使用する勘定科目は、飛行機代は旅費交通費、飲食費は交際費、出張手当は役員報酬又は旅費交通費となります。
4.旅費交通費
旅費交通費とは役員や従業員が業務に関連して支出する旅費や経費を表す勘定科目です。出社をするための会社までの電車代や、取引先へ赴くためのタクシー代など業務に関連して交通機関を利用した場合に使用をします。上記の例では業務を行うために飛行機を利用していますので、旅費交通費を使用します。具体的には4/1に役員が出張当日に飛行機を手配し、現金で同日に30,000円を支払った場合は以下のように仕訳を行います。
4/1 旅費交通費30,000円/現金30,000円
5.交際費
交際費とは役員や従業員がその得意先、仕入先その他業務に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用を表す勘定科目です。取引先の接待を行った飲食費や、お中元やお歳暮の贈答費、香典などの慰安費など対外的な付き合いを行った場合に使用します。上記の例では取引先との飲食を行っていますので、交際費を使用します。具体的には4/1に役員が取引先の役員1名と飲食を行い、現金で20,000円を支払った場合は以下のように仕訳を行います。
4/1 交際費20,000円/現金20,000円
6.役員報酬
役員報酬とは役員に支払われる給与を表す勘定科目です。役員報酬は原則として定期同額である必要があり、その範囲を超えると法人税の計算の際に法人税の納税額を減らす効果のある損金として認められず、法人税の納税額が多額になります。上記の例では役員に対して出張手当を支払っています。この出張手当は役員報酬又は旅費交通費を使用します。この違いは社内に出張旅費規程が備えられているかどうかの違いです。具体的には4/3に役員へ出張手当を現金で10,000円を支払った場合は以下のように仕訳を行います。
●役員報酬の場合:
4/3 役員報酬10,000円/現金10,000円
●旅費交通費の場合:
4/3 旅費交通費10,000円/現金10,000円
役員報酬か旅費交通費かの判断材料となる出張旅費規程とは出張旅費の取り扱いに関して定めた社内の規程です。対象者は社内の全員とし、出張の定義や日当などを定めます。また出張旅費規程にのっとった会社からの役員などへの支給であることが明確になるよう、出張者は出張報告書などの証拠書類を作成し会社はそれを保管しる必要があります。
この出張旅費規程にのっとった出張手当は旅費交通費、出張旅費規程から逸脱する支給や出張旅費規程がない場合の出張手当は役員報酬となります。
旅費交通費を勘定科目として選択する方のハードルが高いように見えますが、旅費交通費として計上を行う方が会社、役員の双方にとってメリットが大きい場合が多いです。まず会社としてのメリットは、旅費交通費は役員報酬のように定期同額の規制が無く、法人税の計算の際には原則的に全ての支出が損金として認められます。
また消費税の計算の際にも、旅費交通費として計上を行う方が消費税の計算の際には納税額を減らす効果があります。
役員としてのメリットは、受け取る役員報酬は給与所得であるため、給与所得が増額するとそれに伴い所得税、住民税、社会保険料の負担が増額します。旅費交通費として支給される出張手当は給与所得ではないため、それによる所得税、住民税、社会保険料の負担はありません。
これらの双方のメリットが大きいため、旅費交通費を勘定科目として選択するには出張旅費規程の備えが求められています。
7.事前に出張費を仮払いする際の仕訳
上記の具体例では全て現金で支出を行っていましたが、実際の会社が出張者に対しての支払いを行う際、また簿記の試験問題などでは事前に出張に係る経費を概算で支出し、出張から帰社後に精算、金額を確定する場合が多くあります。具体的には、出張が決まった役員に対して出張の係る経費の概算金額である70,000円を4/1に現金で支給し、出張より帰社後の4/5に役員より出張先までの飛行機代往復30,000円、現地での取引先との飲食費20,000円、残額が20,000円であるという報告を受け、その残額を現金で返金された場合は以下のように仕訳を行います。
4/1 仮払金70,000円/現金70,000円
4/5 旅費交通費30,000円/仮払金70,000円
交際費20,000円 /
現金20,000円 /
8.出張に関する支出は税務調査で指摘を受けやすい
税務調査では出張に関する支出は調査を受けやすいポイントの一つです。まず海外への出張は調査を受けやすいといわれています。海外への出張は日数が国内への出張に比べて日数が長くなることや観光を兼ねる場合も多く、本当に業務を行うための支出であるかを懸念されることがあります。また国内への出張であっても、出張手当の支給を旅費交通費で処理している場合には、法人税、消費税、所得税など様々な税金に対する節税の効果のある処理であるため、出張旅費規程の有無やその金額の妥当性を懸念されることがあります。
税務調査で指摘を受けた場合には必要に応じて税務署への説明や書類の提示を行わなくてはならないため、出張に関する支出は正しく処理を行い、帳票を保管する必要があります。指摘を受け間違いが判明をすると、正しい納税額に計算をし直し、かつペナルティとしての税金の追加払いが発生します。
本来正しい処理を行っていれば生じない手間や支出です。あらかじめ適正な判断に基づいた処理を行いたいものです。
9.まとめ
以上のように、出張に関する支出はまずは会社の経費として計上をすることが出来るかを判断する必要があります。会社の経費として計上することが出来ると判断されたものについては更にどの勘定科目を使用すべきかを検討する必要があります。特に出張手当の取り扱いは慎重に行うべきです。これらの処理で不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧めいたします。
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