10月よりe-Taxで相続税申告が受付開始!相続税申告の仕方
税務・財務

10月より従来の書面での提出方法に加えて、e-Taxでも相続税の申告書が提出することが出来るようになりました。今回は基本的な相続税の申告の仕方をご紹介致します。

この記事の目次

1.相続税の申告期限と対象者

①相続税の申告期限

相続の開始があったことを知った日、通常の場合は被相続人の死亡の日の翌日から10ヶ月以内に申告書の提出と相続税の納付を行う必要があります。

②相続税の申告を行うべき人

原則として相続税の申告を行うべき人は、被相続人の相続財産が、基礎控除額以上である相続人一同です。

2.まずは課税される遺産を算出

①必要書類を入手する

税理士などに依頼を行い相続税の申告を外注する人は、税理士に指示された書類を用意しますが、自身で申告を行う場合には、税務署や国税庁のHPより相続税の申告書と、手引きを入手します。
添付すべき書類は、相続税の申告内容により異なりますが、相続税を申告すべき人に共通して必要な書類は、相続開始日から10日を経過した日以後に作成された被相続人及び相続人の戸籍謄本です。戸籍謄本は市区町村役場で入手をすることが出来ます。 戸籍謄本は法定相続人を確定、確認をするために必要であり、必ず添付が必要です。

②相続により取得した財産価額を算出する

相続税の申告にあたり、まずは被相続人の財産の合計額を計算する必要があります。多くの人に該当する財産に現金、預貯金、不動産などがあります。
現金の確認は、被相続人が保管していた現金等の残高を調べます。現金残高を証明できるものは書類としては無いため、金庫や箪笥等をくまなく探します。

預貯金の確認は、被相続人が所有していた通帳を元に、金融機関に問い合わせ、死亡時点の残高証明書の発行の依頼を行います。 不動産の確認は、固定資産税の課税証明書、公図、路線価などを元に確認をします。不動産の評価額は売買出来る金額ではなく、相続税の計算上のための相続税評価額を算定する必要があります。

③みなし相続財産により取得した財産価額を確認する

みなし相続財産とは、生命保険金や死亡退職金など、死亡時点では実際に被相続人が財産として持っていないが、死亡を起因として発生する財産をさします。

④非課税財産の価額を確認する

みなし相続財産のうち、相続税の課税対象とならない部分があります。これは法定相続人1人当たり500万円です。例えば被相続人の死亡時に死亡保険金が1,000万円支払われる場合、相続人が2人いればその死亡保険金には相続税が課税をされません。

⑤相続時精算課税適用財産の価額を確認する

生前の被相続人からの贈与によって取得した財産のうち、相続時精算課税を適用した財産があったかを確認します。相続時精算課税とは、贈与時に贈与税の申告及び税金の納付をすることに代えて、相続時に課税時期を繰り延べるというものです。原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択することが出来ます。

⑥債務、葬式費用の価額を確認する

被相続人が支払うべきであった債務である借金の未返済分や社会保険料の未納分や、被相続人の葬式に要した費用を確認します。葬式に要した費用とは、香典返しや墓地取得費用などを含めない、葬式や火葬や埋葬そのものに要した費用をさします。

⑦相続開始前3年以内の贈与財産の価額を確認する

相続開始前3年以内に贈与があったかを確認します。3年以内の生前贈与は、贈与時に贈与税を支払っていたとしても、相続税の課税対象に加算がされます。

⑧基礎控除額を算出する

法定相続人の数に応じて基礎控除額を決定します。基礎控除額は3,000万円 + 600万円 ×法定相続人の数で計算を行います。 この際に法定相続人の確認が必要であり、法定相続人は配偶者がいれば必ず配偶者が相続人になり、配偶者に加えて子供、子供がいない場合は被相続人の親、子供も親もいない場合は兄弟が原則として該当をします。

⑨課税される遺産の総額を算出する

課税される遺産の総額は、上記の②+③△④+⑤△⑥+⑦△⑧で計算をします。

3.相続税額を算出する

①各法定相続人が取得する財産を算出する

課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算します。 法定相続分とは、相続人が配偶者と子供一人であれば1/2ずつ、配偶者と子供二人であれば配偶者が1/2、子供が1/4というように、被相続人との関係により定められた財産の配分割合をさします。

②法定相続人ごとの相続税額を算出する

各法定相続人の取得金額に税率を乗じて相続税の総額の基となる税額を算出します。相続税率は10~55%です。相続税の速算表を利用します。

③相続税の合計額を算出する 上記②の合計額である、法定相続人ごとの相続税額の合計額が、全体で納める相続税額です。

④実際の各相続人の相続税額を算出する

実際の遺産分割は、必ずしも法定相続分に沿った分割になるとは限りません。遺産が全て現預金のように分けられる財産であれば、法定相続分できっちり分けることが可能ですが、不動産のように分けることの難しい財産もあります。また遺言や相続人の話し合いにより、法定相続分とは異なる割合で分割する場合もあります。

よって実際の各相続人の相続税額は、実際に取得した財産価額に応じて按分をする必要があります。これは相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計額で計算を行います。

⑤各相続人の相続税の納付額を算出する

上記④と納付すべき金額は必ずしも一致しません。財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子供以外である場合、20%相当額を加算します。また相続開始前3年以内に贈与があった財産に対する贈与税額、配偶者控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除など相続人によって控除が受けることが出来ます。
よって取得した財産が同一の価額であっても、納付すべき金額が異なり、相続税を納付すべき人と納付が必要ない人が発生する可能性があります。

4.申告書を作成、納付

相続税の申告書は上記の手順を順番に記載するような仕組みとなっています。手引きに従い、記載を行います。また納付書も自身で記載を行います。原則として現金又はクレジットカードでの支払いの金銭での納付が必要で、税務署の承認がない限り、物納を選択することが出来ません。

5.まとめ

今回は簡単に相続税の申告の仕方をご紹介致しました。この中で一番手間が掛かるのが2-②でご紹介致しました、相続により取得した財産価額を算出することです。

被相続人が生前に財産目録を作成していれば、内容の把握はし易くなりますが、どのような財産を被相続人が持っていたかを確認することは、相続人との関係によっては難しいことです。また財産内容を把握しても、その評価をどのように行うかは様々な特例があり、知識がないと多めに評価をしてしまう恐れがあります。
多めに財産の評価をしてしまう、ということは多めに相続税を支払ってしまう、ということです。被相続人の遺産が多額である人ほど、計算を間違えることによる税額の納め過ぎのリスクが高まります。

自身で相続税の申告や納付が行えることに越したことはありませんが、一般の方で相続税の申告をすべき事態に遭うことは一生に何度もあることではありません。多くの方にとって慣れない作業となることでしょう。

相続税に関して不安な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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