個人がYouTuberとして活動を行い利益が発生する場合に、確定申告が必要となる場合があります。どのような場合に確定申告が必要となるのか確認をしましょう。
- 1.YouTuberの所得とは
- 2.YouTuberの活動は確定申告が必要?
- 3.事業所得を選択するメリット、デメリット
- 4.雑所得を選択するメリット、デメリット
- 5.利益の拡大に合わせて雑所得から事業所得へ
- 6.まとめ
1.YouTuberの所得とは
YouTuberとして活動を行い利益が発生する場合、その利益は事業所得又は雑所得に分類をされます。 事業所得とは農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営む人の、その事業から生ずる所得をいいます。雑所得とは利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時の各所得のいずれにも該当しない所得をいいます。 YouTuberの所得がどちらに該当するかの判断は、営利性、有償性、継続性、反復性があるか、精神的あるいは肉体的労力の程度や人的、物的設備があるか、また、社会的地位、生活の状況などを考慮し行います。
よって、主にYouTuberの活動により生計を立て、一年間を通じて利益が発生している状況であれば事業所得、副業としてYouTuberの活動を行い、時々お小遣い程度の利益が発生している状況であれば雑所得と判断することが出来ます。
2.YouTuberの活動は確定申告が必要?
YouTuberの活動による利益について確定申告が必要かは、利益の金額により異なります。①利益が20万円以下の場合
利益とはYouTuberの活動によって得た売上と経費の差額を指します。年間の利益が20万円以下の場合は、YouTuberの活動によって生計を立てているとは考えにくく、雑所得に該当し、また申告は不要です。②利益が20万円超の場合
利益が20万円超の場合は確定申告が必要です。事業所得に該当するか、雑所得に該当するかを自身で判断を行い、どちらか一方の所得として申告を行います。3.事業所得を選択するメリット、デメリット
①事業所得のメリット
YouTuberの活動による所得を事業所得として申告するメリット、デメリットは以下の通りです。・給与所得等の他の所得と損益通算が出来る
YouTuberの活動によって損失が出た場合、マイナスの所得を他の所得があれば損益の通算をすることが出来ます。YouTuberとしての活動以外に、アルバイト等を行い給与所得がある場合には、給与所得と事業所得を通算することで、事業所得で生じた損失に対する所得税分が給与所得で生じた所得税の範囲内で還付を受けることが出来ます。
・赤字を繰り越すことが出来る
事業所得を青色申告にて申告を行うYouTuberが、活動によって損失が出た場合、その損失を3年間繰越、利益が発生した年度の事業所得と相殺させることが出来ます。
・青色申告特別控除が受けることが出来る
事業所得を青色申告にて申告を行うYouTuberの利益は、その利益の全額に対して所得税が課税されるのではなく、青色申告特別控除である65万円を差し引いた金額に対して所得税が課税をされます。
確定申告の際に青色申告書を正規の簿記の原則によって作成し、貸借対照表や損益計算書が提出することが出来ない場合は、この控除額は10万円になります。
・減価償却の特例を受けることが出来る
事業所得を青色申告にて申告を行うYouTuberは、取得価格が30万円未満の固定資産を減価償却資産として計上し、毎期の減価償却で費用化するのではなく、取得した年に一括で経費することが認められています。
YouTuberの活動における固定資産とは、カメラ等の動画撮影器具や、パソコン等の動画編集機材が該当をします。
・専従者給与を経費として計上することが出来る
YouTuberとしての活動にあたり、YouTuberの活動に専ら従事する15歳以上の配偶者や親族がいれば、配偶者や親族に支給した給与を経費として計上することが出来ます。
事業所得を青色申告にて申告を行うYouTuberの場合は、支給金額の全額、事業所得を白色申告にて申告を行うYouTuberの場合は、配偶者は86万円まで、他の親族は50万円までが対象です。
また青色申告で専従者給与を支払う場合には、青色事業専従者給与に関する届出の提出を事前に行う必要があります。原則として青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日が提出期限です。
②事業所得のデメリット
・正規の簿記の原則に従った会計処理が必要事業所得を青色申告にて申告を行うYouTuberは、その売上や経費を正しく記帳し、またその記帳の元となった書類を保管する必要があります。年間を通じて正しい会計処理が必要な為、会計知識の習得や処理の手間が掛かります。また期限内の確定申告書の提出が必須です。
・青色申告承認申請書の提出
事業所得を青色申告にて申告を行うYouTuberは、青色申告承認申請書の提出を事前に行う必要があります。原則として青色申告書による申告をしようとする年の3月15日が提出期限です。
・利益が20万円未満でも申告が必要
事業所得を選択する場合は、利益の金額に関わらず申告が必要です。また青色申告者の特典を受けるためには毎年継続して確定申告を行わなくてはなりません。
4.雑所得を選択するメリット、デメリット
YouTuberの活動による所得を雑所得として申告するメリット、デメリットは以下の通りです。①雑所得のメリット
・利益が20万円以下の場合に申告が不要雑所得が20万円以下の場合には確定申告が不要です。しかし医療費控除や寄付金控除等他の理由があって確定申告を行う必要が発生した場合には、20万円以下であっても確定申告が必要となります。
・損失が出た場合にも申告が不要
事業所得は毎年継続して確定申告が必要ですが、雑所得は利益が生じた年のみ確定申告を行います。
・会計処理が必要ない
利益を確定するためには、自身での売上と経費の集計が必要ですが、正規の簿記の原則に従った会計処理は必要ありません。よって複式簿記の知識や損益計算書、貸借対照表等の作成をせず、Excelやメモなど自身が分かる形で記録を残す程度で申告が可能です。
②雑所得のデメリット
・他の所得と損益通算が出来ない雑所得同士での損益の通算は出来ますが、他の種類の所得と損益の通算が出来ません。よって雑所得によってYouTuberとしての活動以外に、アルバイト等を行い給与所得がある場合に、活動によって損失があっても、所得税の還付を受けることは出来ません。
・青色申告による特典を受けることが出来ない
事業所得を青色申告にて行うYouTuberが受けることの出来るメリットである、青色申告特別控除、減価償却の特例等を使用することが出来ません。
5.利益の拡大に合わせて雑所得から事業所得へ
多くのYouTuberは、あらかじめ名の知れた人でない限り、いきなり多額の利益が発生するとは考えにくいです。よってYouTuberとしての活動による利益が年間20万円未満の間は申告不要の雑所得として処理を行い、利益が年間20万円以上であることが恒常的に見込めるようになってきた段階で、青色申告承認申請書の提出を行い個人事業主となり、事業所得を申告する人が多いようです。利益が大きくなればなるほど、青色申告にて申告することのメリットが大きくなります。利益の見込めない時点での事業所得として申告することは、そもそも事業所得として認められない可能性が高く、また認められたとしても会計処理の手間ばかりが掛かってしまいます。利益の拡大に合わせて自身がどちらの種類の所得で申告すべきか判断をすると良いでしょう。
6.まとめ
YouTuberは利益が20万超になると、確定申告が必要です。これはYouTuberとしての活動が本業であっても、副業であっても同様で、更にYouTuberのみならず利益を生み出す活動をしている人は同様の判断基準です。確定申告の必要性の有無の判断や、また必要と判明した場合の確定申告の方法等、お困りのことがございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。