概要
前回の記事「確定申告と年末調整のポイントを徹底解説 ! 〜① 制度の概要と年末調整〜」においては確定申告と年末調整の違い、および年末調整の具体的な内容と注意点について説明しました。今回は確定申告の具体的な内容と注意点について説明します。
確定申告の対象者
前回の記事において説明したとおり、基本的には個人事業主と給与所得2,000万円超の給与所得者が確定申告の対象となります。しかし給与所得が2,000万円以下の給与所得者でも下記の場合には確定申告の対象となりますのでご注意ください。
・給与収入が1か所で、その他の所得(不動産収入、配当、年金等)が20万円を超える者
→サラリーマンであっても何らかの副業で20万円を超えることとなった場合には確定申告が必要となります。
・給与収入が2か所で、年末調整を受けなかった給与とその他の所得の合計が20万円を超える者
・一定の所得控除(医療費控除、雑損控除、寄付金控除等)を受けようとする給与所得者
→基本的には所得控除は年末調整で対応できますが、これらの控除は納税負担を考慮する性質があるため、年末調整時にまとめて控除することができず、確定申告を行うことによって個別に対応する必要があります。この場合、年末調整を終えた後に確定申告することによって、納め過ぎた所得税を取り戻すことができます。こちらについては下記、「所得控除について」でもう少し詳しく説明します。
・住宅ローン減税を受けようとする給与所得者(初年度のみ)
→マイホームをローンを組んで購入した場合に適用が受けられる住宅ローン減税ですが、初年度のみは自身で確定申告が必要となりますのでご注意ください。2年目以降は必要な書類を提出すれば、会社で年末調整してもらえます。
・年の途中で退職し年末までに再就職をしていない給与所得者で、源泉徴収税額からの還付を受けようとする者
→年末において就職していない場合、年末調整をやってくれる会社は当然ありません。そのため、就労中に源泉徴収によって多く支払った税金を還付してもらうためには確定申告を行う必要があります。
確定申告の流れ
① 必要な書類の収集
ここでいう「書類」とは以下のようなものがあります。
・領収書やレシート
・証明書(生命保険控除証明書、地震保険控除証明書等)
・源泉徴収票
日々の記帳作業により仕訳帳や総勘定元帳等の主要簿のほか、現金出納帳、預金出納帳、売掛帳等の補助簿が作成されているかと思います。また、これにかかる各種証憑を日々保管することが重要です。ただし、これらの帳簿は直接税務署に提出するものではなく、税務調査が入った場合などに備えて保管しておくべきものです。
② 申告書の作成
確定申告書には「確定申告書A」と「確定申告書B」があります。「確定申告書A」は所得の種類が給与所得、公的年金等・その他の雑所得、配当所得、一時所得の場合で、すなわち会社員やパート、アルバイトの場合が想定されます。「確定申告書B」は事業所得や不動産所得の場合で、個人事業主はこちらを使用することが想定されます。
提出書類としては更に、白色申告者の場合には「収支内訳書」、青色申告者の場合には「青色申告決算書」があります。
これらの提出書類のフォーマットは税務署で直接入手するか、国税庁HPでも入手できます。また、国税庁HPにおいては確定申告書等作成コーナーというページもあり、ここでは画面の指示に沿って直接入力することでそのまま申告書を作成することもできます。
申告書は2枚提出
③ 申告書の提出・納税
確定申告書類の提出には以下の3通りの方法があります。
・税務署に書類を郵送で提出
・インターネットを使って電子申告で提出
また、申告書の提出・納税の期間は以下のとおりとなっています(平成28年分の場合)。
納税:平成29年3月15日(水)まで
上記日程を過ぎてしまう場合には無申告加算税や延滞税等の余分な税金を払わなければならなくなりますのでご注意ください。
平成28年1月よりマイナンバーが導入されました。これは平成29年提出の確定申告(平成28年の所得分)においても影響します。主な内容は以下のとおりです。
・確定申告書提出の際には本人確認書の提示が必要。具体的にはマイナンバーカード(個人番号カード)の提示、あるいは、通知カードや住民票等の番号確認書類と運転免許所や保険証など身元確認書類の提示が必要となります。
所得控除について
所得控除とは、納税者の生活状況や家庭環境などを勘案して納める税額を公平にするために設けられた制度であり、控除額の分だけ課税所得金額を減らすことができます。
課税所得金額 = 収入 - 必要経費 – 所得控除
所得控除は支払う所得税を減らすことができる重要な制度であり、関心のある方も多いかと思います。現在、所得控除には下記の種類があります。
控除の種類 | 控除の内容 |
---|---|
雑損控除(※) | 災害又は盗難等によって損害を受けた場合の控除 |
医療費控除(※) | 病院などで医療費を支払った場合の控除 |
社会保険料控除 | 社会保険料(国民健康保険や国民年金)を支払った場合の控除 |
小規模共済等掛金控除 | 小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合の控除 |
生命保険料控除 | 生命保険料を支払った場合の控除 |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合の控除 |
寄付金控除(※) | 寄付をした場合の控除 |
寡婦・寡夫控除 | 夫または妻と離婚や死別した場合などに受けられる控除 |
勤労学生控除 | 納税者が勤労学生の場合に受けられる控除 |
障害者控除 | 納税者、あるいは控除対象の配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられる控除 |
配偶者控除 | 控除対象になる配偶者がいる場合の控除 |
配偶者特別控除 | 配偶者に38万円を超える所得があり配偶者控除を受けられない場合でも、配偶者の所得金額に応じて受けられる控除 |
扶養控除 | 控除対象になる扶養家族(息子など)がいる場合の控除 |
基礎控除 | 全員一律で適用される、38万円の控除 |
ここで注意すべきは、上記で(※)をつけた雑損控除、医療費控除、寄付金控除を受ける場合には、年末調整を受けた場合でも別途確定申告をする必要があることです。
特に、近年トピックとなっている「ふるさと納税」。こちらは寄付金控除の一部として扱われている制度であり、住民税の控除とあわせると「寄付額 – 2,000円」が税額控除となる大変お得な制度となっています。基本的にはこちらも確定申告が必要となるので注意が必要です。しかし、その手間が面倒なばかりにふるさと納税に躊躇するサラリーマンのために、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」というものがあり、一定の条件を満たせば確定申告不要となる場合もあります。
まとめ
確定申告の基本的な流れと、所得控除の内容について説明しました。確定申告期限は3月15日であり、これを過ぎると余分な税金を払わなければならなくなるため、十分に注意して余裕を持って準備するようにしましょう。また、各種所得控除は該当する場合には支払うべき税金が軽減される重要な制度です。上記の一覧を一読し、ご自身に当てはまりそうな所得控除がないかを確認しておくようにしましょう。
税理士にご依頼いただければ確定申告の代行や、該当する所得控除についてアドバイスさせていただくことが可能です。お気軽にご相談ください。