借入金はどう扱えばよいのか?個人事業主の確定申告について
税務・財務


確定申告では1年間の所得を集計し、所得税の計算を行い納付します。1年間の所得の計算にあたり、事業所得や不動産所得を申告する人の中には、その事業所得や不動産所得を得るために借入を行っている人も多くいます。
今回は所得の集計にあたり、借入金はどのように取り扱うのかをご紹介を致します。

この記事の目次

1.借入を行った時点の仕訳

①借入金の入金があった場合

新規に借入を行った時点では、事業用の資産と負債が同時に増加します。所得の計算は売上金額から必要経費を差し引いて計算を行うため、この時点では課税所得に影響を与えませんが、仕訳は行う必要があります。

例えば、新規に1,200万円の借入を1/1に行い事業用の普通預金に入金をされた場合は、以下のように仕訳を行います。

・1/1 普通預金1,200万円/借入金1,200万円

②借入に際して信用保証料を支払った場合

借入に際し、信用保証料を支払う場合があります。信用保証料を支払うことで、万が一返済が出来なくなった際は、信用保証料を支払った信用保証協会等が本人に代わって金融機関に返済を行うことになります。

信用保証料を支払った時点では、この信用保証料は資産に該当し、資産の増加と減少が同時に行われます。こちらもこの時点では課税所得に影響を与えませんが、仕訳は行う必要があります。

例えば、1/1に新規に借入を行うにあたり信用保証料30万円を事業用の普通預金から支払った場合は、以下のように仕訳を行います。

・1/1 前払費用(繰延資産)30万円/普通預金30万円

2.借入返済を行った時点の仕訳

借入の返済時には元金と支払利息を支払います。元金の返済は事業用の資産と負債が減少し、支払利息の支払いでは事業用の資産の減少と同時に経費が計上されます。支払利息の支払いでは経費が計上をされることから、課税所得に影響を与えます。

例えば1/31に元金10万円と支払利息1万円を事業用の普通預金から支払った場合は、以下のように仕訳を行います。

・1/31 借入金10万円/普通預金10万円
・1/31 支払利息1万円/普通預金1万円


3.期末での仕訳

借入に際して信用保証料を支払った場合、支払いの時点では資産の増加と減少を同時に行いましたが、経費の計上はありません。しかしこの信用保証料は返済期間に渡って各年で按分して経費の計上を行う必要があり、課税所得に影響を与えます。

例えば、上記1-②の例に挙げた信用保証料30万円が借入期間10年の借入金に対するものであった場合、期末では以下のように仕訳を行います。

・12/31 支払手数料3万円/前払費用(繰延資産)3万円

4.借入金に係る支払額≠経費計上額

上記1~3のように1/1に1,200万円の借入を行い、信用保証料30万円と借入金元金返済を毎月10万円、支払利息を毎月1万円支払った場合、年間では月々の返済合計額11万円に12ヶ月を乗じた132万円と信用保証料30万円の合計額である162万円が借入金に係る支払額となります。

一方で経費に計上をすることが出来るのは、支払利息1万円に12ヶ月を乗じた12万円と信用保証料を期末に按分した3万円の合計額である15万円です。

このように借入金に係る支払額と経費計上額は一致をしません。経費として計上をすることの出来ない借入金の元金部分を経費として処理してしまうことや、信用保証料を支払い時に資産とせずに支払い時に一括に経費として処理してしまうことを行うと、本来申告すべき所得よりも低い金額で申告してしまうことになります。それは故意で無くても脱税行為になってしまうので、注意をする必要があります。

5.まとめ

確定申告での借入金の取り扱いについてご紹介致しました。
様々な経費が支払額と経費計上額が同じであるのに対し、借入金は大きく支払額と経費計上額が異なるため、注意が必要です。

上記の内容にご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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