2020年より配偶者控除、配偶者特別控除の対象者となる範囲が異なります。配偶者控除、配偶者特別控除の内容を確認しながら、どのような変更があるのか、またその影響についてご紹介を致します。
- 1.配偶者控除とは
- 2.配偶者控除の控除額
- 3.配偶者控除の変更点とその影響
- 4.配偶者特別控除とは
- 5.配偶者特別控除の控除額
- 6.配偶者特別控除の変更点とその影響
- 7.配偶者控除、配偶者特別控除を受けるための手続き
- 8.まとめ
1.配偶者控除とは
配偶者控除とは納税者本人に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に一定の所得控除が受けられるものです。控除対象配偶者の範囲とはその年の12月31日時点で以下の要件全てに当てはまる人をいいます。
①民法の規定による配偶者であること。
②納税者と生計を一にしていること。
③年間の合計所得金額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)であること。
④青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
2.配偶者控除の控除額
配偶者控除の所得控除額は以下の通りです。控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
3.配偶者控除の変更点とその影響
上記1の③の通り、配偶者控除の範囲が2019年までは年間の合計所得金額が38万円以下であったものが、2020年より48万円以下と変更になりました。合計所得金額とは所得が事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得、配当所得、短期譲渡所得、雑所得、退職所得金額、山林所得金額である場合にはその額の、所得が総合課税の長期譲渡所得と一時所得である場合には1/2の額の合計額をいいます。
例えば収入がパートのみの配偶者の所得は給与所得に該当をします。給与所得の計算は給与収入から給与所得控除を差し引いて計算をします。
2019年までの配偶者控除を適用することの出来るパート収入額とは所得が38万円以下となる収入をいい、2019年までの給与所得控除が65万円であることから、この合計額である103万円以下でした。
2020年からの配偶者控除を適用することの出来るパート収入額は給与所得が48万円以下となる収入をいいますが、2020年からの給与所得控除が55万円となることから、この合計額である103万円以下となります。
つまりパートの収入額で配偶者控除の適用の可否を考える場合は、103万円以下と同一となることから、配偶者控除の範囲内での配偶者の働き方について変更をする必要は無く、実質的な影響はないといえます。
4.配偶者特別控除とは
配偶者特別控除とは配偶者控除の範囲を超える所得がある配偶者が、その所得に応じて一定の所得控除が受けられるものです。 配偶者特別控除は以下の要件全てに当てはまる人が受けることが出来ます。
①控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
②配偶者が民法の規定による配偶者であること。
③配偶者が控除を受ける人と生計を一にしていること。
④配偶者がその年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
⑤配偶者が年間の合計所得金額が38万円超123万円以下(2020年分以降は48万円超133万円以下)であること。
⑥配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと。
要件にある配偶者が配偶者特別控除を適用していないこととは、夫婦のどちらも互いの配偶者特別控除の範囲内の所得であっても、相互が所得控除を受けられるというものではなく、どちらか一方の納税者の所得控除として適用が出来るということをさします。
5.配偶者特別控除の控除額
配偶者特別控除の所得控除額は以下の通りです。①2017年まで
配偶者の合計所得金額 | 控除額 | |
---|---|---|
38万円超 40万円未満 | 38万円 | |
40万円以上 45万円未満 | 36万円 | |
45万円以上 50万円未満 | 31万円 | |
50万円以上 55万円未満 | 26万円 | |
55万円以上 60万円未満 | 21万円 | |
60万円以上 65万円未満 | 16万円 | |
65万円以上 70万円未満 | 11万円 | |
70万円以上 75万円未満 | 6万円 | |
75万円以上 76万円未満 | 3万円 | 76万円以上 | 0円 |
②2018・2019年分
配偶者の合計所得金額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 | ||
38万円超 85万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 | |
85万円超 90万円以下 |
36万円 | 24万円 | 12万円 | |
90万円超 95万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 | |
95万円超 100万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 | |
100万円超 105万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 | |
105万円超 110万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 | |
110万円超 115万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 | |
115万円超 120万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 | |
120万円超 123万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 |
③2020年以降
配偶者の合計所得金額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 | ||
48万円超 95万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 | |
95万円超 100万円以下 |
36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 |
6.配偶者特別控除の変更点とその影響
上記3の⑤の通り、配偶者特別控除の範囲が2019年までは年間の合計所得金額が38万円超123万円以下であったものが、2020年より48万円超133万円以下と変更になりました。この変更は上記2でご紹介した通り、パートの収入額で配偶者特別控除の適用の可否を考える場合は、実質的な影響はないといえます。
7.配偶者控除、配偶者特別控除を受けるための手続き
納税者本人が給与所得者であり年末調整を受けることが出来、その年末調整において所得税の年間分の精算が完了をする場合には、年末調整の際に会社に提出をする書類に配偶者の情報を記載します。配偶者の情報を記載する書類は扶養控除等申告書と配偶者控除等申告書です。納税者本人が年末調整を受けることが出来るが、所得税の年間分の精算のために改めて確定申告が必要な人、又は年末調整を受けることが出来ないために確定申告が必要な人については、確定申告書に配偶者の情報を記載します。配偶者の情報を記載する書類は確定申告書の第二表及びその情報から計算をされる配偶者控除、配偶者特別控除の控除金額を記載する第一表です。
このように配偶者控除、配偶者特別控除を納税額に反映をさせるためには、納税者本人からの申請が必要であるため、適用をしたい場合には、配偶者の名前や生年月日、その所得金額等の把握をしなくてはなりません。
配偶者控除や配偶者特別控除を受けたいがために、配偶者の所得金額を少なく申請してしまう人がいますが、配偶者の所得は税務署が調査することが出来ることから、後日訂正や所得税の追納を求められるため、正確に把握、申請をするべきものです。
8.まとめ
以上の通り、配偶者控除や配偶者控除の合計所得金額の要件が2020年より変更となります。それぞれ10万円ずつ金額が上がりますが、無収入の配偶者や、既に配偶者控除を受けているパートやアルバイトの配偶者については、実質的な影響はありません。配偶者控除を受けたい場合の給与収入は103万円以下と2019年までと変わりがありませんので、これまで配偶者控除を受けていた納税者は配偶者に同様の働き方をするように伝えると良いでしょう。
一方で2020年よりパートやアルバイトで働き始める配偶者や、給与所得以外の所得が発生する配偶者については、この変更について注意をしながら収入を得るようにすると良いでしょう。
上記の内容にご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。